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それでは後編に参りましょう。
「サクサクジュワ~なグラタランチュラの調理法とは」


その前に、昨日の前編の公開後
「2年も飼育して愛着は湧かなかったのか」との質問を頂きました
そういえば書いていませんでした。追記しましょう。

このブログは学術ブログではないので、
「私の主観をきちんと入れる」ということを
大事にしています。

味の表現はまさに主観であり、
それが共感を呼ぶことで大きな力を発揮します。
また、その主観的な表現が、
「社会の普遍的な価値=客観的にも価値が見いだされるものか」
きちんと判断するためにも、
億劫にならずに公開することに意味があると思っています。

(私見や主観を述べる研究者が少ないのは、
それが曲解されて拡散し、批判を招くことかとおもいます。
ここに主観の「原著」を公開しておくことで、二次媒体による曲解を防ぐことが出来るのでは、とも思っていますが、どうでしょうか。)


お答えします。
愛着は湧きました。

彼らは
2012年3月19日に頂いたのですが

当初よりタランチュラを飼うにあたって
「家畜として扱う」という作法を使いました。
つまり「名前を付けない」ということです。

大型哺乳類の家畜の場合、
個体識別番号はつけるものの、個別に命名することはない、とのことです。
(畜産家によって個人差はあるようですが)

「タラ美」「タラ子」「チータラ」「タラオ」とか、
大変にかわいらしく美味しそうでいい名前だと思うのですが
今回はナシにしました。

コレまで三度、食べたのですが、
飼育期間が長いほど、そしてその個体の「アイデンティティ」を
理解するほど、殺すことに気が引けます。

今回の記事は、
研究所の一般公開でも共にした個体であることが
分かってしまっているので余計です。

少なくとも、いつもの採集昆虫にやっているような
「沸き立つ熱湯に入れる」
とか
「牙をもぎ取る」ようなことはできませんでした。
冷凍庫で冷凍し、
毛を剃る際も、できるだけ傷つけないよう気を使いました。
以前にもいいましたが「死化粧」のような神妙な雰囲気です。

また、料理に際して「失敗してはならない」という
強烈なプレッシャーを感じます。
焦がさないようこまめにオーブンを確認し、
使うパイ生地は事前に焼いてみて、その焼け具合を確認したり

「失敗したら廃棄」とはいえない、妙な緊張感がありました。
これはニワトリを調理した時にも感じたストレスです。


これから開放されて、「好き放題楽しく自由に」やれたほうが
気がラクだと思いますが、
その自由は娯楽的であり非生産的なので、
こういったストレスを
積極的に味わうと、見識が広がる気がします。

料理に、在りし日の姿を残す意味も感じました。

すり潰して見えなくさせることで
アイデンティティを喪失させ、
この「アイデンティティのある生物を殺した」というストレスを軽減することが
なんだか申し訳ないように感じたのです。

「おじいちゃんが共同墓地に埋葬された」ような、
墓参りに身が入らなくなるような、肩の力が抜けながらちょっとさみしい気分でした。



さて、調理に参りましょう。

「サクサクジュワ~なグラタランチュラの調理法とは」
答えは「パイ生地」にありました。



バターとパン生地を積層することで、
焼いた時、もっちりふわふわにならず、サクサクとした食感となる
奇跡のワザ、使わせていただきます。

最近は冷凍パイシートなるものがあるのですね。ありがたいです。


予め作っておいたマカロニグラタンを
ポットに入れ、パイシートになじませたタランチュラをのせ、
卵黄を塗り、チーズを振って、

200℃のオーブンで
様子を見ながらカリッとなるまで焼きます。

完成


味見
パイ生地に埋まったタランチュラは香ばしく焼き上がっており、毛も気にならずややしっとりパリっとな感じ。甲殻類系味があり、風味もよいが、エビ・カニに比べて塩分が少ないのをきちんと考慮していなかった。下味に塩水にくぐらせておくべきだった。胸部腹部の味は更に濃厚。アミノ酸の旨味と分解系の磯っぽい香りがホワイトソースとよく合う。パイ生地に載せることでパリパリ感を損なうこと無くグラタンとマッチングできた。

