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前編では
サイエンスとテクノロジーをもって生食できる昆虫を探す
と述べました。

やはり生食だから健康によいとか
度胸があってかっこいいのではなく
「おいしいこと」を大事にしたいですね。

美味しさの評価に、官能評価、というものがあります。
官能、ということで
アダルトな方面を想像をする方もいるでしょうが、
そうではありません。

人の味覚の自己申告を数値化して、味を評価することです。

今回の例を挙げますと
アンケート形式で、
5基本味(甘味・苦味・うま味・酸味・塩味)について、5段階で評価してもらいます。
もちろん
味の評価は個人でバラつきがあるので、傾向を知るには
サンプルサイズを大きくしなくてはなりません。


しかし
昆虫の生食をする危険性を参加者に負わせるわけにはいきませんし

そもそも
採集した昆虫は食物、成長段階によって大きく味が異なるので
同じ種だとしても多くの人に均質な昆虫を食べさせることはなかなか困難です。

学術的な昆虫食研究も「手に入りやすいもの」から手を付けており
持続可能な食料生産のためにふさわしい昆虫や、おいしい昆虫を
膨大な昆虫資源から探し出す手法を持っているわけではありません。

私が個人的に行ってきた昆虫の味見も、
ここが「サイエンス」になるには致命的な欠陥があります。サンプルサイズが小さいのです。
「個人の感想ですよね」と言われると、そうですね、としか言いようが無いのです。


そこで
サイエンスとテクノロジーの出番です。

人の味覚をモデル化してシミュレーションしてくれる機械。

味博士の研究所の味覚センサーシステム「レオ」です。

ぱっと見よくわからない機械ですが


これは5基本味の要因となる物理化学的性質の測定とともに、
それを複合的に味わった時に、ヒトがどう評価するか、というヒトの味覚評価の仕組みを
シミュレーションするよう、設定されています。

例えば、甘味(糖)と旨味(特定のアミノ酸)を同時に感じると、
単独で味わった場合よりもどちらの味も強く感じることが
官能評価で分かっていますので、ヒトが感じるであろう味覚に合わせて強めに調整します。

これにより、少ないサンプルサイズで、
官能評価の結果をシミュレーションすることができるのです。


もちろん、
レオには昆虫の味を覚えさせていませんので、
例えばキノコ毒でいうところのイボテン酸のような
昆虫にしか含まれていない毒でかつ旨味の強い味成分を見逃すかもしれません。

それはそれとして、
スクリーニングとしては一個体の昆虫からデータを取り出す
しかも、
「生の昆虫を安全に食べさせることのできる機械」というのは
可能性がひろがりますね。
興奮します。

それでは
私の代わりに食べてもらいましょう。

サイエンスアゴラ2015でコラボさせていただき、
「レオ」は面白い結果を出してくれました。

まずはトノサマバッタ
こちらのリンクを
(あまりアクセスが伸びなかったそうなので)見てください。
お願いします。

塩茹でしたほうが、苦味が下がり、甘味と旨味が増加しています。
これはバッタを掴んだ時に、口から吐き出される茶色い苦い液体
(味見してみましたが、苦かったです)
が茹でることによって茹で水にとけ、苦味物質が減ったこと、タンパク質が変性して
味物質が遊離したことなどが、理由として考えられます。

