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続いて、料理開発に参りましょう。フン茶は桜の香りが強く残っていて、少しの渋みもあり、素晴らしいお茶です。

桜風味の餡はこちらを使いました。
https://www.marumiya.co.jp/cms/web/viewitem/4183/1

期間限定で、今手に入らないのは残念。

蛹は外皮が硬めで、内部が柔らかいので、
今回は分離させてみました。

外皮は揚げてきな粉にまぶし、内部はトレハロース混ぜあわせて加熱し撹拌して餡にします。

とても美味しい。

ただ揚げただけでも揚げたては美味しいのですが
次第に外皮がしっとりし、内部は冷えてスポンジ状にスカスカになっていきます。

今回使ったマグカップは、透明感のある美味しそうな幼虫を描くことで
私の中で評価の非常に高い(世間的にも評価が高いですよ)西塚emさんの作品を使わせていただきました。

別バージョンで、大阪自然史博物館友の会にて制作した
http://omnh-shop.ocnk.net/product/1457  虫へん湯のみを使ったものも作りました。


ここで困ったのが
「季節感」です。オオシモフリスズメの旬は6月初めから中旬
サクラの葉も同じように青々しています。そろそろサクランボもとれます。

ですが、サクラの季節はなんといっても早春、雰囲気をどうすべきか
いまひとつはっきりしない仕上がりになってしまいました。無念。

この後、多めに作った揚げ外皮のきな粉まぶしを2日ほど常温においておいたところ
いつまでもサックサクで、嫌な香りもしないことに気づきました。
そして、冷蔵しておいたトレハロース餡も劣化していません。

「外はサクサク、中はしっとり」
という新鮮揚げたての蛹は大変おいしいものですが
揚げ置きや揚げ直しをしたり、古くなるとどんどん風味が悪くなります。

今、皮と内部を分離してそれぞれ調理することにより、
それぞれの風味や味を長期間楽しむことができるようになりました。

これは「脱構築」です。構造を一旦解体することで、
食材本来の美味しさを長時間楽しむことができるのです。

次にできることは「再構成」でしょう。

外はサクサク、中はしっとり、
そしてそれぞれを合わせても外のサクサクが失われない。

もうおわかりですね。

モナカです。



モナカの餡の特徴は、
「糖度を高く、甘みを少なく」だそうです。
糖度を高めることで餡のしっとり感が皮を湿らせることはなく
甘ったるくならないよう調整するとのこと。

トレハロースはショ糖の半分の甘さですっきりしているので、
モナカの餡にぴったりです。

そしてできたのがコレさて
ここまで考えて

将来の食のあり方について考えてみました。


オオシモフリスズメに将来性があるのは、全国津々浦々に
ソメイヨシノがあるからです。

また、ソメイヨシノは花見用でクローンですので、果実を付ける必要もありません。
秋には落ち葉がゴミになってしまいます。

それらの葉を有効活用し、このような甘味として味わえたら、バイオマスの有効利用ですし、大変に「粋」だと思うのです。

多くの人が自給的農耕をしなくなったことで、ほとんどの食品は現金で購入するものになりました。
そんな中、「現代人は情報を食べている」と言われます。

ですが、
そうすると、家庭菜園で育てたマズイ野菜を食べたがる気持ちがいまひとつ説明できません。
情報の信頼度という面から見たとしても、プロが作った野菜のほうがおいしく、安いことは明白です。(自分で作ったほうが安心安全、というウリ文句もなんだか違う気がしています)

また、
情報を食べるようになったことで、脆弱性も生まれました。
誇大広告であったり、食品偽装などの詐欺的行為によって
本来の価値のないものに高い値段をつけて購入してしまうのです。