これは他の昆虫にも応用できる新しい調理法かと思います。

パイ生地にパリっとさせたい具を入れ、
ポットにしっとりスープを入れる。この
「昆虫ポットパイ方式」
今後共チャレンジしたいところです。


さて、
カンボジアのタランチュラの写真は、食用昆虫科学研究会の
吉田誠さんが撮ってきてくれたものです。

その中で、昆虫食の未来を暗示するような
とてもいい写真がありましたので紹介します。

この写真。
撮影 吉田誠

いいですね。
これは巣穴を掘って生活するカンボジアのタランチュラの一種。
採集者は素手で手を突っ込み、タランチュラを掴むと
さっと牙を取って共食いと事故を防ぎます。

この手元、明らかに女性です

昆虫やクモ類は最大サイズが数十センチと、
いくら大きくても女性の力を上回ることがありません。

そのため、この先の途上国の貧困解消には
体力が必要でキケンな木材切り出しのような
「オトコ仕事」ではなく
老若男女、だれでも就業可能
昆虫養殖業が

より
広がっていくべき、と考えられます。
そして、日々の仕事の中で「マニキュアを塗れる」ような
精神的に豊かな生業へと発展させていきたいところです。

そんな
「非木材林産物 Non Wood Forest Products」
の一つとして、昆虫の養殖、半養殖が重要になってくるのではないでしょうか。



ここで論文を紹介しましょう。
Markets Drive the Specialization Strategies of Forest Peoples

61の非木材林産物の調査論文を解析し、
概説したものです。

その中で3タイプに分けられています。 以下引用です。


1.農民が非木材林産物を農作物のように管理するタイプ。
農民は、商品製産樹種を農園のように栽培 するか、 森林のなかでも集約的に管理します。 農家はその樹木の栽培に専念し、家計収入の大半がその生産物によるものとなっています。 多くの場合、土地使用権と市場へのアクセスが安定していて、生活も裕福です。資源を激減 させることもありません。人々と資源利用という点ではうまく行っています。しかし、 最貧困層の人々や手つかずの森林にあてはまることはまれなのです。アジアの事例の多くは このタイプに当てはまります。

2,貧しい農民が天然林から非木材林産物を採集しているタイプ。
森林資源の管理はほとんどなされません。人々は、何とか暮らしていくために様々な 森林産物に依存していて、過剰な採集をしてしまうことがよくあります。林産物は人々の生活の頼み の綱なのですが、将来の見通しは良くありません。このタイプはアフリカに特徴的です。

3.林産物は農家の収入のわずかな部分を占めるにすぎないものの、収入源を多様化させているタイプ。
これは、農家の収入の豊かさの点でも資源管理の集約性の点でも上の1と2の中間にあたります。


そして、この論文ではこう結論しています。
「援助機関や自然保護主義者が期待したほどに、非木材林産物を販売するだけで、森林が守られ人々の生活が改善されることは、ほとんど無いので す。」

これは残念なことですが、当然です。
林産物は、「林を保ったまま」バイオマスを利用するので、
単一の作物を作る畑に比べ、目的のバイオマスにたどり着くまで、多くのコストがかかります。

日本では「巨大なバイオマスを一発で仕留める」猟師ぐらいしか
生計を建てられないことを考えると、

人件費の低い地域、つまり貧困地域でしか
森林からの採集物を使って効果的な収入にはならないのです。
逆にいうと、
裕福になっては、人件費が上がってしまい、持続できないのです

そこで、単一のバイオマスに効率よくアクセスできる
「開墾とプランテーション化」の誘惑がまた、やってきてしまいます。

そこでやはり提案したいのが、
「昆虫を使役する」という発想です

以前の記事で。
「養蟻」=化学物質を使って蟻を使役する家畜化の可能性を示しました。

蟻は森林を縦横無尽に歩き、
新鮮で栄養豊富なタンパク質を集めてきます。
ヒトは巣を用意し、化学物質で彼らの触角をダマシ、
外敵から守ることで「新たな共生関係」を築くのです。