この予想は、
そのまま下処理をせずに焼いたものより、
茹でてから焼いたもののほうが美味しかった経験を
もとに、提案してみたものです。

スコアで言うところの0.2の差、というのは
ヒトの官能評価でのサンプルサイズn=100であるときに
有意差がでるであろう結果とのことですので、

「生トノサマバッタと茹でトノサマバッタを100人に食べさせた時に有意に茹でトノサマバッタをおいしいと判断する」
という結果が予想されます。

もちろんそれをヒトで検証する官能評価もあればよいのですが
少数の採集昆虫でも味を比較できる可能性を示せたので、現状では大きな一歩でしょう。

続いて次々参ります。
以下はサイエンスアゴラ2015において
味覚センサーの結果を見ながら、昆虫食を経験してもらう、という企画で使ったものです。

 
まあ当然ですが、
美味しい味を追加してから味わう「調味」をしているわけですから
おいしくなってますよね。

今のところ、
「ナマの方がおいしい昆虫」を示すデータは見つかっていません。
ハチノコは生に限る、
という方もいらっしゃいましたが、

それもあくまで調理法の1つへの好みといえるでしょう。
私は白い蛹をお吸い物にしたものが
抜群に美味しいと感じましたので

数多い調理法のうちのたった一つである
「生」が最高だと、
万人が感じる確率はあまり高くないといえるのではないでしょうか。

「生」信仰は、度胸や覚悟を試すようなマウンティングの一つの形なのかもしれません。

ともあれ、この技術によって
茹でることで失われる味の情報を補完する技術になりえます。

もちろん改良の余地はありますし
香りや食感といった「おいしさ」の構成要素は多くありますので十分とはまだまだいえませんが

少なくとも、
個人の感想よりははるかに信頼性が高い、といえるでしょう。



調理済みのものに関しては、サイエンスアゴラ2015において実際に食べてもらい、
150人ほどの方からフィードバックを得ました。


細かい解釈は割愛しますが

少なくとも、
「ヒトが実際に味わった時の昆虫の味は味覚センサーシステムの予測を大きく裏切るものではない」
ことがわかります。

また、
「味覚センサーの結果を参考にする」という方が半数以上いた事からも、
私のようにどっぷり浸かった昆虫食愛好家がいうことよりも

先入観のない、そして昆虫を食べた経験を記憶させていない
「レオ」が出した結果のほうが、
初めて食べるヒトにとってのハードルを下げる場合もあるでしょう。


ヒトを模倣したロボットが
ヒトには入れない極限環境の作業を切り拓くように

ヒトの味覚を模倣したシステムが
ヒトでやったのでは生態系へのダメージが大きくなってしまう網羅的な探索だったり、
現状ではヒトへの危険性が高くなってしまう衛生的に問題のある食味だったり、
ヒトの先入観が強く出たりする、新食品の開発と普及への道を


切り拓くとすれば、

ロボットが単なる「ヒトの下位互換」ではない、新たな未来が拓けると思います。




書いていて、
はたと気づいたのですが、

手塚治虫の漫画、ジャングル大帝レオは物語の中でバッタ食を啓蒙し、バッタ牧場をつくり、
肉食をやめるよう仲間を説得していました。
レオは昆虫の知識が足りなかったためか、不運か、
バッタ牧場は原作でもアニメ版でも失敗してしまいました。

もしかしたら味覚センサー「レオ」は昆虫食を広めるべく
転生したジャングル大帝なのかもしれません。
(念のため補足ですが、味博士の研究所は昆虫の味見をするための研究所ではありません。味を総合的にプロデュースする企業です。私が昆虫食の未来を感じているのはあくまで私の感想です。)


それでは後編に続きます。

後編では法的な概念である「家畜」を生態学的に再解釈して、
「生食できる昆虫」のための衛生管理や法整備を提案していきましょう。
更に「生食できる食品はどの程度必要か」という食の倫理まで考察してみます。
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みなさま ご無沙汰しております。
バッタの実験結果を論文にまとめるために引き続き休眠中であります。
コメント欄に質問を頂いているのですが、対応できていません。
Twitterでしたらお返事できるかと思います。

さて


数ヶ月前、
テン・ブックスという出版社の『森へゆく径』という雑誌がTwitterで募集していた
「1万円あります。本、買いにいきました」
http://www.hjissen.com/#!mori/cd0h

という企画に応募したところ、選んでいただきました。

これは、
書籍代一万円を頂き、そのレビュー原稿をお返しするという企画で
買いたいけれど後回しにしていた書籍を一気に買ってしまおうと、
ついつい(笑)応募してしまいました。

ちょうど見本紙を頂きましたので、この機会に
ブログ連動企画として紹介しようと思います。

今回は6冊の本を買いました。

料理王国 2015年 05 月号


ライフスケープ (風景写真1月号臨時増刊)


「もしも」に備える食 災害時でも、いつもの食事を


原発事故で、生きものたちに何がおこったか。


[新装版] 旅する根付 高円宮妃現代根付コレクション


もっとおいしく撮れる! お料理写真10のコツ


細かな書評は本誌を見ていただきたいのですが

これらを読んで見えてきたのは、
私達の社会は、外的な要因によっても、内的な要因によっても
「日常」と「非日常」のシフトが起きやすくなっていることです。

様々なメディアを通じて、
世界中の、そして現在から過去までの膨大な「非日常」の情報が交錯する中、
私達が持っている「非日常へのあこがれ」は大いに刺激されます。

その反動で、
日常がつまらなく、刺激がなく、
自分を成長させないような気がしてくるのです。
(自分を成長させたい、という欲求もまた非日常へのあこがれの一種だと思います)

