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ふつうの料理にありがちな、よろしくないことが「異物混入」です。

多くの場合、昆虫料理が入っている器のデザインは、
昆虫料理でない料理に使われているものと
共通の器ですので、あからさまに昆虫が見えると
昆虫を食べたことのない人にとっては
「異物混入」の方を強く連想してしまうのではないでしょうか。


昆虫は味に問題はありません。
むしろおいしいぐらいです。
そのため、
「最初の一口」「First bite」「お食い初め」が大事です。

とある友人が
出産祝いを送るというので「お食い初めセット」というものがあることを知りました。
うん。これだ。



「昆虫お食い初めセット」だ

そこに必要なのは
「昆虫料理が入っていて当然」な器、つまり
「昆虫食器」の開発が必要なのではないかと。考えました。

そう思ったものの、
私には食器をデザインする能力も、開発する時間も資本もありません。

とりあえず作れる範囲で手工芸でこんなものを作っていました。

「メスアカミドリシジミスプーン」某ファミレスに、試用しにいきました。

話は脱線しますが
ミドリシジミの仲間は「ゼフィルス」と呼ばれ、その愛らしさ、美しさから愛好家が多いそうです。
一方で彼らの生態はなかなか特殊で、高所を飛び回ることから網での捕獲が難しく、
標本にするにも成虫を捕獲したのでは翅が傷ついてしまうとのこと。

そこで、昆虫学の出番です。
彼らは卵を高い木の枝に産み付け、越冬します。
その卵を冬の内に採集し、孵化させて育て、羽化まで見守ることで、
採集網に傷つけられていない「完品」を得るのです。

また、その多くは希少種で、なかなか捕まえることもできませんし
安易に捕まえまくって生息地域にダメージを与えていいものでもありません。

そこで愛好家の蛾屋さんから申し出を受け、1頭だけ味見をさせていただけることになりました。

繰り返しますが、
昆虫食は昆虫全般を対象にするため、決して1人ではカバーしきれません。
必ず専門家を通すことで、そして彼らから信頼を得ることで、

全ての昆虫を研究対象に、
イシューに合わせた養殖昆虫を開発できる体制を整えたいと考えています。

さて、メスアカミドリシジミの幼虫を頂いたのは昨年の3月。


前蛹になるまで桜の新芽を与えながら待って。

おいしいことは予想されていたこと、小さいので味を殺したくないことから

塩もポン酢も付けずに茹でて、そのままをいただきます。おいしい。

話を戻します。

スプーンを作ったものの、他にも大物がほしいなと思っていました。
陶器の器がいい。

と考えていたら
こんなイベントが京都で開かれることに。

「いきもにあ」

生き者好きな人が創作をして即売するイベントです。

http://equimonia.jimdo.com

「生き物がすき」には多種多様があります。

私のように「食べることがすき」であったり「生物学を通じて好き」でも構いません。

ビジュアルが好き、手触りが好き、色合いが好き、質感が好き、死体が好き、骨格が好き、何でもありです。

そんな「ざっくりした場」を運営・維持することで見えてくる独特なものもあります。

私があったらいいなと思うもの、

そこに技術や時間がなくて、自分の中の優先順位が低くて

妄想レベルで留まっているもの。

それを上回る妄想力&実行力で、他の誰かがすでに形にしていたりします。

今回は工房うむきさんでした。

http://purple.ap.teacup.com/umuki/これにノックアウトされ、はるばる京都まで買いに行くことに。

通販もできると伺ったのですが、本物がみたいなと。

そして手に入れたのがこれ。あれ、スズメバチを買いに行ったはずなのに。
前の記事のイナゴソースの完成に前後して

「バッタの形の醤油差しをつくりたいな」という妄想も頭をよぎっていたのです。

予算をぶっちぎりましたが、2つとも購入。もちろんそれだけで済むわけもなく。Twitter上でお世話になってはじめてお会いする方々とか
以前からお世話になっている方に挨拶も満足にできぬまま

閉場となってしまいました。うーんなんとも。

出店者側になって、懇親会で挨拶する、
というのがもっとも親睦を深められる気がします。


ようやく念願の「昆虫食器」を手に入れ
クリスマスに作ったのがこれ。オオスズメバチは昆虫食の対象でもあるとともに
昆虫食の捕食者でもあることから、二重の意味でストーリー性をもたせることができます。

