忍者ブログ
[1]  [2]  [3]  [4]  [5]  [6]  [7]  [8]  [9
中編では、ミールワーム、
つまりチャイロコメノゴミムシダマシの生理と生態について、
「木質昆虫学」という視点から掘り下げます。

ゴミムシダマシという名前は大変に誤解を招きます。
ゴミムシとはけっこう遠い仲間で、全く別のグループと考えてよいです。

参考文献はこちら

木質昆虫学序説




森林利用、というヒト視点を軸に、概観した本なので、
昆虫の利用をヒトへの利益の視点から考えたいわたしにとっては
大変うれしいまとめでした。


話はそれますが、カミキリムシがおいしい、という話はここでもよくしますが
なかなか無料で、多くの人に提供できる数は手に入りません。

カミキリムシが薪の利用低下とともに入手困難な昆虫になってしまったからです
「カミキリが侵入した苗木を見分けるイヌ」とか(本来は植物防疫目的ですが)
とても食欲、もとい想像を刺激されます。

話を戻します。
この本は膨大な情報量と文献リストへのアクセスができるので
門外漢が分野の概要を知るのにやはり母国語のほうがスピードが節約でき
すごく助かりました。

木質という地球上における残存量最大の「やっかいな」バイオマスの
物理化学的性質、そして植物学的特徴という基礎的な面から
林業などの「実学」につながる部分
更に食用も含めた未来の
昆虫利用まで総合的に論じている点で非常にためになります。

また、
木質昆虫の飼育養殖は難しく、木材が巨大であること、
そして木材そのものが売り物ですから
それらを全て調べることは容易ではありません。


昆虫種や生態など、
研究観察しやすいものとしにくいものの間に、研究進捗のギャップがあることから
概論を導くためにかなりざっくりとした類推を含む部分もあるので、
この本の主張から引用して持論を展開するのはあまりよろしくないように思います。
原著に至るガイドラインとしてすごく役立つかと。
母語で新しい分野の概観を読むことができるというのはとても恵まれたことだと感じました。


お買い得ですが安くはない本なので、ぜひ最寄りの図書館に購入希望を出してみましょう。
図書館は不特定多数の人に安価で読書の機会を提供する裝置なので
こういう地雷を公的機関に仕掛けて、将来の昆虫研究者を増やす活動に勤しみましょう。

この本のガイドに従って、
木質昆虫、とくにゴミムシダマシについて
詳しく見ていきましょう。




昆虫が利用する木質の分類として大きく2つにわけられるそうです。

一つは生きている木を食べる「一次性種」と
もう一つは死んだ木を食べる「二次性種」です。

一番大きな違いは木の生理的食害応答があるかどうか、です。
カミキリムシなどの生木を食べる昆虫は、生木にある成長点などの
栄養豊富な部分をターゲットとし
食害に対する防御機構をかいくぐり、しまいには木を枯らしてしまいます。
枯死した木には、その分解状態に応じて生木食以外の二次性の昆虫が、
その分解を引き継いでいきます。

枯木のバイオマスは生木に比べて
炭素ばっかりでタンパク質の元となる有機体の窒素が少なく、
それでいて生木と同様に
セルロース、リグニン、ヘミセルロースなどの
多様な高分子が互いに強固に接着したままですので
その分解にはもちろん多様な酵素が必要でしょう。


そのため
「生木食のカミキリムシだけを生産し続ける林」というバランスを保つのは
なかなか難しいと思われます。

木材利用も含めて考えると、
木を枯らしてしまうと、木材としても使いにくい枯木になってしまうことから
一次性種であるカミキリムシはおいしいけれども、将来性があまりないのはこのためです。
薪利用とカミキリムシ食はセットで考えるのが良さそうです。




一方で、ゴミムシダマシの多くは
枯木を食べる二次性種です。一次性種であるキクイムシのフンを食べる
ものもあるようで、恐らくアゴの発達と機械的強度とも関連しそうです。