そこで、未来の食料生産の健全化のために次の提案をします。

「システムを食べる選択」です。

情報は常に更新しないと、ウソが混じります。
また、ウソを暴けないシステムを構築しておくと、そのウソは長年にわたってまかり通ります。

そのため、
情報を更新し、ウソが混入すると明らかになる、排除できるシステムを食べる(お金を出して購入する)のです。

我々人間の体もシステムです。ウソが混入すると、最悪の場合食中毒で死に至ります。
訴訟しても健康は帰ってきません。

そのようなシステム管理は国際規格やHACCEPなどで認証が行われてきました。
将来的には昆虫生産も認証をとりたいものですが、今のところそこまでの市場がないのが現状です。

システムを食べる、という概念が普及すると、

昆虫には大きな利点があります。

「脱集中化」です。Decentralization とも言われます。

今の多くの食料生産は集中化によって価格を下げています。

郊外の広大な農地から自動で穀物収穫貯蔵するシステムであったり
畜産農場も悪臭や水質汚濁の懸念から都市部から大きく離れています。

ところが、昆虫は悪臭や廃液を殆ど出さず、
植物に比べて土地依存度が低い、しかも特別な処理をすることなく
キッチンでおいしく調理できる、という意味でも

消費地に近接した養殖に、昆虫食導入のメリットがあると考えられます。

そこで見られるのは、「食べる寸前まで元気で生きている家畜」です。
そこに与えるエサも見ることができます。

近くに生えているソメイヨシノであったり
家庭から出る野菜くずを使った雑食昆虫養殖であったり、

消費地に近接した養殖は、そのシステム全体を見渡すことができます。
そのため、ウソが混入しにくく、また緊急時にインフラが止まった時の頑強性も高いのです。

1ヶ月の食糧の10% つまり3日分備蓄があれば、災害時に大きなメリットになると言われています。食品残渣は購入食品の約40%と言われていますので、それらの10%を昆虫で再利用されれば4%の備蓄

更に、身近にある非食用のバイオマスを転換し、6%の食品生産をすることができれば
食品の10%を楽しく、災害に頑強な食料生産が都市部でできるようになるでしょう。

家庭菜園がここまで「赤字」なのに支持されるのも、
「システムが明朗でウソが入りにくく、見渡せる」ことがその大きな理由と考えられます。
システムの多くを生物に丸投げすることで、失敗した場合に枯れてくれる安全装置も魅力です。

つまり、もう私たちも、
情報ではなく、システムを食べる順応をすでに始めているのです。


それではもっと具体的に考えてみましょう。

わが家には野菜くずを利用してゴキブリを利用するシステムがあり
そこから出たオスゴキブリを主に間引いてアリを飼育しています。
近所からいただいたソメイヨシノの葉を使ってオオシモフリスズメは育てました。
ベランダではバッタ用の草も準備しています

できるだけ高密度、省スペースで飼育したいのと
取り扱いを簡単にしたいので、一つのモジュールは5kg以内、大きさは
タワー型PCぐらいにしておきましょう。

密度を高めるので、ガス交換と、湿度の管理を自動でできるとなお良いです。
機械的システムを作ると基本的に廃熱が出るので、昆虫の最適温度は
常温より少し高め、日本で言うと亜熱帯に適した昆虫を使うのがよいでしょう。

脱走した時も冬場の寒さで死ぬことが望ましいです。
グルメからすると、単一の種では飽きるので10種ぐらいを、2週間に一度の簡単な世話で飼え
半年に一度の大型メンテナンスをすることで維持できたらいいですね。

という感じのシステムを形にして見せるべく、


ちょっと動いています。


ワインのラベルのような紙に書かれた情報ではなく、食料生産の現場をそのまま見せることで

「美味しいシステムを食べる食事」が演出できれば、と思っています。

またご報告します。

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今まで目をつけていたものの、味見に出会えなかった虫がいました。

オオシモフリスズメ Langia zenzeroides

シモフリスズメが美味しいことは以前に味見して知ってはいたのですがそれから更に大きく、
しかもサクラを食べるというのです。しかしなかなか採集が難しい、
というか採集スポットが限られています。