ところが、逆に
突然の強制的な非日常がやってくると、
人々は日常を強く求め、心の平静を保とうとします。
それは天変地異かもしれませんし、ドローンのような
不可思議な新製品かもしれません。

その時にココロをかき乱されないよう、
外的な要因と内的な要因をバランスさせながら
「自分なりの日常」を保てる力こそが
地面に踏ん張って本来の自分の能力を最大限に引き出せる
「生きる力」なのだと思います。

生きる力とは、すなわち食です。(と言い切っておきます)
以前に学生相談所の精神科医に言われたことがあります。

「睡眠時間や食欲がなくなったら病気と判断します」

つまり、どんな理由にせよ、
生きる力を失った人は、社会に助けを求めなければならないのです。
そうでないと、人は生物的にも、社会的にも簡単に死にます。

さて、
今までの日常を生きてきた私達が
将来予想できない非日常に投げ出された時、
何をすればいいでしょうか。

自由にできるのは「時間」です。
これは誰でも寿命に応じて持っており、
平等に減っていく財産です。

「急ぐ」ことと「急かされる」ことは違います
「のんびりする」ことと「怠惰である」ことも違います。

自分の意志を持って、かつ自我の暴発を抑えて
時間の使い方をコントロールしていくことが
大事なのでしょう。




ということで、
以下の「非日常」なシチュエーションを想定して
日常と平静を保つ昆虫料理を作ってみました。

1,物流が止まる大きな変化が起こった。
2,ガスが止まった。電気だけ復旧した。電気があれば通信はできる
3,ここから動くことができない。交通が寸断されている。
4,今まで生活していた消耗品は残っている。
5,時間はある。やることがみつからないぐらいだ。

これは大地震でも自己破産でも構いません。
本人にとっての大きな変化としましょう。

そこで
のんびりランチでも食べられたら、
「日常を謳歌している」と言えそうです。

のんびりリッチな気分。
インセクトランチセット。

豆と乾燥イモムシのインド風カレー


ヒラタケとコシアブラとトノサマバッタのアヒージョ


カブトムシココア


カレーは炊飯器で
アヒージョは丸美屋の三ツ星レンジ<アヒージョの素>
を使いました。
http://www.marumiya.co.jp/cms/web/viewitem/4212/1
これは
紙製の容器とソースがセットになっており
容器に入るだけの材料を入れ、ソースをかけて
振って混ぜ、レンジに3分かけるだけで
アヒージョができるスグレモノです。
紙容器がきちんと閉まるので、
油も飛び散らず、バッタも生きたまま入れても逃げ出しません。
食べ終わったら容器ごと捨てられるのも、非常時には重宝しますね。

この紙容器は熱に強いので、揚げ物の準備がない場合でも
トノサマバッタをカリッカリに仕上げてくれます。
春の山菜コシアブラとの相性も抜群です。

エリサンとトノサマバッタは私が養殖したものです。

カレーは味がしっかり染みていて、肉質の香ばしい
エリサンの香りとマッチしています。
インド生まれのエリサンとインド風のカレーの組み合わせは抜群です。

カブトムシは日本の里山で大量に養殖されている
バイオマスです。味が悪く、食べるのもカラスかタヌキぐらい。
集合性があるそうで、スポットを見つけるとボロボロ採集できます。

今回は、蛹を一旦ゆでて
タンニン系の水溶性の渋みを除いた後、
ローストして、成分調整したあと
ココアにしてみました。カカオは
世界的な流通が必要ですので、代用ココアを
物品が手に入らない時に作ることができれば、
ヒマな時間も潰せますし、リッチな気分にもなります。

折り紙式の皿
orikaso(オリカソ)をつかって盛り付け
http://www.ats-co-ltd.net/Flatworld1.html

撮影は
日光を使ったライティングに挑戦。
日常の風景として提案します



ピクニックに行くのではなく
ピクニックが自宅の庭に来るようなそんなワクワク感を
演出してみましょう。


それではいただきます。









なんやかんやでバレンタインデーから一週間が過ぎてしまいました。

一年間育てたバレンタインチョコ昆虫。
とうとう味見です。

一年間でどのくらい食べたのでしょうか。


当初が22gで、
食べられた結果の重さは16gです。
なので、一年間で6g食べたことになります。

体重、測っとけばよかったですね。

それでは味見しましょう。チョコフレーバーは
彼らに移行しているのでしょうか。


マダガスカルゴキブリ Princisia vanwerebeki
うまい!臭みはまったくなく、甘みが強いがチョコの味ではない。おどろくべきうまさ。ちょっと外皮が固いのが残念。