また、ゴミムシダマシの幼虫は脂肪が多く、タンパク質は少ないので
貧窒素・低湿度に耐える特徴があるのかもしれません。

ミールワームは特に乾燥に強く、コムギのふすまで飼育できますが
湿気を与えると一気にカビが出てしまいます。
飼育にあたっては野菜くずなども食べてくれるので
湿気の溜まらない排気システムを備えた
生ごみ処理機
Livin Hive 
もキックスターターで最近有名になりました。
http://www.livinfarms.com


これは見事に14万5千ドルの資金調達に成功し、現在製作中だそうです。
830 backers pledged $145,429 

先の論文のことを考えると、
これに、
プラスチック梱包材も入れられるかもしれません。

では、木質昆虫であったミールワームがなぜ、
スタイロフォームを分解できたのか、後編で考えてみましょう。

そして、ミールワームから、
昆虫によるバイオマス利用のブレイクスルーが起きるのかどうか、まで、
予想してみます。

PR

昨年10月に、面白い論文が出ました。

ミールワームが共生細菌と一緒にスタイロフォーム(発泡ポリスチレン)を分子レベルまで分解する

というものです。

とても良い写真とともに。

http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/acs.est.5b02661

確かにスタイロフォーム食ってる。
スタイロフォームとはいわゆる発泡スチロール。建築材で大量流通しているのでとても安く、
造形の世界でも大型の造形物の芯に使われたり、とっても便利な素材です。

二報にわたって示されたことには、ざっくり言うと

1,ミールワームはスタイロフォームを食って分子レベル(脱ポリマー化と二酸化炭素への分解)の分解をしている。コムギのフスマを食べさせたものとスタイロフォームを30日食べさせたものは、生存率に有意な差はなかった。食べたスタイロフォームのうち16日で半分程度がCO2へ。

放射性同位体の炭素C13を使った追跡によって確認
2,スタイロフォームポリマー(ポリスチレン)は消化管の共生細菌によって分子レベルにまで分解されているようだ

ディスカッション
プラスチック廃棄物の処理方法の1つの手段になるかもしれない。

とのこと
これはすごい。

やはり再現性が気になったのと、
30日間のその後の長期的なミールワームの健康が気になったので、
やってみました。

昨年10月から仕込んで、2パックほどの市販ミールワームを。
11月25日の写真がこちら。
 
食ってますね。底に水色の粉が溜まっているので
少なくとも粉末レベルで破砕しています。
そして4月

遅いですが食いっぷりは進んでいます。

味は。。。


あまり普通のものと代わりはない。プラスチック製品のような溶剤の香りもない。
もちろん無臭の成分でも体によくないものがあるのでおすすめはしません

追記です。
論文に記載されている分解については
ポリマー化しているα炭素とβ炭素についてラベリングしていますが
ベンゼンについてはまったくノータッチです。
C02として無機化しているということは、
好意的に見ればベンゼン環も分解されたと見えますが、

ベンゼン環はかなり安定した化合物で、分解菌も通常ほとんど分布していないこと、
変異原性があることから、分解の可能性は低いでしょう。
なので、せっかく安定していたポリスチレンからベンゼンを放出する「余計なことしい」
の可能性もあります。


続報を待ちましょう。というかベンゼンに標識した結果ってなんでないんだろう。。

なので試食はおすすめしません。今の段階では。



香ばしさが幼虫より強く、甲虫でも食感はとてもよい。揚げなくてもサクサクしている。



今のところ成虫までにはなったのですが、次世代が生まれていません。
完全栄養食とはなっていないのでしょうか。
引き続き観察します。

さて、
スタイロフォームの材料であるポリスチレンなどの
プラスチックはヒトの活動が近年生み出したもので、
自然界には本来分布していません。

こんな分子構造をしています。


紫外線でポリマーの分子結合が分解されながら
機械的な破砕とともに細かくなっていきます。

いったん表土などで被覆されたり
水に沈んだりすると
分解は相当に遅くなります。

機械的な破砕によって細かくなったプラスチック破片「マイクロビーズ」は
野生生物への悪影響があるのではないか、と懸念されています。
http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3725/3.html