そうすると、
きちんとした技術の確立により、人件費が高くなる=裕福になっても
非木材林産物をアリを経由して持続利用出来ると考えています。

この
「使役」というアイデアは、
先進国でも養蜂が維持できていることを考えると
技術と品種改良次第でかなりの人件費高騰まで対応できるものと考えられます。

今回のアイデアの発端は、
山形大学・菊間満先生よりアドバイスを頂きながら、勉強させていただきました。
ここにお礼申し上げます。



さて
タランチュラに話を戻しましょう。
実は、もう養殖が始まっています。
それは、少し残念ですがカンボジアではなく

チリの農家で、ペット向けに養殖されているのです。
彼らは近くに別の個体がいると、攻撃して共食いしてしまうので、
1頭1頭分けておかなくてはいけません。

ただ小さいケースで構いません。
元々待ち伏せ型の狩猟方法をとるので、
運動スペースはほとんど不要と考えられています。
体の二倍ぐらいの床面積があればよさそうです。

人でいうと「三畳風呂なし」ぐらいでしょうか。

チリでは、
ミールワームやゴキブリを養殖し、それをエサとして
タランチュラを飼育、送料込みで、25ドルでアメリカに出荷しているとのこと。

これを、
タイのコオロギ養殖とつなげれば
容易に東南アジアでも養殖が出来ると考えられます。

ただ、出荷に時間がかかるので、
大量のタランチュラを「成熟」させるための大きなスペースが必要です。
そういった意味で、やや手工業のような雰囲気、
チーズ熟成所のような規模で、食用タランチュラの養殖
始まることを期待します。

やってみたいです。
興味のある方、私をカンボジアに連れてってください。





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久々の長編になります。

今回は昆虫ではないものの「昆虫食性の食用資源」
としてこの先注目していきたい
「タランチュラ」の話をまとめましょう。


ウィキペディアによると

「タランチュラ」は俗称で、
元はヨーロッパの伝説の毒グモの名前だそうです。
噛まれると「タランティズム」という病を発症し、
タランテラという踊りを踊ると治るとか。覚えておきましょう。
タランテラ


踊りましょう。

その伝承から、
ヨーロッパ人が新大陸で見た大きなクモをタランチュラと呼ぶようになり
次第にオオツチグモ科をざっくりと示す名称になったとのこと。

低緯度地域に広く分布しており、形はよく似ていますが
地上性から半地中性、乾燥地域から高湿度まで
地域に合わせて様々な生態の分化が見られます。


食用としては、特にカンボジアでよく食べられており、
炭火で毛を焼き落とし、カニのように山盛りに売られています。


写真 吉田誠


味もカニに似ており
大変美味で、多くの昆虫食未経験の人にも親しみやすい味です。

カンボジアでは穴に潜むタランチュラを素手で掴み、捕獲しています。
2013年のFAO報告書には「少なくなっているというインタビューもある」とのことですが
現地におけるタランチュラの捕獲量、現存量については調査されていません。

この先、
人口が増えた結果、もしくは昆虫食が人気になった結果、
美味しいタランチュラが乱獲されてしまいかねません。
肉食で、数年かかる性成熟までの期間を考えると、一度乱獲されてしまうと
その回復は困難になるでしょう。

当然「養殖化」が望まれますが、どのように進めるべきでしょうか。
そのことについても考えていきましょう。


私が初めて見たタランチュラは
映画「ホーム・アローン」でした。


クリスマスのバカンスに向かう大家族。
そこで取り残されてしまった末っ子、ケビン少年は
バカンスで留守の家を狙う泥棒二人組に
独自の方法で応戦する。

その中でキーとなるタランチュラ。
ケビンの長兄、ジャイアン風の少年が
飼育しているのですが、
強そうで毒がありそうでキケンな風貌。

劇中ではケビン少年がそっと掴み、うまく利用します。
ココで思うのは
「そんなにキケンな虫を映画に使って大丈夫?」ということ。

はい。大丈夫です。
タランチュラの仲間は強い毒を持ちません。
獲物を捉えるときに消化液を出しますが、
人が噛まれても大事にはなりませんし
第一ほとんど噛みません。手乗りもOKです。