「昆虫食器」のアイデア、まだいろいろあるので、実装していきたいと思います。

いきもにあの開催後
「いきもの好きのためのイベント」は「生き物の保全につながるか」
というトピックがありました。このイベントは最先端の生物研究者を呼んでセミナーを行うなど、
生物に関わる専門家と、非専門家を一緒にしたお祭りみたいなことになっています。

それが
「役に立つから良いイベント」とか
「役に立たないから不完全なイベント」となるわけではありません。

もちろん、
生き物がいないことにはそれらをモチーフにすることはできなくなってしまうので
生き物の創作によって、生態系を破壊することがあってはなりません。

なので社会的な優先順位に差はあるけれども、
全ての人が優先する方にモチベーションをもたなければならない、
というのはちょっと違うと思うのです。

1つ言えることは
昆虫食を広めたい私にとって、このイベントから収穫があったように、
「生き物好きが集まるイベントは、生き物に関する他の取り組みをしたいヒトにとって収穫を得られる」ということです。

他人のイベントについて、自分の目的を達成していないからと低評価をつけていけば、
次第に自分の目的を達成してくれる他人が現れるなんて、そんな都合の良いことはありません。

目的を達成するには「主催になれ」ということですね。そして収穫物に対価を払えと。

私が昆虫食を広めるためには、今回の「昆虫食器」のように
創作の世界の技術は欠かせないと考えています。

そこではあくまでも私が「主」であり創作者は「従」ですので、
なんらかの対価を支払わなくてはならないと思っています。

逆に、昆虫食にアート要素を見出して
社会的な問題を提起するアートとして
表現してもらう時には私は技術者として「従」に徹することになるでしょう。

昆虫が社会から嫌悪されているインパクトを利用して
昆虫食が何らかのアート性を帯びるとしたら
私の目的を毀損しない範囲で技術協力をします。

その中で、
「昆虫食が社会においてどのようなアート要素を持っているか」を
言語ベースで論理的に説明してくれたら、
それは社会から感覚的に(笑)逸脱しつつある自分にとっても
大きな収穫になることでしょう。


話を戻します。

昆虫食普及には昆虫食器の開発を、という話でした。

食用昆虫にふさわしい「器」というのは何も食器だけではありません。
食べるシチュエーション、食べるヒトの経験、興味、周囲の環境などなど

様々な昆虫の周りの「器」を設計していく必要があるでしょう。

かつて、昆虫は食料でした。
そして今も、昆虫は食料としてのポテンシャルをそのまま残しています。
変わったのはヒトです。そして人を変えることができるのもヒトです。

昆虫を食べなくなったヒトが、再び昆虫を食べるようになる方法はまだわかりません。
昆虫を食べていた頃の環境や経験を完璧に再現することはできないからです。

だからといって、
経済的に困窮したヒトに強制的に食べさせることは豊かとはいえません。

個人の希望を叶える形で全く新しい「昆虫のお食い初め」が起こっていくことが理想です。

そのときの
「昆虫の器」の集積は、新しい昆虫食文化、
昆虫食ルネッサンスとして
面白いものになっていくことでしょう。
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とてもいい漫画に出会いました。
「ダンジョン飯」

ベタなRPGのフォーマットを使いながら、
そこに生じる生態系についても真摯に論じて、その持続可能性まで
長期的に見据えて実践していく、すばらしいダンジョン生活が語られます。



現在二巻まで発売されています。



二巻はよりディープな
昆虫食の世界が繰り広げられます。当ブログをご覧の皆様必見です。

まめだぬき先生の著書「きらめく昆虫」が食材写真集に見えてきます。


書籍版も印刷が精細で美しいのですが、電子書籍のバックライトのある画面で見ると
いっそう「きらめいて」見えました。おいしそうです。

以前にTwitterでまとめていただいた、ダンジョン飯の再現レシピについて、
ブログにまとめ忘れていたので、まとめておきます。


きっかけは昆虫食仲間の
ムシモアゼルギリコさんの出産準備でした。
赤子の管理に専念するため、他の食用昆虫が私に託されることになったのです。
昆虫はモバイルなため、宅急便で運搬可能であることが大変に便利です。

犬猫ではこうはいきません。
また、あらいぐまラスカルのように一度飼育した野生動物を、
人間の都合で野外に放つなど言語道断です。

と、
分散型昆虫ファーミングの将来性を感じつつ
受け取ったのですが、いかんせん冬、保温に気を使ったものの
熱帯出身のサソリが死にそうになってしまいました・

(同梱のゴキブリ達は元気でした。すばらしい。)