今のところ野外での重大な影響は報告されていませんが、
実験室内での影響はあったとのことです。

そんな中で、
ペットの生き餌として使われる身近な生物、ミールワームと
プラスチックとのマッチングは
我々のプラスチック処理のシステムを大きく変えることになるかもしれません。

梱包材や衣服など、身の回りにあふれるプラスチック製品を
昆虫で転換して食べてしまう、という未来です。

はたしてこのマッチングは
「奇跡的」なものでしょうか。

そして
廃棄物処理の救世主になるのでしょうか
いまのところ結論を保留して
昆虫学のレベルからもうちょっと冷静に考えてみましょう。

中編に続きます。

2013年にゲジを味見してからもう3年にもなるんですね。


きっとオオゲジはおいしい、と思いながらのようやくの出会いです。


今回は他の昆虫を目当てで夜間採集に行ったのですが、
目的のものはとれず、でもオオゲジは二頭とれました。

ゲジは偽複眼、という単眼の集合体を一対もつことから
かわいらしいつぶらな目をしています。

長い多くの脚に隠れて見えませんが
竹林の隙間から見えるような可愛らしい顔。すばらしいですね。

味見のまとめでも気づいたのですが

「食べる前の見た目の印象」と

「食べておいしいとわかってからの見た目の印象」
は大きく変わってしまいます。

ゲジというとムカデの仲間で牙があって、動きが早くて足が多いし
すぐとれるから触るのが怖い。触って殺してしまうのも怖い、

という感じで、
どうにも猫の背みたいな「掴んでいい部分」が見当たらないんですね。
どう触っていいかわからない、というのはなんだかお近づきになりにくいです。

ところが、一度おいしいことが分かってしまうと、
そんなのは
大した問題ではなくなってしまいます。

食べて克服すること、というマウンティングによる自分の優位性が
確かめられたことで、
相手を過大評価しなくてすむようになるのかもしれません。

「苦手な虫を食べて克服」という昔の辞書の暗記のようなことが
将来起こるかもしれません。

そして、ゲジというネーミングも悪いと思います。
ゲジという濁音二音だけ、バカが考えたような短い名前。

食感も悪そうで、ジャリジャリしそうな名前ですよね。
オオゲジといういかにも大きすぎるような印象をあたえるのも良くありません。
私たちが食べる動物性食品のうち、オオゲジは小さい方です。

そこで、

コガタリクアノマロカリス

というかっこいい名前をつけました。

学名で奇妙なエビ、という意味を持つアノマロカリス、
彼らはただデカくて海にいるだけですから
イセエビと比べてもあんまり奇妙でもありません。

陸上で捕食者として走り回る彼らこそ、「奇妙なエビ」でしょう。

食欲をそそらない和名、というのもこれ以外にも改訂していいかもしれません。


ということで、味見をしてみましょう。
茹でるとあっという間に自切し、胴体だけになってしまいました。

足先はゼンマイのように丸まります。

色は不透明になり、青みがかりました。

味見
ゼンマイのように丸まった足先の食感はゲジよりだいぶ固い。
イモムシのようになった胴体はシコシコとした食感と芋のような甘い香りとやさしい甘み、
そしてエビに負けない強い旨味があって最高。あぁうまい