移入して問題になっている
セアカゴケグモなどの神経毒アリのクモと比べると
はるかに安全です。

逆に言うと
「映画で使われる生物は安全なものが多い」といえるでしょう。

カラス研究者の方が
「ヒッチコックの映画・鳥によって大量のカラスに対する嫌悪感を植え付けてしまった」
とつぶやいておられましたが

映画ではそのビジュアルの強さのわりに、安全なものが喜ばれます。
ですが、その安全性が好まれて映画に使われ続けてしまうと、
その虫がキケンなもの、との印象を強くしてしまうのです。

タランチュラに対する嫌悪感は
「映像制作者が植えつけたもの」と言っても
過言ではないのかもしれません。

話は少し逸れますが、
瀬戸口明久 著 「害虫の誕生」


によると
日本では1960年代
ペストやチフスを防止する、といった公衆衛生の概念を
一般に知らせるために「ハエ取りデー」というキャンペーンを行ったそうです。
これは一日にとれたハエの数を競争し、一番多かったヒトに商品を与えるというもの。

専門家からはその効果を疑問視する声もあったのですが
(蔓延地域でないのにハエを捕獲することに意味はあるか。
  発生地ではなく成虫を集めても効果は低いのでは 等)

その結果、
チフスではなく、ハエにだけ嫌悪感を持つ人が増えたのは
言うまでもありません。
また、
「幼少期、虫を背中に入れられて以来虫が嫌い」という人もいます。
この時、本人と虫は被害者で、加害者は入れたヒトです。

このことから、
「嫌悪感」の責任を負うのは加害者ではなく、近くにいる「弱者」であることが類推できます。
(人間社会においても、そのひずみによるストレスは、しばしば加害者ではなく弱者に向けられますね)

物言わぬ。
そして動物倫理を顧みられない彼らに
責任を追わせ過ぎではないでしょうか。

話を戻します。

タランチュラは、ペットとしても人気で
恐らく欧米では「嫌悪の対象を愛でる」という
ロック・マッチョ的な嗜好もあるとは思いますが
日本では単純に愛でてしまう方も多いようです。

手のひらをそっと歩くジェントルマン。
赤い密林に玉の水が跳ねる様子。美しい…


こちらを見てさっと捕食するハンターとしての才能。

いやぁ。 いいもんですね。
抜け殻もこんなに美しい。(スキャナ写真を加工)


さて、この
チリアンコモンとかローズヘアー等と言われる南米産のタランチュラ
Grammostola rosea

国内でブリードしている方から、
「食用に」ということで
生まれたてのベビーを譲っていただいたものです。

それから2年、
バッタを与えて、研究室の片隅ですくすくと育ち、
研究所の一般公開ではバッタとともにアイドルとなり、
とうとうこの日を迎えました。

感慨深いですね。

味見です。
といっても揚げて何度か食べたことがあるので、
今回は新しい料理法への挑戦でもあります。

以前の記事で、「毛を剃る」ことで毛虫の食感の悪さを克服しました。

今回も、
冷凍したあと、毛を剃ることで食感を向上しようと思います。

剃る前


剃ったあと。


表面に見える毛は二重になっていることがわかります。

赤い毛の一本一本が見えるものと、
みっしりと密生していてビロードのような感触の焦げ茶の毛です。

綺麗に剥かれた腹部は巨峰のよう。おいしさが詰まっています。

今回は「グラタン」にしようと思いました。
シーフードグラタン、ならぬフォレストフードグラタン、になります。

ところが、
今回はレシピの考案がなかなか大変です。
タランチュラの表皮をサクサクと仕上げたい所ですが、
グラタンのソースがかかったところは、しっとりしてしまいます。
うまく分離して焼き、かつ食べるときにサクサクジュワ~っと合流するような
そんな料理はないか、考えました。

次回に続きます。
オオトビモンシャチホコ Phalerodonta manleyi 
クヌギの木によくいる幼虫。集団でいることが多く、
気を丸坊主にするほどよく食べる。


