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http://goo.gl/T1ZYKU
様々な食レポートを頂きます。
その中でも安価で大量に手に入る
「生き餌用昆虫」は、イベントには欠かせないものとなっていますね。
イベントの日程は決めたところで、
野生の昆虫の発生はなかなか予測できません。
私の研究室のようにバッタを養殖するのも、毎日エサ交換、草刈り、冷暖房、除湿と
高コストであることから、現実的ではありません。
そこで、
ペットショップ、特に生き餌が必要な爬虫類・両生類向けの
ペットショップに売られているのが、
コオロギ・ゴキブリ・ミールワームなどの雑食性の養殖昆虫です。
彼らは管理がものすごくラクで、
湿度さえ気にしていれば、絶食にも強いので
多くのペット愛好家の間で、自家養殖もされています。
ゴキブリはフェノール系の殺菌物質を持っているので、
ニオイがきつく、揚げるなどして加熱してやると
美味しくいただけます。
コオロギやミールワームは比較的外皮が柔らかく、
ニオイも少ないので焼いても茹でても、調理のバリエーションが豊かです。
本来はペットの生き餌ですので、
人が食べる場合は完全に自己責任です。
リスクを考え、正しく食べましょう。
そして、ヒトに勧める場合でもリスクをきちんと伝えましょう。
ペットの生き餌用の配合飼料は食品グレードでないことも多く、
抗菌剤が含まれていることもあります。
そのため、できるだけ食べる前には絶食をさせ
野菜などを食べさせて消化管内を綺麗に保ちましょう
(コオロギは共食いをするので、かならず絶食ではなく人参やキャベツなどの代替食が必要です。)
配合飼料には大抵魚粉が含まれているので、ニオイがキツイのですが、
この処理により味も良くなります。
さて、
彼らについて特に注意したいのが
サルモネラ菌食中毒です。
パラチフス・腸チフスはヒトにしか感染しないので
今回は除外します。
彼らの本来の捕食者である
ペットショップで売られる爬虫類・両生類・鳥類
ヒトが感染すると食中毒をおこす
「食中毒サルモネラ菌」を保菌していることがあります。
サルモネラ菌は、低温や乾燥に強く、
保菌者がいなくとも土壌環境中で数年生きることができ、
タイプも2500種ほどあるので、獲得免疫も期待できません。
そして、耐性菌を出しやすいので
抗生物質投与やワクチン接種は通常行われません。
ただ収まるのを待つしか無いのです。
しかも、
その確率は野生動物よりも高いのです。
http://www.eiken.co.jp/modern_media/backnumber/pdf/MM0806_01.pdf
引用
米国では、1996年から一年間の120万件のサルモネラ症のうち、
7万4000件がペット由来と言われています。
2005年までに、ペットを原因とすることが確定した
重篤なサルモネラ症は7件、スッポンや、ミドリガメが目立ちますが
死亡例はないものの、重篤な例が見られます。
(94%は医療機関にかかることなく収束しますので、その総数は多そうです。)
水棲カメは頻繁な水換えが必要で アメリカではサルモネラ症感染防止の見地から、甲長4インチ未満の小型カメの商用販売が禁止されています
http://www.cpvma.com/eisei/salmonella.htm
食中毒サルモネラ菌は
鶏卵の汚染も深刻な問題です。
日本以外の殆どの国で鶏卵を生食しないのは
このサルモネラ菌が原因です。
日本では、卵の徹底洗浄により鶏卵保菌率を下げていますが、
それでも、近年は、「卵管寄生タイプ」が登場し
卵殻ではなく、卵の内部にサルモネラ菌が入る場合があります。
これは加熱以外で防ぐことはできません。
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_manage/seminar/pdf/siryou2-4_egg-salmonella.pdf
ただ、我々は卵を生食しますので
ここで「ペットの餌用昆虫」が
卵とくらべて、どのぐらいサルモネラ菌リスクが高いのか
データを比較してみましょう。
この資料によると、
鶏卵の保菌率は0.03%から0.06%で