奇妙なエビ、コガタリクアノマロカリス、
特に苦手な方は、その克服にいかがでしょうか。
by ケミストリー



思いは思いのままで。と歌ったのはケミストリーですが

食材のにおいはにおいのままで楽しもう、というのが今回の趣旨です。

単に消そうとするだけでは

その臭みのない他の食材の下位互換でしかなくなってしまいます。

消すのではなくちょうどいい具合に弱めて他の食材と合わせる。

フードマッチングとかフードペアリングというイメージがいいですね。

何と合わせるか、もちろんわが家の大黒柱、ゴキブリです。



以前から、生ごみ処理機として

マダガスカルゴキブリを1kgほど飼育しています。

飼育容器の開発も第6世代に突入し

強制的な換気装置と、フン自動分離機構を備えたので

半年に一度ぐらいの大掃除をする以外はノーメンテ。



彼らの天敵はカビとハエです。

どちらも抗菌剤を出して高湿度に対応する生物です。

どちらもゴキブリの健康を著しく阻害するらしく、

死体にカビもしくはハエが増え、更にゴキブリが死ぬという

負の虐殺スパイラルになってしまいます。地獄絵図です。

ゴキブリの養殖経験の長い爬虫類愛好家の方は

生ごみなどの湿度リスクを考えて

乾燥した配合飼料と水のみを与えているそうです。


ともあれ、

マダゴキによらず

彼らのヒト住居への適応能力は高いものがあります。

よく誤解されがちなのが「ゴキブリは最強の生物」みたいなのです。

テラフォーマーズも影響しているかもしれませんが。

これは全くの誤解です。

「ヒトの好みのままに創りだした環境がたまたまゴキブリにも適していた」

のです。

決して他の昆虫よりとりたてて優れているわけではありません。



ではなぜ、

ゴキブリはヒトの住居に適応できたのでしょうか。

まずは
近年のヒト住居について、もう少し考えてみましょう。

まず野外の昆虫が入ってきません。

ゴキブリは特別な防御機構をもたないことから

野外では格好のエサとして消費されています。

オオゲジやアシダカグモなどの翅をもたない徘徊性の節足動物のエサです。

ですが今の密閉性の高い住居では人の出入りが唯一の侵入のチャンスですが

警戒心の強い大型の捕食者は、なかなか入ってきてくれません。

ヒトは無意識ですが、彼らにとって我々は決して勝てない捕食者なのです。



次に、優れた空調です。

ヒトに限らず、従属栄養生物はガス交換をしないと窒息してしまいます。

ですが、ふつう、ガス交換は同時に熱の移動も伴います。

なので、本来であればガス交換と、保温、保冷は
相反するものなのです。

風通しが良くて夏暑い、冬寒い家
風通しが悪くて夏涼しく、冬温かい家

というトレードオフではなく

夏涼しく、冬暖かく、かつ風通しが良い
という空間を少ない電力エネルギーで実現しています。

空調、つまり熱交換器の実用化によって、
ヒトの住居は圧倒的に住みやすくなりました。

そして断熱のよい構造体。鉄筋コンクリートですね。

ゴキブリは住居がビル化する前は、
家を通過するごくありふれた昆虫たちの一種でした。

ところが、気密性が高く、乾燥したビルに、
有機物を大量に置く、という

選択的ゴキブリ誘引トラップが設置されたことで

我々はゴキブリを誘引され、屋内で養殖して
そしてそれに人々が驚く、という

不幸なマッチポンプを生み出してしまったのです。


さて、
ゴキブリといえども、マダゴキはマダガスカル出身ですので、
日本人とマダガスカル人どころではなく、キツネザルぐらい遠縁のものを

ゴキブリという和名でくくって嫌がってしまうのも、なんだかかわいそうなものです。

なんとか印象を挽回する方法はないものか。
やはり、

彼らをおいしく食べる事を考えましょう。

今回使うのは、美しい脱皮直後のメス成虫です。

白い。美しい。


昆虫は、陸上での外皮の硬化に色の出る化学反応を使っているので、
残念ながら茶色っぽく、黒っぽくなってしまいます。

しかし脱皮直後は別です。色素の少ない、透明感のある美しい姿は
食感もよく、食べごたえもあり、最高の時期だと思うのです。