そして、このネット全盛の世の中にあって
希少種の採集スポットの多くは「口伝」です。
流石に全国的な絶滅危惧種ではないのですが、
レッドデータブックではあまり状況はよろしくないとのこと。


富山県:絶滅危惧Ⅱ類
石川県:準絶滅危惧
滋賀県:情報不足
大阪府:準絶滅危惧
兵庫県:準絶滅危惧
高知県情報不足
佐賀県:絶滅危惧I類

少し話はそれますが
環境省の方針でも、希少種の詳細な生息地情報はかなりナイーブに扱われます。
希少種を保全するためには必要不可欠な情報ですが、「希少」というだけでプレミアム感を
感じてしまう人も多く、採集禁止などの具体的な規制を事前に公表してしまうと、
駆け込み乱獲も起こるそうです。

また、そのようなプレミアム感を商売にして希少種を高値で売り抜ける業者も
いるそうで、情報を保護の用途に限って公開することは難しく、
悩ましいものです。

科学の世界で再現性は重要とされますが
再現性もなにも生息地が破壊されてしまえば元の木阿弥。
生息環境は学術論文よりも重いのです。

それに習いまして、今回のオオシモフリスズメの採集場所もネット上には載せないこととします。
この場所は近年街灯として多く設置されていた水銀灯がLED化されたそうで、昔から水銀灯に集まって来ていたオオシモフリスズメが激減したそうです。

そのぶん産卵には成功しているでしょうし、食樹はありふれたソメイヨシノですので
この大きな美しい蛾が、あなたの街にやってくる日も近いかもしれません。

今後に期待しましょう。

さて
成虫から以前に食べたクロメンガタスズメの成虫のように、密度の高い、しっかりとした剛毛です。
食べづらく、のどにひっかかるのでオススメはしません。

そこから卵を産ませて孵化したものをサクラの葉で飼育しフンを乾燥させて軽く煎り、お茶にしつつ

幼虫、前蛹から蛹までを集中的に味見します。


育ててみたところ、あまり難しさは感じませんし
カレハガのように、高密度で食欲が低下する(譲り合ってなかなか葉を食べ尽くさない)という現象も起きませんでした。
ふれあうと威嚇することもありますが、共食いや傷つけ合いもなさそうです。

惜しいところは年1化なので、春にしか発生しないところ。
もしかしたら冬眠状態を人工的に作ることで休眠を打破し、サクラのあるうちに何度も養殖できるかもしれません。
温度調節できるインキュベーターがほしいところです。

途中、脱皮の失敗によって口器がゆがんでしまった個体について、味見をしました。…おいしい。。。

モンクロシャチホコのような濃い桜の香りはないのですが、全く苦味もクセもなく
外皮の食感、のどごしもすばらしい見事な味です。
トビイロスズメに比べるとややタンパクよりも脂質に寄ったコクの強さはあるのですが
いい味しています。
これを十分に育つまでしっかり育てて
前蛹と蛹を得ました蛹は前蛹はアワビのようなコリッコリの食感。
むしろアワビを食べるよりも昆虫を食べてきた歴史が長いのですから
「アワビを美味しいと思う我々の味覚嗜好の本来のターゲットは前蛹」
といえるかもしれません。続いて次の記事では、オオシモフリスズメをつかった料理開発と、
「情報を食べる人類からシステムを食べる人類へ」という
未来の話まで考察していきます。
後編です。

まず
一般的に「プラスチックは分解されない」
ということについてもうちょっと考えてみましょう。

我々が日常使っているプラスチックのほとんどは
炭素を含む高分子の有機物です。

そのため、
有機物を扱う生物の一部、特に莫大な種があり頻繁に変異する微生物は
プラスチックの成分を分解できるものがあります。

簡単に
土壌からスクリーニングできるキットもあります。
http://www.cosmobio.co.jp/product/detail/01650001.asp?entry_id=3134