見た目は…悪いですね。

高コントラストの模様、かつ昼間に堂々と食べている様は
警戒色のように見えます。
アイヌや、ネイティブカナディアンの色使いや
模様に似ています。

ただ、
ミュラー型擬態(派手な毒虫に似せる無毒な虫)の可能性もありますし
モンクロシャチホコが美味しかったので、

ここは味見しかないでしょう。

幼虫をクヌギごと採集し、食べ終わるまで少し待って、
前蛹と食べ比べてみましょう。
 
いつものように塩ゆでしていただきます。


味見


前蛹
シャチホコ特有のいい歯ざわり。
ムチップリッっとした食感はシャウエッセンのよう
内部は独特のカニミソ(クモ腹部)風味。味は大変濃い。
もうちょっと塩味濃いとよりよいかと。

幼虫
クヌギの苦味と風味があり、オトナの味だが前蛹よりこちらのほうが植物系の味が強くて好み。やはり歯ざわり、表皮の歯切れの良さはシャチホコの強みだと思う。

さほど美味しくも、
不味くもないといった感じでした。歯ざわりはシャチホコガの特徴かもしれません。
利用できる日が来るまで、頭の片隅に置いておきましょう。

オオミノガ Eumeta japonica
Eumeta variegata 2011年より学名が統一されたそうです。


以前の記事で、地域によっては絶滅が危惧されているものの、
味見をして後悔
していたのですが、
その後オオミノガ自体が移入種らしいとのこともあり
専門家同士でも保護すべきか意見が別れるらしいとお聞きしました。

保全の意思決定は専門家に任せるのはもちろんですが
私のようなアマチュアは「必要以上に採集しない」
「採集した場合は学術的価値の高い状態で保存する=ラベル付きの標本にする」
ことをきちんと自覚しておくべきだと思います。

そのためオオミノガについては、
味見以降食べる予定はありませんでした。


ところが
その後、虫cafe2014にて鱗翅目の味見について発表したところ、
ミノガの専門家、新津修平博士がお声をかけてくださいました。

「オオミノガメス成虫の味見をしてもらえませんか」

なんと共同研究(?)の申し出。わくわくします。
オオミノガの興味深い生態を教えていただきました。

1,ミノガのメスは一生ミノから出ず、オスがフェロモンに引き寄せられて交尾に来る
2,メスの羽化は蛹の上部が外れるだけで、殻を脱がない。外れた上部からは頭部が顔を出す。
3,メスの交接孔は頭部付近にあり、オスはミノの下部から交接器を挿入し、ミノの上部で
折り返し、交接孔へとアクセス、交尾する。
4,交尾後のメスは数日後にミノの中に卵を放出して、ぺちゃんこになってしまう。

いやー理解するのに時間がかかった。(というか何度も間違えた。)


ミノを切り開いたところ。右が上部

 
中を取り出してみた。右が頭部。頭を上にしてミノに入っている。



羽化。オスが下からアクセスするので、下部だけ開くものと勘違いしていた。
予想外に上部が開いたので、ミノに戻す時間違えたかと。

正しくは左が頭。 ミノは右が上部なので羽化時は逆方向。
 
尾部だと思っていた頭部。大量の毛が出てくるが頭っぽくない。
交接器に見えていた。



蛹の殻の残りを切り開く。皮が薄く、傷つけてしまった。
左が頭部。


茹でた後。内部がぎっちり卵だということがわかる。
 
ホタテと比較。精巣と食感がよく似ている。
 

味見
蛹の殻を取り去った表皮はきわめて薄く繊細。歯をあてたときのプチッと感はほとんどなく、香る木の香りとわずかな収斂味。上質な栗のような素朴な甘み。卵のつぶはいずれもやわらかく、口の中でほぐれ、スクラブ感のある食感ととも広がっていく。抜群。栗スイーツとして商品化したいぐらい。これは美味い。オオミノガヤドリバエの気持ちがわかってしまう。

今回は新津修平博士に詳しいアドバイスを頂きました。
2011年に学名が更新されていたことも教えていただきました。
ありがとうございました。





さて、
今回は味見、という形で研究者とつながることができました。
やはりヒト一人の常識では、昆虫を理解することは困難です。

オオミノガ一種をとっても、その発想と実践は、
ヒトの想像力を易易と越えていきます。

しかも、
昆虫は100万種という膨大なアーカイブとして存在し、
それらにきちんとアクセスするには、一人の力ではどうにもなりません。

つまり、
「昆虫アーカイブにアクセスするには、目的に応じた人的ネットワークを構築するしか無い」

といえそうです。
つまり「ある地域で、ニーズに応じた昆虫食を提案できるネットワークを構築した者」
が、いわゆる昆虫食研究者、といえる存在になるのではないでしょうか。