鶏本体の保菌率は21%なので、かなり卵殻洗浄によって抑えられているといえそうです。
「0.05%前後」が鶏卵のサルモネラ菌リスクのガイドラインといえるでしょう。
これをきちんと加熱し、卵殻に触れたものを生食しないことで
ほぼ0に近づけることができます。
ペットショップの汚染は更に深刻です。
先の資料 によると、
http://www.eiken.co.jp/modern_media/backnumber/pdf/MM0806_01.pdf
家庭飼育(32%)、輸入直後(56%)よりも、ペットショップ(80%)内が高く、
ヘビに至っては100%の保菌率です。
彼ら爬虫類・両生類は「保菌者」といって、サルモネラ菌がいても、腸管内で
培養されていても、無症状・もしくは下痢をする程度で
ヒトが食中毒を起こすような重篤な症状を示しません。健康なのです。
この後、フンとエサ昆虫が触れることを
避ける必要があるのですが、
通常、ペットショップでは爬虫類とエサ昆虫は同じ棚に置かれ、
養殖も近くでされています。
卵殻洗浄のようなことは期待できませんし、
雑食の昆虫は積極的にフンをかじりますので、
消化管内に含まれている可能性が高いでしょう。
安富和男
「ゴキブリの話」によると
ベルギーの小児病棟で発生したサルモネラ菌食中毒の院内感染が
ゴキブリの殺虫によって収束したことから、
直接的な感染源とされています。
もちろん子どもたちはゴキブリを食べたわけではないので、
接触程度でも感染が拡大する危険がある、といえるでしょう。
また、ワモンゴキブリ、トウヨウゴキブリ、チャバネゴキブリの
脚や消化管から、サルモネラ菌が発見されていることから
彼らのサルモネラ菌運搬能力は高そうです。
ということで
爬虫類→生き餌用昆虫への感染率は不明ですが
ペットショップで長期飼育された場合ですと80%から100%の確率で
爬虫類→爬虫類の感染が起こっていることから、
昆虫にも蔓延しているとみて、対策をとることが必要でしょう。
昆虫ではサルモネラ菌は増殖しませんので、無症状ですから。
「サルモネラ菌運び屋として」の昆虫の能力は高そうです。
鶏卵が0.05%前後ですから、
ペットショップで売られている爬虫類→昆虫の保菌率が50%としても
少なくともペットショップ昆虫は
鶏卵に比べて二桁以上(100倍~200倍)の
食中毒サルモネラ菌リスクがあると考えられます。
加熱するまでは他の食材に触れさせない、
手を洗浄するなどの、「一般的な食中毒対策」をきちんとしましょう。
「野外で採れたもの」よりも
「ペットショップで買ったもの」の方が
サルモネラ菌リスクが高いことに注意が必要です。
今回は触れませんでしたが
寄生虫リスク・ウイルスリスク・大腸菌などのその他の感染性バクテリアリスクもあります。
が、それは以前に書きましたので御覧ください
http://mushikurotowa.cooklog.net/Entry/211/
再度言います
昆虫は必ず加熱して、
特にペットショップで購入したものはサルモネラ菌食中毒に気をつけて、きちんと調理して
美味しく食べましょう。
当然ですが、生食は厳禁です。
養殖昆虫を生食する文化はありません。
「アマゾンの川魚でスシ文化の普及を目指しています。食中毒の覚悟はあります」
というヒトに日本食を任せられるでしょうか。
クヌギの木によくいる幼虫。集団でいることが多く、
気を丸坊主にするほどよく食べる。
見た目は…悪いですね。
高コントラストの模様、かつ昼間に堂々と食べている様は
警戒色のように見えます。
アイヌや、ネイティブカナディアンの色使いや
模様に似ています。
ただ、
ミュラー型擬態(派手な毒虫に似せる無毒な虫)の可能性もありますし
モンクロシャチホコが美味しかったので、
ここは味見しかないでしょう。
幼虫をクヌギごと採集し、食べ終わるまで少し待って、
前蛹と食べ比べてみましょう。
いつものように塩ゆでしていただきます。
味見
前蛹
シャチホコ特有のいい歯ざわり。
ムチップリッっとした食感はシャウエッセンのよう。
内部は独特のカニミソ(クモ腹部)風味。味は大変濃い。
もうちょっと塩味濃いとよりよいかと。
幼虫
クヌギの苦味と風味があり、オトナの味だが前蛹よりこちらのほうが植物系の味が強くて好み。やはり歯ざわり、表皮の歯切れの良さはシャチホコの強みだと思う。