つまり、生物がプラスチックを分解することはすでに可能で

ただその分布がヒトの活動に依存していること、

ポリマーが疎水性で強固なため、表面積を確保できず
酵素反応がうまく行われないこと

そして炭素以外の有機態窒素などの生物にとっての栄養をほとんど含まず
分解してもベンゼンなどの毒物質ができることから利益が薄いこと

などから、木質バイオマスと同様に、
生物の栄養源として優先度が低い状態なのが
「プラスチック」なのです。

分解性生物の優先度が低くなった結果、
残存量の多いポリマーとして「木質」も同様に考えられます。

木質は親水性の炭素骨格、セルロースを主体とするポリマーですが
他にリグニンやヘミセルロースなどの複数のポリマーががっちり絡みあった状態なので
なかなか酵素反応だけでは分解できません。
特にリグニンはフェノール基を含む疎水性の成分なので、プラスチックによく似ているといえるでしょう。

FRP(繊維強化プラスチック)あたりがイメージとして近いかもしれません。

そのため、セルロースをナノファイバー化してプラスチックと混ぜあわせた
セルロース型のFRPも開発されています。

それらと、紫外線への分解感受性を高める添加剤や
土壌微生物で完全分解できる生分解性プラスチック
などを組み合わせることで
木材以上の強度と、適度な分解性を備えたプラスチックの開発は可能でしょう。

また、
木材においてもアゴをもつ昆虫の侵入が大きな問題ですから
同様にアゴをもち、共生細菌によって分子レベルまで分解できる木質昆虫が
将来のプラスチック製品の「害虫」になるかもしれません。

今のプラスチックはあまりに生分解性がないために、
その処理が十分でなく、海に流れています。

一方で、あまりにありふれていてコントロールできない
環境中の微生物や紫外線のみで分解してしまうプラスチックでは
強度的に心もとないでしょう。

そこで、
「昆虫分解性プラスチック」と
「プラスチック特異的分解微生物」を開発し
「プラスチック特異的分解微生物共生昆虫」を養殖。
その防除法までを同時に開発することで

環境中にインパクトの少ない、そして
昆虫を利用することで、プラスチック製品の設置が間接的に食糧備蓄になるような
未来の形ができるかもしれません。


話はすこしそれますが、実は、そのような
技術は、木質昆虫ではまだなのですが、
カメムシで既に報告されています。

日本の産業技術総合研究所のグループでは
カメムシの共生細菌を抗生物質で殺し
遺伝子組み換えをした別の微生物で再構成する、という
「共生細菌サイボーグ」のようなものを作っています。

http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2016/pr20160111/pr20160111.html

基礎的な知見として、今まで知られてこなかった
微生物と昆虫の共生関係を調べるとんでもないキレッキレの実験系なのですが

その中で殺虫剤耐性を環境細菌から獲得することも明らかになっています。
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2015/pr20150901/pr20150901.html