これは今までの
「研究者不在」の養殖昆虫ベンチャーを見ていて気づいたことです。
彼らは「効率」をウリ文句に、多くの投資を集め、投資が多いほどその効率が
上がることを示すことで、会社を維持しています。

ところが、
その規模が十分に巨大になった時、
既存の昆虫食文化はどうなるでしょうか。
生態系はどうなるでしょうか。莫大な投資を蹴ってそれらを守る経営者は
いるのでしょうか。

昆虫食を進めるにあたって、
やはり、昆虫研究者を手放すべきでない、
と思います。

それは
タイでのコオロギ養殖を軌道に乗せている
応用昆虫学の教授を見ていても思います。

研究者を通じて、生態系に考慮した形で、
更に社会の昆虫への偏見を減らしていくような
「研究者ネットワーク型・課題解決型の昆虫研究体制」を作るべきではないか、
と考えています。

その時、
日本という教育の行き届いた、膨大な標本をもち、多くのアマチュア昆虫研究者を
抱え、しかも昆虫食文化のある、特異な国の真価が発揮されるのではないでしょうか。







今日は梅の木についていた見るからに食欲をそそるイモムシ。
カラスヨトウ。Amphipyra livida corvina



パッと見はスズメガのような尾部に見えますが
スズメガが角状のしっぽ(尾角)に対してこれは円錐状の突起。こちらのほうが肉感的です。
茹でていただきましょう。

味見。
少し苦味があるものの、スズメガ系のいい味。モモスズメが近い味。コスズメが近い触感。
姿も似ているが味も似ている。やや粒感のあるこしあんのような食感もあり、香ばしさもある。楽しめる味。


ここで「茹でただけなのに香ばしい」という
昆虫独特の現象について仮説を立てておきます。

1,アミノ酸・糖の存在を知らせるニオイ
アミノ酸と糖を加熱して起こる反応を「メイラード反応」といいます。
メラノイジンを主成分とする様々な物質と香り、特に香ばしい香りが特徴です。
プリンのカラメルのニオイ、というとピンとくるかと思います。

この昆虫には、アミノ酸と糖が含まれており、それらが常温で、何らかの酸化酵素と
反応して、このような香気が発生。エネルギーと体の構成要素である2つの主要成分に
我々ヒトは食欲をそそられる。

2,アルカロイドの分解を示すニオイ
アルカロイドは多くの植物体に含まれる毒物質で、
ヒトも肝臓に解毒作用はあるものの、多量の摂取はキケンです。

同様に植物食性の昆虫にも、解毒または耐毒の仕組みがあると考えられます。
解毒は消化酵素によって無毒化するもので、
耐毒はそのまま体内や血液中に毒成分をもっていても、
生命活動に支障をきたさない仕組みのことです。

特に毒を酸化分解した場合、
香気成分であるフェノール、ピリジン、ピラジンなどが
出てくる可能性考えられます。。

そのため、「植物由来アルカロイドを分解している昆虫」
は食べられ、
「血液中に滞留させている昆虫」は食べられない、という嗅覚弁別なのではないか、
と考えると、
ヒトが火を持つ前から、「香ばしい香り」を良い香りとしている理由にもなるかもしれません。
(香ばしい と 火 が先に関連していたならば、火の危険性や火に対する恐怖と全く別の「食欲」がそそられる理由が説明できません)

もうちょっと先の話ですが
「嗅ぐことで美味しい昆虫を見分ける」
ことができるようになるかもしれませんね。 感覚を磨いていきたいと思います。





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男性
趣味:
昆虫料理開発
自己紹介:
人生迷走中 顔はクロトワ似「なぜ昆虫に食欲が湧かないのか」をテーマに研究開始。食べたら美味くて研究頓挫「昆虫を美味しく食べる調理法とは」に変更/食用昆虫科学研究会 Edible insect science meeting 昆虫料理研究会 趣味自転車;鯨食文化研究;法螺貝;トランペット;リコーダー;鯨歯彫刻
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