オレンジヘッドローチ Eublaberus prosticus
?オレンジ柑橘系の妙な香りがあってゴキブリ臭い?ようにも感じるが、
甘みがあって食べられそうな妙なかおり。なんだこれは。混乱。
通常飼料の味ではない。


アルゼンチンモリゴキブリ デュビア Blaptica dubia
さくさくして食べやすく、こちらもチョコの香りではないもののおいしい。なんだ。チョコに含まれないなんらかの成分がいいのか?


意外な結果となりました。
典型的な「ゴキブリ臭さ」がいずれからもせず、
妙な香りと旨味でした。また、チョコフレーバーはほとんどせず
香りを食用昆虫に移すことはなかなか難しいようです。

彼らは窒素代謝物の再利用系を持っているので
タンパク質などの何らかの経路に、「ゴキブリ臭さ」のフェロモンを作り分泌する
系があり、それがチョコ食により阻害されているのかもしれません。

なので、食餌制限によって「ゴキブリ臭くない」おいしいゴキブリを作ることは可能で
それらは一年間飼育しても致死的でない要因によって達成できることがわかりました。

これはこれでけっこう良い成果なのでは、と思ったり。

彼らは養殖昆虫としての可能性を大いに秘めています。
そして、ヒトの生息環境のまま繁殖し、
他の昆虫に比べて野外には大きな影響を与えていないように見えます。
(ヤマトゴキブリが駆逐されている、という話も聞きますが。)

南方系のペット用種は冬には加温しないと死んでしまうので
そのような種をヒトの生活圏内で残飯を使って飼育し、食べる行為は
高緯度地帯の先進国における一つの解なのでは、と思います。

ごちそうさまでした。
一年前の自分にお礼。意外なおもしろいけっかとなりました。
この度、私 蟲喰ロトワ こと佐伯真二郎 は
このブログ、及び食用昆虫科学研究会としての活動を含む

昆虫食活動を半年間、夏眠させることにしました。

理由は学位取得に危険信号が灯ったからです。

2011年
ショウジョウバエ研究半ばでの
博士課程休学から3年、
いろいろあって「昆虫食」にたどり着くことができましたが

最後の1ピース「応用昆虫学の学位」がうまくハマらない状態でした。

今年度は第一種奨学金貸与も終了し、両親からの援助で生きています。
それも昨年亡くなった祖父の遺産によるものです。
大変な親不孝者だと思います。


2011年、休学直後の半年は
株式会社リバネスのインターンシップに参加し、
多くのことを学びました。
メンバーが交換可能なチームで何かを作ること、
締め切りを守ること。
科学は非科学的な「熱」で推進すること。
サイエンス・コミュニケーションという軽い言葉に込められた重い意味。

その中で
「自分にはやはり学位が必要だ」との決意に至りました。

平行して、リバネスの皆様に教えてもらいながら
研究申請書類の書き方から半年かけて博士論文テーマを作り、

2012年、二人の現ボスに拾ってもらい、
昆虫食のために応用昆虫学の学位を取ることを伝え、
了承していただきました。

その時、「本分は学位取得」ということを守るべく
2年間、二足のわらじに必死に足を伸ばしてきましたが、
残念ながら力不足を実感しています。


昆虫料理研究会には
2008年、仙台で独学で昆虫食研究を始めた当初から
お付き合いいただき、出版社の内山昭一さん、フリーライターのムシモアゼルギリコさんを中心とする
人脈から「一般向けメディア」の仕組みと仕事を学ばせていただきました。
研究者から離れた一般論としての社会人を意識できたのも、この人脈のおかげかと思います。
いち社会人としてどう生きるべきか。悩んだ中で考える場を与えてもらいました。

昆虫料理研究会に多く問い合わせのある
「昆虫食の科学的な意義」について答えるべく誕生した「食用昆虫科学研究会」は

文系・理系を問わず、他分野の学生を「昆虫食」をテーマに集めるという
今思えば大胆な設立でしたが、設立後数ヶ月で合流させてもらい、
多くの衝突から同時に学び、成長することができました。