さほど美味しくも、
不味くもないといった感じでした。歯ざわりはシャチホコガの特徴かもしれません。
利用できる日が来るまで、頭の片隅に置いておきましょう。
以前からプッシュしている、
そして私も大変お世話になっている
「Dr.夏秋の臨床図鑑 虫と皮膚炎」
ややお高いですが、そこは臨床の事例と、
愛らしく憎らしい虫たちを
フルカラーでお届けするため仕方のない事です。
この図鑑は、皮膚に炎症をおこす
様々なタイプの虫について
「実際に著者の肌に炎症を起こして経過を見る」
というなんとも荒行のような図鑑です。
中には患者さんの写真もありますが、
たいていは炎症がひどくなってからの
症例しか得られないものですので、
炎症の初期から観察するためには、
「自演乙」するしかないのでしょう。
前回「正しいちらし寿司」
で「筋子からイクラへ」処理しておいた
マイマイガの幼虫が孵化してしまいました。
これまでの寒さにより
休眠が打破されてしまった、というより
オオカマキリのように休眠状態にならず、
積算温度がたまり次第孵化する、というタイプのようです。
そのため保存上の警告です。
「マイマイガの卵を保存する場合は屋外か、加熱して冷凍」
ということになりそうです。
カマキリの場合は室内で大発生しても
彼らの室内アスレチックを観察でき、
大変に愛らしいものですが
警告したのもこのマイマイガ。
この図鑑や、他の図鑑にも
「一齢幼虫にのみ毒刺毛がある」との記載が。
ただ臨床写真は掲載されていませんでした。
そしてボスが昔アメリカで実験材料として
扱ったとき、一齢幼虫を筆で触っていたためか
炎症は起きなかったとのこと。
これは確かめてみたい。
というか
「Dr.夏秋の気分を体験してみたい」
と
ミーハーな気持ちで自演をすることにしました。
幅広のマスキングテープに一齢幼虫を一匹置き
そのまま前腕の内側、パッチテストをする位置に。
コントロールとしてなにもしていないマスキングテープを貼っておく。
写真右のマーカー部分にマイマイガ一齢幼虫をセットします。
30分後
一時間後
一時間半後
ほとんど痒くないのですが
確かに炎症反応が起きました。
まわりとの差が不明瞭な腫れがおき、
刺毛が触れたのか、一齢幼虫をおいた場所の周囲にも
軽い班点が見られました。
そして一時間半後には、殆ど消えました。
これは「即時型アレルギー反応」と思われます。
IgE抗体によって認識され、肥満細胞上にあるIgE受容体に受容されることで
ヒスタミンの遊離が起こり、紅斑や膨疹、痒みを伴います。
続いて、
一日後、ぷっくりと、周囲とは明確に段差のある
ふくらみ(おそらく丘疹とよばれる腫れ)が見られました。
これは最初の抗原の進入時に
皮膚にある抗原提示細胞がリンパ節まで移動し、
感作リンパ球が末梢を巡回、ふたたび同じ抗原
(残っていたマイマイガの刺毛)に触れることで、
活性型リンパ球となり、炎症性サイトカインを放出したと
考えられます。
いやー。ためになりますね。
細胞間の分子シグナル伝達は、
生物系学部ではいやというほど覚えさせられるんですが
しばらく分子系から遠ざかっているのでうろ覚えになってます 笑
自分の体で分子レベルの情報交換が行われ、
それが二種類の遅延反応となって皮膚に現れるとは、
なかなかロマンを感じました。
マネすることはオススメしませんが、
たのしい経験でした。
実際にやってみると
「不用意に刺された時はイラつくが、自分で刺させたときはむしろ楽しい」
ことがわかりました。
ケガをした時も、
「キズの半分だけキズパワーパッドで覆う」
と、傷の治りが楽しくなってきます。
イライラを自分の好奇心に置換できると
いろいろ楽しくなりそうです。
Dr.夏秋も虫好きを公言されていますし、
実は楽しんで臨床実験をしていた可能性があります。
そのうちお会いしたいですね。
このマイマイガの幼虫、糸を出して
ぶら下がることから「ブランコ毛虫」ともいわれ
一齢幼虫はそのまま糸に風を受けて木から木へ
(ジェット気流に乗って更に遠く)へと
文字通り飛んで行く「バルーニング」といわれる
移動をします。
それがこのような炎症をおこすのですから、
春先のマイマイガには注意が必要です。
まずは、今のうちに卵を食べましょう!