死んでしまう前に、ギリコさんの了解をとって急遽
サソリ料理をつくることに。揚げればおいしいことはわかっていたのですが、
何か別の調理法がないかと。考えを巡らせていたところ

ダンジョン飯があるじゃないかと。

漫画内で使われていた大サソリは全長1mほどのサイズだったので
このサソリだと1/10スケールぐらいでしょうか。

ミニチュアに見えるよう、100均で小さい土鍋を買っておきます。

乾燥スライムは塩蔵クラゲのパッケージをフォトショして歩き茸はエリンギとしいたけで作成しました。材料が揃った!シンプルに水炊きおいしい。ごちそうさまでした。

ダンジョン飯では食べて終わりでしたが
ココで終わらず、標本作りまでチャレンジしましょう。ということは、水炊き中でもUVで光ったということです。
「ブラックライトで照らされるサソリ闇鍋」とか美しいかもしれませんね。


さて

「最近はハードSFが無くなった」と言われることがあります。

ハードSFは1950年代に生まれ
いわゆる宇宙系、ロボット系のガチガチに理論を詰めて、
エネルギー源であったり未開発の技術を1点だけフィクションにし

その他の現象をきわめてリアルに構築するSFのジャンルです。

私が思うのは

「ハードSFが無くなったのではなく、リアルさを感じるSFの分野がシフトした」
のではないかと考えています。

「食」はリアルに変革を迫られていることを実感する分野です。
逆に「宇宙」はあってもなくてもいい、ファンタジーに近いものになっています。
また、映像技術の発達により、誰でも宇宙に行ったような景色が見えてしまいますし
無人機が活躍して有人探査が減る中、そのリアルさは薄れていくのでしょう。
情報技術だけではリアルな食を生み出すことはできませんから、
実感のある科学技術として、食品科学がより身近になったと考えられます。

ということで、「食」は21世紀のハードSFのメインになってくるのでしょう。

前にマッドマックス 怒りのデスロードについても考察しましたが
前後してインターステラーも見ました。

これらもメインの課題、登場人物の行動の動機は食料でしたし、
それについてきちんと設定を練っているところが
物語のリアルさを高めていました。

そこで宣言しておきます。

「昆虫食の開発と実践はハードSFである」と。

唯一「昆虫食が普及していない」という一点のみをフィクションにして

既存の食品科学を駆使して最高の昆虫料理を開発する。

そして
昆虫を生産し自給する集落を見越してその文化を構築する。

お遊びでずさんな昆虫食をすると、おもしろさが減る気がするのは
私がハードSFとしての完成度を高めようとしているためだと気づきました。

そこから見えてくる未来はユートピアか、ディストピアか。
あなたは何が見えてきましたか。

ということで、
昆虫食を題材にした創作物のアイデアがありましたら、
相談に乗ります。

昆虫食の兄を持つ妹botなどの日常系でも
テラフォーマーズのような宇宙と絡めてもいいかもしれません。

もちろんダンジョン飯もハードSFだ、と言えるでしょう。

また、ハードSFはフィクションの
但し書きを一点しか書かなくてすむ、という点で誤解を招きにくく、
実際のサイエンスとの相性も抜群です。

鉄腕アトムという創作が二足歩行ロボットの研究者を育んだように
メーヴェが実際に一人乗りジェットを生んだように

様々な創作物は相互に影響しあい、「文化」を形成します。
もちろん研究も、そこから逃れることはできません。
むしろ積極的に文化社会の形成に関与していくことが
これからの市民化したサイエンスに求められる役割でしょう。

研究者や漫画家、アーティストが考えた
おいしい未来を作り出す「実践」の
多様な形を見たいものです。

あなたが考える昆虫食の未来、パラレルワールド
なんでもお待ちしております。
何を言っているのだ、と感じるでしょう。
昆虫と普通の食材は区別がつくじゃないかと。

元ネタは
伝説的なSF作家、アーサー・C・クラークが言った
「充分に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない。」
Any sufficiently advanced technology is indistinguishable from magic.