現在は学生のみならず、地域貢献NGO・NPOからもメンバーが集い
机上の空論だった「昆虫食」を各メンバーの討論により落とし込みを行い
その「暫定解」を中心に動いています。この「解」は
今後メンバー成長や加入によって動くようになっています。
他分野が論理的に熱く議論することで、
「解」が次の具体的な行動の指針になることを感じています。


ここではあまり触れませんでしたが

理詰めでの徹底した討論とは正反対の極に位置する

「芸術としての直感的な価値」を気づく機会にも恵まれました。
2005年から興味をもった「鯨食文化」と
その語り部となっている「鯨工芸師」に話を聞き
鯨歯をつかったハンドクラフトを趣味として始めました。

オオスズメバチ蛹が美味しかったので彫ったもの。(鯨歯)
 


江戸時代からの天然物造形技術が培われ、今も成長を続ける
「現代根付」を習う機会にも恵まれました。
一週間に使える時間はわずかでしたが、手作業として返ってくる「直感的な価値」は大きな存在となりました。

ショウジョウバエ研究の先輩の
ラボ誕生記念にショウジョウバエ羽化ストラップ(鯨歯)を

 

お世話になったバッタの先輩に木彫のバッタタイを
 

それぞれハンドクラフトの贈り物ができたのは、
片手間の成果としてはまずまずだったかな、と思います。

その中で
ヒトはモノのイメージをテノヒラで触った時の感覚で強く決定する=「掌感覚」仮説
に辿り着いたのも、この根付というものに出会ったおかげだと思っています。

なぜ虫はあまりに多様性のあるイメージをもたれるのに、
なぜ哺乳類のイメージは共通して「モフモフ」なのか。
テノヒラで触れた時の感覚の違いではないか、として仮説を立てました。

我々人類が「ケモノ」だった時から露出していた肉球、つまり「テノヒラ」は
霊長類が平爪とともに獲得した「ユビサキ」よりも、
「根源的なイメージ」を捉えるために使う感覚器官である

という仮説です。
あながち的外れではなさそうだと感じています。


昆虫食からインスパイアされて
2013年から開始した「むしぎらい文化研究所」も育てる目処がつきました。
http://mushigirai.jimdo.com/

むしずき、むしぎらい双方が納得する昆虫の社会的地位=昆虫倫理がきちんと
話し合えるプラットフォームとして機能するように育てるつもりです。

社会的むしぎらいを再生産する不幸を防ぐのは虫好きの使命ではないか、
とも思っています。

特に、視覚障害の方の「むしぎらい」経験談は衝撃的でした。
どうやら我々が
常日頃から五感をフルに使っているというのは思い込みで

特に虫に対しては、
感覚が不慣れになることで多くの恐怖を誘引しているように感じています。
知り合いになれた教育系NPO法人や
声をかけてくださった美術教育の大学院生とも連携できれば、と思っています。


また、
学術とは別次元の価値である「芸術」が
昆虫に対する強い先入観を「撹乱する」効果もあると考えています。

これは
メレ山メレ子さん主催の
芸術・学術総合昆虫イベント
「昆虫大学」から受けた印象を育てたものです。

学術のアウトリーチに関しても、芸術的価値を利用することで
その理解や、先入観の打破を目的とした多様なアプローチができるのでは。とも考えています。
「昆虫料理標本」もそのアイデアから生まれたものです。

茨城県自然博物館の「アフリカ展」に展示参加させていただきました。
「食品サンプル」として展示することで、
日本人の来場者に、
「アフリカの奇異な食」ではなく
普通の食品との地続きでのイメージで考えてもらえたと思います。
  


また、
学術という極めてストイックな営みから生み出される価値そのものが
次第に美的価値をも帯びてきます。
芸術家と学術を触れ合わせた結果「芸術」として生み出されるものにも
立ち会っていきたいと思います。

これは
むしぎらい文化研究所 inアクアマリンふくしまでも導入したかったのですが
今回は残念ながらタイムリミットです。



当然、昆虫食研究を続けながら、
学位取得をできたらカッコ良かったのですが。
残念ながらそのようにスマートなことにはなりませんでした。

英語で書きながら論理を組んで伝える、
という極めて重要な能力向上に対して
もっと集中的にリソースを割かないと、身につきません。

これを身につけないと、博士とは言えません。

O氏の学位論文コピペ問題が表面化して、本当に良かったです。甘えるわけにはいきません。

これから半年間
やりかけのことだけやります。自分のことをやります。

1,むしコラの執筆
2,NPO法人化の申請書類作成
3,むしぎらい文化研究所 in アクアマリンふくしまの実施
4,当ブログ内容の書籍原稿化・英文化 
5,論文執筆・実験