ツツジの葉を食べ始めたので
脱皮したら「二齢幼虫には毒がないのか」
も、引き続き確かめておきたいと思います。
「話者として登壇して欲しい」と「虫cafe!」というイベントにお誘いいただきました。
渋谷のどまんなかのアイリッシュパブで、
虫のイベントがあるとのこと。
当時
昆虫食のため、
「昆虫学」をきちんと勉強し直していた折
とうとう
「虫屋」と呼ばれる世界に足を踏み入れたのです。
「商用に昆虫を扱うヒト」という単語ではありません。
ニュアンスとしては「茶人」に近いです。これもお茶の販売業者を指す言葉ではありません。
茶人(デジタル大辞泉)
ちゃ‐じん 【茶人】
1 茶の湯を好む人。茶道に通じた人。茶道の宗匠。
2 普通の人と違った好みのある人。物好き。風流人。
2ですね。圧倒的に2の意味で使います。
「虫屋」とは、虫好きのあまり、
人生の一部を献上してしまったひとのことを指します。
この時、プロかアマチュアかはあまり重要ではありません。
そこで、
昆虫食について、
そしてこれからの昆虫食には「昆虫学」が必要であることを力説してきました。
そんな中、TVチャンピオン 昆虫王の長畑さんのプレゼンのツカミのネタ。
「シラホシハナムグリとシロテンハナムグリの違いがわからない方はいないですよね 笑」
一同盛り上がる中、
分からなかった私は恥ずかしながら、決意したのです。
シラホシハナムグリとシロテンハナムグリの違いを味見を!
それから半年、
シロテンハナムグリを食べ
更に半年、
シラホシハナムグリProtaetia brevitarsis brevitarsisを手に入れることになったのです。
顔の先は丸く
大きな細長い「しらほし」が背中に見えます。
カブトムシの幼虫を他の実験に使う目的で採集していたところ
混獲されたコガネムシ科の幼虫を
室内で放置していたらいつの間にか蛹室を作って羽化していました。
脱皮後、
どうせシロテンハナムグリだと思い、どうしようか迷っていた所、
なんだかやけに手足が短く、ずんぐりしている。
これは!と思い
調べた所、シラホシハナムグリだとわかったのです。
この見た目ではほとんどわからない両者。
味でわかったら、、、味覚分類学の夜明けでしょうか。
半年前、というハンデを克服し、
いざ味覚による同定へ向け味見をしてまいりましょう。
味見
土の香があるがカブトムシのような強烈な臭さは全くなく、芋のように風味として楽しめレベル。けっこう美味しい。足が短いためか、そのまま食べても引っかからず食べやすい。やや翅が硬い。
シロテンハナムグリは
「典型的なコガネムシ味。すこし外皮が薄く硬い感じ。土臭さはまったくなく、香ばしい。
マメコガネとよく似て、土臭さがなく香ばしい味ですが、若干固いですね。」
と評していたので
残念ながら差はみられそうにありません。
道のりはまだまだ遠いようです。
ただ、季節が全く違うので、
ステージを揃えて来年、二種同時に食べ比べて
再挑戦したいと思います。
さて、
その虫cafe!。
今年も参加します。開催発表後、数時間で一杯になるという恐るべき集客率。
さすが虫屋、「旬に敏感」なのでしょう。
今年のテーマは「集え、虫人よ。」
今年もような「虫人むしびと」と集合できることを楽しみにしております。
虫人(デジタル大◯泉)
ちゅう‐じん むしびと 【虫人】
1 虫を好む人。虫道に通じた人。虫道の師匠。
2 普通の人と違った好みのある人。虫好き。風流人。
こんな項目が追加される日も近いでしょう。
「虫道=むしどう」早口でいうと武士道のようでカッコ良いです。
虫人も、
沖縄言葉のように「むしんちゅ」って読んでもかわいいですね。
ちなみに
虫人(見習)が楽しんだお茶の話はこちらにも。
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
このブログは以下に移動しました。http://mushi-sommelier.net
2008年「なぜ昆虫に食欲がわかないのか」研究を開始
食べたらおいしかったので「昆虫食で世界を救う方法とは」に変更。
昆虫の味の記載から、昆虫の特性を活かしたレシピの開発、イベント出展、昆虫食アート展覧会「昆虫食展」まで、
様々な分野の専門家との協力により、新しい食文化としての昆虫食再興を目指す。
2015年 神戸大学農学研究科博士後期課程単位取得退学
テーマは「昆虫バイオマスの農業利用へむけたトノサマバッタの生理生態学的解析」
2018年よりラオスでの昆虫食を含めた栄養改善プログラムに専門家として参加