です。


常々言われることがあります。

「昆虫料理は見た目が悪いから食べたくない」と。
多くは食べたことのない方の言い分です。

先に「バッタハンバーグ」で実践しましたが、
「見た目が昆虫とわからない昆虫料理は普通の料理と区別がつかない」
ことがわかりました。

では
「昆虫が見た目にわからない昆虫料理」
とはどう定義できるのでしょうか。整理してみましょう。




気づいてしまいました。

「昆虫が入っている」かつ「昆虫が入っているとわからない食品」と
「昆虫が入っていない」かつ「昆虫が入っているかわからない食品」
いわゆる通常食品は、見た目に区別がつかないのです。



アメリカのFDAは農作物に混入する昆虫の上限値を設けています。
たとえば、ピーナッツバター100グラム当たり昆虫の断片50個まで。 カレー粉では25グラム当たり100個まで。缶詰トマトでは缶当たり果実を加害するミバエの卵5個とウジ1頭、ウジだけなら2頭まで、とのことです。

我々の食べる食品にアメリカの農産物は不可欠ですし、
それらは不分別で口に入っていますから
当然、多くの方は昆虫の断片を食べた経験があります。
そしてそれを認めることは大きな恐怖を伴うようです。

「昆虫を食べたくないヒトにとって、通常食品に昆虫が含まれていないと
証明することは悪魔の証明」といえるでしょう。これは怖い。

この事実を自覚させられることになるので、
見た目にかかわらず、昆虫料理に過敏に嫌悪感を表す人が多いのも納得です。

そして食品混入事件のような「見た目にわかる汚染」が目につくと
大騒ぎしてしまうことにもつながっていそうです。


更に、昆虫を食べたくないヒトにとって残念なことに、
既存の食品の多くは、組成も食感も見た目も昆虫によく似ています。


画像処理技術がお相撲さんとポルノが区別しにくい、という話も聞きました。
現在の画像処理技術では食品と昆虫食も区別できません。





これは公開されている画像処理技術を使って画像が
食品のものかどうか判断する自動処理システムです。

不意に(特に深夜)食欲をそそる画像をSNSに投稿することを
「飯テロ」と呼びますが、その飯テロを防いてモザイクをかける目的で
運用されているものですが、私は昆虫料理の出来栄えをチェックする目的で利用
させていただいています。




また、「昆虫の姿をすりつぶしてみえなくする」というアプローチは
昆虫の大事な美味しさの要素である「食感」を失わせてしまいます。
食感の楽しい昆虫を使う場合はできるだけ避けたいものです。

そこで
逆のアプローチを思いつきました。

「他の食材の姿を昆虫に似せる」のです。
「昆虫擬態料理」
と名づけてみましょう。


昆虫は自然環境や危険生物に擬態して捕食を逃れてきましたが
人類の加工技術によって、
昆虫の周囲の環境を改変し、「昆虫の姿を見えにくくする」ことができました。


おお昆虫が見えにくい。

材料は
パプリカ
アボカド
かいわれ
マカロニ
カキノキダケ(マカロニの頭部に)
カシューナッツ(揚げて茶色く)
塩コショウ
お好みのドレッシング

です。

マカロニの弾力、カシューナッツの香ばしさとナッツ感の中に
フェモラータオオモモブトハムシの柔らかい食感と、噛んだ時に広がる
卵黄のようなコクのあるスープが大変においしく、見た目にも

「昆虫の姿の見えにくい」料理に仕上がりました。

もう一度いいます。

高度な昆虫料理にみなさま、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

この
フェモラータオオモモブトハムシが食べられる
そして昆虫醸造調味料が味わえる試食会 1月23日 @神戸 


予約受け付け中です。お待ちしております。

前の記事で、昆虫発酵調味料、イナゴソースについてご紹介しましたが

それにあわせて、
どうしても食べてみたい、みなさんに食べて欲しい昆虫がありました。

「フェモラータオオモモブトハムシ」

噛んでしまいそうな名前です。フェモハムシ、とか略称がほしいですね。

原産は東南アジアの熱帯に生息する普通種だそうですが
生きた植物を食べるため、植物防疫法により輸入はできません。

ところが、
なぜか三重県松阪市の河川敷に広がってしまったのです。
理由ははっきりしていませんが、美しくて大きいことから
昆虫愛好家がこっそり飼っていて逃がしてしまったのではないか、との憶測もあるようです。

日本の冬もどうにか越しているとのことで、昆虫のポテンシャルの高さを
見せつけられます。

ちょっと遠いのですが、
そしてお伊勢参りのシーズンですがお伊勢も赤福にも目もくれず。

多く取れたら来年の発酵調味料の原料に使えるかもしれない、と考え

イナゴソースのいなか伝承社と関西虫フェスの主催者である「昆虫エネルギー研究所」にも
声をお掛けし、偶然忘年会に松阪市にお勤めの、大学の兄弟子にあたる方に
お会いできたことから、実施にこぎつけました。