これは、昆虫という世代の比較的長い生物が
世代の短く、変異の多い細菌と同じ速度で殺虫剤耐性を獲得する可能性を示すものであり、

今の抗生物質、抗菌剤と同様に、次々と耐性菌が登場してその開発が追いつかない現状と同様に
「多剤耐性昆虫」が容易に発生する可能性を示しています。

そのようなことになれば、今のように環境中に殺虫剤を散布することは
無闇に抗生物質をばらまくことと同様のリスクであることですので

もっと特異的で、
土壌への散布を避けるような限定的な利用をしなければならなくなるでしょう。

その時、天敵農薬や特異的殺虫剤などのようやくの出番です。

全ての昆虫に効くような、細菌でいうところのバンコマイシンのような
「最終兵器殺虫剤」の日常使いは禁止されていくでしょう。


話をもどします。

未来の昆虫利用においては、

プラスチックだけでなく
殺虫剤も昆虫毒性高い高分子と考えると、

その分解という「生態系サービス」までを
含めた運用を提案することができれば、新しいシステムが見えてきます。

多くの場合、高分子は工場で集約的に大量生産されますが
その利用は各個人、各家庭、各地域へと「分散」されています。

その分散した有機物は、廃棄される段階になると「再集約」され
集中的に処理されています。

これでは、
処理の度に輸送エネルギー、回収エネルギーがかかってしまい
それらのエネルギーを使ってペイできないもの
たとえば、
バイオマス発電の発電量よりバイオマスの輸送エネルギーの方が大きい場合
腐りやすく含水量の多いバイオマスを飼料利用するため冷蔵輸送する場合

は、損益分岐点のハードルが高い状態ですので
利用されない「余剰バイオマス」ができてしまいます。
無理やり利用しても、かえって環境負荷が増えてしまいます。

そこで次に考えられるのは、集約生産されたものを分散利用した後、分散再処理して使うことで
輸送エネルギーを節約できるでしょう。


その時、昆虫のように容易に増やせ、処理能力が集約しても分散しても変わらず
メンテナンスも容易なシステムが有効です。

更に考えます。

いまの一次産品の多くは分散的に生産され、収穫されて集約されたものなので、
それらが分散的にそのまま利用でき、その不均衡だけを輸送する最適化システムができれば
自然エネルギーなどの分散的に発生するエネルギーを利用することになり
地下資源の枯渇後の生産システムとして有望でしょう。


この中で集中的に生産されるのは、
いわゆる「鉄器」のような耐久消費財だけになると考えられます。

最終的な3の状態になることは百年単位で当分先ですが
「脱集約 Decentralize」は、
この先のバイオマス利用においてホットなポイントになると思います。

電力、情報の脱集約化が起こりつつある現在、

次の脱集約は食糧で起こるべきだと思うのです。
その時、常温常圧で作動し、処理に失敗したら死ぬことでアラートを出してくれる
昆虫は、植物に寄って生産されたものを、
何度も分散再処理するシステムの中核を担うことになるでしょう。

また、そのシステムをよりコンパクトに、閉鎖系で設計することが
将来の食料生産システムにとって有用な知財であることをアピールし
多くのヒトに将来に思いを馳せさせる「デザイン」になるだろうと、予言しておきます。

そして、未来の脱集約食料生産モデルを見ながら食事をすることは
食品そのものではなく、そのプロセスを味わう
新しい「グルメ」の形で普及していくでしょう。
中編では、ミールワーム、
つまりチャイロコメノゴミムシダマシの生理と生態について、
「木質昆虫学」という視点から掘り下げます。

ゴミムシダマシという名前は大変に誤解を招きます。
ゴミムシとはけっこう遠い仲間で、全く別のグループと考えてよいです。

参考文献はこちら

木質昆虫学序説




森林利用、というヒト視点を軸に、概観した本なので、
昆虫の利用をヒトへの利益の視点から考えたいわたしにとっては
大変うれしいまとめでした。


話はそれますが、カミキリムシがおいしい、という話はここでもよくしますが
なかなか無料で、多くの人に提供できる数は手に入りません。

カミキリムシが薪の利用低下とともに入手困難な昆虫になってしまったからです
「カミキリが侵入した苗木を見分けるイヌ」とか(本来は植物防疫目的ですが)
とても食欲、もとい想像を刺激されます。

話を戻します。
この本は膨大な情報量と文献リストへのアクセスができるので
門外漢が分野の概要を知るのにやはり母国語のほうがスピードが節約でき
すごく助かりました。

木質という地球上における残存量最大の「やっかいな」バイオマスの
物理化学的性質、そして植物学的特徴という基礎的な面から
林業などの「実学」につながる部分
更に食用も含めた未来の
昆虫利用まで総合的に論じている点で非常にためになります。