新たな依頼は食用昆虫科学研究会のメンバーにお願いします。
多くのメンバーが社会人のため、私が動けた部分が動けなくなりますので、
お断りさせていただくこともあるかもしれません。

ご了承ください。

既に、お話を頂いていたものはご連絡し、縮小もしくは中止の方向で
進めさせていただきます。



最後に、この「夏眠」の決断に至ったのは、

数日前に
昆虫食に関する大変「雑な」記事が公開されたためでもあります。
昆虫食は多くの分野にまたがるので、その説明に正確性をもたせるために
我々の活動においては、一人の書いた原稿は必ず複数人での校正を行っていました。

ところが、
記事でインタビューを受けていた彼は
私のとある講演で聞きかじったことを中心に、
昆虫食を雑に、曖昧にまとめて、不正確なまま語っていたのです。

それぞれの情報の間に整合性がとれておらず、
情報をつかって論理も組んでいないので
彼の昆虫食研究に対する主張を汲み取ることはできませんでしたが
多くの反響を呼んでいました。

落胆と同時に実感しました。

「このままでは彼と何ら変わりはない。」

たとえどんなに不正確でも、逆に正確で的を射た批判でも、
相手に届かない、届ける能力のない状態で騒いでいては、
野球中継に野次を飛ばす飲み屋のオッサンと変わりません。

昆虫食に関する欧米の最近の風潮には危機感を感じていますし。
一方で、
日本の今の昆虫食の状況は世界の先進国のモデルとなると思っています。

日本の昆虫食研究への理念を
オランダのFAO報告書の彼らに伝えるには。
タイで養殖昆虫ビジネスを進める彼らに伝えるには。

私が成長して、能力を身につけなければなりません。

逆に言えば、
私さえ成長すれば、具体的に行動できる人脈や環境が、すでに揃ってしまったのです。


「夏眠」


聞きなれない言葉でしょうが、「冬眠」は聞いたことがあるかと思います。

冬眠と同じように
「成長しない・発達しない・成熟しない」まま、夏の期間をやりすごすことです。
その間、エサは食べますし、フンもしますし、動きます。
ただ全く変化していないように見えるのです。

一年以上かかってゆっくり発育する昆虫にみられる生態だそうで、
ゆっくりしか成長できない私にもその期間が必要であると判断しました。

皆様からは
「変化していないようにみえる」かもしれませんが
ボスと一緒に一旦、能力向上に努めます。

夏をやりすごし「機を伺って」また、目に見える形で成長を再開します。

2015年、年が明けましたら、目処が付いていると思います。

そして2015年度があけましたら Dr.蟲喰ロトワ として
再度、皆様にお会いできることを楽しみにしております。

2014年6月13日 Mr.蟲喰ロトワ
今年はセミ会が
関西クマゼミ会、関東アブラゼミ会、金沢スジアカクマゼミ会と
大変グルメな展開です。 私は本業に勤しみますので
嫉妬しながら各会場でのセミ会の成功を祈っております。

関東アブラゼミ会の2009年の様子はこんな感じ。参考までに。


元々「カニ道楽のテーマ」を使って作った動画なのですが
著作権の問題で音楽を差し替えてあります。

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プロフィール
HN:
Mushikurotowa 
性別:
男性
趣味:
昆虫料理開発
自己紹介:
NPO法人食用昆虫科学研究会 理事長
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2008年「なぜ昆虫に食欲がわかないのか」研究を開始
食べたらおいしかったので「昆虫食で世界を救う方法とは」に変更。
昆虫の味の記載から、昆虫の特性を活かしたレシピの開発、イベント出展、昆虫食アート展覧会「昆虫食展」まで、
様々な分野の専門家との協力により、新しい食文化としての昆虫食再興を目指す。

2015年 神戸大学農学研究科博士後期課程単位取得退学
テーマは「昆虫バイオマスの農業利用へむけたトノサマバッタの生理生態学的解析」
2018年よりラオスでの昆虫食を含めた栄養改善プログラムに専門家として参加
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