フェモラータオオモモブトハムシを採る会。

採るのに夢中であまり写真がありませんが、ご了承ください。

彼らの幼虫は河川敷に繁茂しているクズに侵入します。
成虫はクズの葉を食べているそうなので、クズさえあれば生活史が回ります。
けっこう大きい昆虫なので、そのままクズの細いつるではスペースが確保できません。
なので、
虫こぶ(ゴール)を形成して、木質で覆われた強固な「シェルター」を作るのです。



このぐらいの太さが越冬にちょうど良いようです。
完全に枯れている虫こぶには住んでおらず、少し生きた木質が残っていて
湿度が供給されているものがよいようです。


より太くて立派な虫こぶもあるのですが、今の時期は脱出後でした。

大抵の虫こぶは手でもばらせるのですが、固いものは剪定バサミや
これが活躍しました。


いなか伝承社さんには申し訳なかったのですが
醤油の原料に使うにはちょっと少なく
捕獲数は135g、およそ200頭でした。




今回のキモは
「将来特定外来種になりそうな拡大中の昆虫を正しく扱うこと」です。


持ち帰って飼いたい衝動にもかられたのですが、外来種のコントロールに
昆虫食を役立てたい、と言っておきながら、
外来種の拡散に手を貸したのでは
本末転倒です。夏の成虫はまた再訪して、捕獲しようと思います。

今回は全ての虫を現地でゆでて、持ち帰ることにしました。


このコンロが活躍しました。夜の河川敷でもしっかり茹でてくれました。



やっぱ野外の虫捕りは興奮しますね。狩猟本能が帰ってくる気がします。

とても気分が良いです。




気になる味ですが、
抜群に美味しいです。カミキリムシに匹敵します。
ほのかに豆の香ばしさ、外皮もさくさくと食べやすく、中からは
上質なクリームが卵黄のような強いコクとともに広がります。


時期も繭を作った前蛹の状態で止まっており、若齢幼虫はみつかりませんでした。
おそらく休眠状態にある気がします。

(なぜ熱帯産の本種が冬眠できるのか、よくわからないので原産地での生態をご存知のかた、教えてください。)




さて、見ていると
マカロニに見えてきますね。





ここで、昆虫料理の新たなアプローチが見えてきましたので、実践しました。

キーワードは

「高度に発達した料理は昆虫と区別がつかない」

Any sufficiently advanced gastronomy is indistinguishable from insects.


次の記事に続きます


昨年10月
ついに昆虫醸造調味料の一般発売が始まりました。

この快挙を成し遂げたのは和歌山県 いなか伝承社さん。

地域活性化団体「いなか伝承社」というほっこり系の名前の会社から
なんとも
とんがったものを出すことになりました。

反響もあったようで、地元や大手の新聞にも取り上げられたものの
「昆虫食の人」と言われてしまうのが難点だとか。

昆虫食はそれだけでインパクトが強いので、
他の本意を撹乱してしまうことがあってなかなか扱いに困るものです。

別の例ですが
メレ山メレ子さんはエビ・カニを含め昆虫食もあまり好きでないとのことなのですが
ラジオ出演の際に妙にパーソナリティーが昆虫大学で出された昆虫食に食いついてしまい、
なかなか修正に時間と手間を要していました。

我々食用昆虫科学研究会がサイエンスアゴラに出展した際も、最初の年はとりあえず希望者に昆虫を配ることに手一杯で
フィードバックや我々が伝えたいことを十分に伝えられず、人だかりをさばくだけになってしまいました。

キャッチーであることはそれなりに危険物でもあります。

いなか伝承社は
地域活性化団体なので昆虫食だけでなく、
いろいろやっています。

私が見たものだけで、梅食べたり栗食べたり、地域の子供達と山の中散歩したり
もちろん虫も食べたり。

以前は田舎の「つきあい」を通じた祭りなどのイベントにより
結果として人同士のネットワークを作ったりしていたのですが

過疎化が進むことで人と人の物理的な距離も遠くなり
逆に大型ショッピングモールのような全国で画一化された娯楽も増えてくる中で
地域独特の文化は放っておけば衰退していってしまいがちです。