また、
木質昆虫の飼育養殖は難しく、木材が巨大であること、
そして木材そのものが売り物ですから
それらを全て調べることは容易ではありません。


昆虫種や生態など、
研究観察しやすいものとしにくいものの間に、研究進捗のギャップがあることから
概論を導くためにかなりざっくりとした類推を含む部分もあるので、
この本の主張から引用して持論を展開するのはあまりよろしくないように思います。
原著に至るガイドラインとしてすごく役立つかと。
母語で新しい分野の概観を読むことができるというのはとても恵まれたことだと感じました。


お買い得ですが安くはない本なので、ぜひ最寄りの図書館に購入希望を出してみましょう。
図書館は不特定多数の人に安価で読書の機会を提供する裝置なので
こういう地雷を公的機関に仕掛けて、将来の昆虫研究者を増やす活動に勤しみましょう。

この本のガイドに従って、
木質昆虫、とくにゴミムシダマシについて
詳しく見ていきましょう。




昆虫が利用する木質の分類として大きく2つにわけられるそうです。

一つは生きている木を食べる「一次性種」と
もう一つは死んだ木を食べる「二次性種」です。

一番大きな違いは木の生理的食害応答があるかどうか、です。
カミキリムシなどの生木を食べる昆虫は、生木にある成長点などの
栄養豊富な部分をターゲットとし
食害に対する防御機構をかいくぐり、しまいには木を枯らしてしまいます。
枯死した木には、その分解状態に応じて生木食以外の二次性の昆虫が、
その分解を引き継いでいきます。

枯木のバイオマスは生木に比べて
炭素ばっかりでタンパク質の元となる有機体の窒素が少なく、
それでいて生木と同様に
セルロース、リグニン、ヘミセルロースなどの
多様な高分子が互いに強固に接着したままですので
その分解にはもちろん多様な酵素が必要でしょう。


そのため
「生木食のカミキリムシだけを生産し続ける林」というバランスを保つのは
なかなか難しいと思われます。

木材利用も含めて考えると、
木を枯らしてしまうと、木材としても使いにくい枯木になってしまうことから
一次性種であるカミキリムシはおいしいけれども、将来性があまりないのはこのためです。
薪利用とカミキリムシ食はセットで考えるのが良さそうです。




一方で、ゴミムシダマシの多くは
枯木を食べる二次性種です。一次性種であるキクイムシのフンを食べる
ものもあるようで、恐らくアゴの発達と機械的強度とも関連しそうです。

また、ゴミムシダマシの幼虫は脂肪が多く、タンパク質は少ないので
貧窒素・低湿度に耐える特徴があるのかもしれません。

ミールワームは特に乾燥に強く、コムギのふすまで飼育できますが
湿気を与えると一気にカビが出てしまいます。
飼育にあたっては野菜くずなども食べてくれるので
湿気の溜まらない排気システムを備えた
生ごみ処理機
Livin Hive 
もキックスターターで最近有名になりました。
http://www.livinfarms.com


これは見事に14万5千ドルの資金調達に成功し、現在製作中だそうです。
830 backers pledged $145,429 

先の論文のことを考えると、
これに、
プラスチック梱包材も入れられるかもしれません。

では、木質昆虫であったミールワームがなぜ、
スタイロフォームを分解できたのか、後編で考えてみましょう。

そして、ミールワームから、
昆虫によるバイオマス利用のブレイクスルーが起きるのかどうか、まで、
予想してみます。

昨年10月に、面白い論文が出ました。

ミールワームが共生細菌と一緒にスタイロフォーム(発泡ポリスチレン)を分子レベルまで分解する

というものです。

とても良い写真とともに。

http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/acs.est.5b02661

確かにスタイロフォーム食ってる。
スタイロフォームとはいわゆる発泡スチロール。建築材で大量流通しているのでとても安く、
造形の世界でも大型の造形物の芯に使われたり、とっても便利な素材です。

二報にわたって示されたことには、ざっくり言うと

1,ミールワームはスタイロフォームを食って分子レベル(脱ポリマー化と二酸化炭素への分解)の分解をしている。コムギのフスマを食べさせたものとスタイロフォームを30日食べさせたものは、生存率に有意な差はなかった。食べたスタイロフォームのうち16日で半分程度がCO2へ。

放射性同位体の炭素C13を使った追跡によって確認
2,スタイロフォームポリマー(ポリスチレン)は消化管の共生細菌によって分子レベルにまで分解されているようだ

ディスカッション
プラスチック廃棄物の処理方法の1つの手段になるかもしれない。

とのこと
これはすごい。

やはり再現性が気になったのと、
30日間のその後の長期的なミールワームの健康が気になったので、
やってみました。

昨年10月から仕込んで、2パックほどの市販ミールワームを。
11月25日の写真がこちら。
 
食ってますね。底に水色の粉が溜まっているので
少なくとも粉末レベルで破砕しています。
そして4月

遅いですが食いっぷりは進んでいます。

味は。。。


あまり普通のものと代わりはない。プラスチック製品のような溶剤の香りもない。
もちろん無臭の成分でも体によくないものがあるのでおすすめはしません

追記です。
論文に記載されている分解については
ポリマー化しているα炭素とβ炭素についてラベリングしていますが
ベンゼンについてはまったくノータッチです。
C02として無機化しているということは、
好意的に見ればベンゼン環も分解されたと見えますが、

ベンゼン環はかなり安定した化合物で、分解菌も通常ほとんど分布していないこと、
変異原性があることから、分解の可能性は低いでしょう。
なので、せっかく安定していたポリスチレンからベンゼンを放出する「余計なことしい」
の可能性もあります。


続報を待ちましょう。というかベンゼンに標識した結果ってなんでないんだろう。。

なので試食はおすすめしません。今の段階では。



香ばしさが幼虫より強く、甲虫でも食感はとてもよい。揚げなくてもサクサクしている。



今のところ成虫までにはなったのですが、次世代が生まれていません。
完全栄養食とはなっていないのでしょうか。
引き続き観察します。

さて、
スタイロフォームの材料であるポリスチレンなどの
プラスチックはヒトの活動が近年生み出したもので、
自然界には本来分布していません。

こんな分子構造をしています。


紫外線でポリマーの分子結合が分解されながら
機械的な破砕とともに細かくなっていきます。

いったん表土などで被覆されたり
水に沈んだりすると
分解は相当に遅くなります。

機械的な破砕によって細かくなったプラスチック破片「マイクロビーズ」は
野生生物への悪影響があるのではないか、と懸念されています。
http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3725/3.html

今のところ野外での重大な影響は報告されていませんが、
実験室内での影響はあったとのことです。

そんな中で、
ペットの生き餌として使われる身近な生物、ミールワームと
プラスチックとのマッチングは
我々のプラスチック処理のシステムを大きく変えることになるかもしれません。

梱包材や衣服など、身の回りにあふれるプラスチック製品を
昆虫で転換して食べてしまう、という未来です。

はたしてこのマッチングは
「奇跡的」なものでしょうか。

そして
廃棄物処理の救世主になるのでしょうか
いまのところ結論を保留して
昆虫学のレベルからもうちょっと冷静に考えてみましょう。

中編に続きます。

Mushi_Kurotowa
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プロフィール
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Mushikurotowa 
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昆虫料理開発
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人生迷走中 顔はクロトワ似「なぜ昆虫に食欲が湧かないのか」をテーマに研究開始。食べたら美味くて研究頓挫「昆虫を美味しく食べる調理法とは」に変更/食用昆虫科学研究会 Edible insect science meeting 昆虫料理研究会 趣味自転車;鯨食文化研究;法螺貝;トランペット;リコーダー;鯨歯彫刻
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