それに対抗して田舎なりに自活していく、
ありモノを見つけてアイデア勝負で
全国にもない新しい価値観やイベントを作っていく、そんな感じの団体です。

地域をつなぐ役割を買って出ることで、
そのうち地域が大きく変動するようなことにも
耐えられるネットワークへとなっていくのかもしれません。

とはいえ、
そこに昆虫醸造調味料を作ってもらうのも
なかなかの挑戦でした。

初年度(2013年度)はとある
無農薬農場で多発生したイナゴを譲ってもらい
半年醸造させて2014年3月に試食会を開催しました。
そして本格醸造の今年、
二年ごしの一般販売にこぎつけたのです。

クラウドファンディングにも挑戦しました。残念ながら達成しませんでしたが。
資金調達は無名であればあるほど、なかなか難しいものです。

クラウドファンディングで資金調達ができなかったこともあり、
残念ながらまだまだ高いです。仕込みの量も少ないですし、
大きさに関わらず1日一回かき混ぜなければならないので、
手間もかかるそうです。

それを分かった上で、
おもしろさに共感してくれる方
誰も食べたことのない、新しい味覚に挑戦する方にぜひ味わっていただきたい。

どう味わうか、ですが
醤油の味わいというのはなかなか奥が深いものだと実感しているところです。

ビンのフタを開けると酸化が始まるので、できるだけ冷凍庫で保存します。

バッタソースは先味が強めの「塩っ辛い味」で、後味がスっと消えます。

これはグルテンなどのタンパク質を塩酸で加水分解した
「アミノ酸醤油」に恐らく近いでしょう。
雑味のない、「素直でまっすぐな醤油」です。

また、少量ではありますが多種多様な昆虫も醸造調味料にしてもらいました。
 
(ここであえて醤油としないのは、醤油にはJAS法に定められた原材料の縛りがあるためです。
昆虫が含まれていると醤油とは今のところ名乗れません)

イナゴソースの味をどのようにしたらおいしく、
印象的に味わえるか、試行錯誤しながら考えていたのですが
ようやく見えてきました。



1,味が既存の醤油にあまりに近いので、調味料として使うと味が埋もれてしまう。
かなり普通の美味しい醤油としてあじわえます。それが利点でもあり欠点でもあります。
昆虫らしさを感じにくいのです。

2,先味が鋭く、後味がひかないので、長く味わおうとすると物足りない。

3,香りが豊かだけれど、他のアミノカルボニル反応を含む「香ばしさ」にうずもれてしまうので、できるだけ減らす方が良い
4,チーズのかすかな苦味と、乳製品のまろやかさがよい

5,果物系の香りとなら邪魔しあわない


ということで、完成したのが

「イナゴソースジュレ」と「レアチーズスイーツ」と「ドライトマト」の組み合わせです。
今回は
他の用途で購入していたメチルセスロースを使っていますが
寒天やゼラチンなどの他のゲル化剤でも使えそうです。
これにより、先味がまろやかになり、後味まできちんと味が持続します。

ドライトマトは多くのグルタミン酸を含んでいて、アミノ酸分解物の旨味と相性がよいですが
印象としては果物の甘さ、みずみずしさもあって塩分とも相性がよいので
野菜スイーツとの相性を試した見たのですがピッタリでした。


ということで、
昆虫醸造調味料「イナゴソース」の試食会を、
兵庫県神戸市、摂津本山駅近くのレストラン「パレルモ」で開催します。

1月23日 15時から17時のコンパクトな試食会です。参加費は2000円です。
会場のキャパの関係で、参加は10名様とさせてください。

ぜひご参加ください。
ご予約フォームはこちら

なぜこちらでできることになったのかは、また別でご紹介します。


そして、とある特殊な食材調達のため、
三重県のとあるところに行ってまいりました。
次の記事に続きます。
Mushi_Kurotowa
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プロフィール
HN:
Mushikurotowa 
性別:
男性
趣味:
昆虫料理開発
自己紹介:
NPO法人食用昆虫科学研究会 理事長
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2008年「なぜ昆虫に食欲がわかないのか」研究を開始
食べたらおいしかったので「昆虫食で世界を救う方法とは」に変更。
昆虫の味の記載から、昆虫の特性を活かしたレシピの開発、イベント出展、昆虫食アート展覧会「昆虫食展」まで、
様々な分野の専門家との協力により、新しい食文化としての昆虫食再興を目指す。

2015年 神戸大学農学研究科博士後期課程単位取得退学
テーマは「昆虫バイオマスの農業利用へむけたトノサマバッタの生理生態学的解析」
2018年よりラオスでの昆虫食を含めた栄養改善プログラムに専門家として参加
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