しかし、
ゴキブリにはゴキブリらしい臭さがあります。

ケミカルというか、ムレ臭というか、ゴキブリ臭とも呼べますが。

集合フェロモンだそうで、ゴキブリのフンからも同様のニオイがします。

以前にチョコを食べさせた時、そのニオイが低減したことから、
何らかの食事制限によって多少変動はさせられそうです。

今回目指すのは
「ゴキブリ臭い、けれどもゴキブリクサおいしい」という未来の料理です。

そして、以前の粉末バッタが粉末としての利点を活かしたことをふまえて
体のままであることを活かした料理とします。

「注入」です。

羊の腸の皮に他の畜肉を詰め込むという黒魔術のような料理、

ソーセージと言われるものは今では世界中に普及しています。

単なるひき肉つくねでは得られない、パシッとした食感が

その悪印象を払拭してくれる「おいしさ」なのでしょう。

そして、脱皮直後のゴキブリは柔らかく、中身が結構スカスカです。

脱皮時にしか外皮の表面積は増えませんので、

外骨格生物は脱皮すると先に外の大きさを決めてしまい、

後から中が充実してきます。

そのため、最も身が張っているのは脱皮直前なのです。


余談ですが、外皮が比較的柔らかいセミ幼虫は

肉がしっかり詰まっていて圧力の高い脱皮直前のものが一番おいしく、

脱皮直後のものは美しいですが、

濡らしたティッシュのようにやや味気なくなってしまいます。


話を戻します。

今回注入する液体は
「既存の料理に使う調味料」の組み合わせで作ります。

ムレ臭のような香りはニンニク、
フルーツのような華やかな香りはワインビネガー

注入する都合からニンニクのワインビネガー漬けを作りまして

苦味要因としてチーズ(材料にセルロースを含まないもの。含んでいると注射器が詰まります)

そして結着剤として卵を入れ、「ゴキブリ臭く」仕上げます。

ダイソーで売っている化粧品小分け用の注射器を使い

脱皮直後の余裕のある外皮に対して、尻から体側面にたっぷり注入します。


深海のヨコエビのような感じになりました。

これをバターと胡椒で低温じっくりと焼き上げ




トマトとアイスプラントで仕上げ。

 

おいしい。。確かにゴキブリ臭いけどだがそれがよい

プリっとふくらんだ腹部はパンと張り
チーズとニンニクの旨味がじわっと。
フレッシュトマトのジューシー感とアイスプラントのさくっとした食感と酸味。

いずれもすばらしい!おいしい!

マダゴキの新たな可能性を感じました。

同時に「言語化=情報化」と「見立て=抽象化」のパワフルさも。

ゴキブリの味の特徴を言語化し、他の食材で見立て、

相性をマッチングして作っていく、創作料理のエキサイティングな過程を体験できました。

プラモデルで言うところのキット改造からフルスクラッチへ。

昆虫料理を既存の料理のアレンジではなく、フルで創作する段階に来たのかもしれません。
さて、

私は今日まで419パターン272種の昆虫、
及び陸上節足動物を味見して、記録してきました。

これは
食べた数を競って他の昆虫食愛好家へマウンティングをするためではなく

(同定すらできないのに幼少期より生で数千種を食べたと豪語する、
発言する度にその期間や数がなぜか過去に遡って増えていく方もいて
昆虫食界隈はなんともアレです。)

私の味見は
昆虫を食べたことのない人が、食のバイアスにとらわれず
自分とマッチする昆虫を見つけるまでの適したモノサシを開発すること
が目的です。

また、
昆虫食をやって味見をしているというと
ランキングをよく聞きたい、と言われるので、
きちんと数値化したいという願望もありました。





官能評価については、私が専門でないので、こちらの記事を参考にしました。(pdf)
官能検査 4 官能評価に用いられる統計手法

(官能といいますが官能小説との関連性はたぶんありません。)


味見、つまり官能評価は2つの方向性を持ちます。

A,ヒトをモノサシとして昆虫の味がどうなっているのか調べる

B,昆虫をモノサシとしてヒトの味覚がどうなっているのか調べる

今やっていることはあくまでプレ調査なのでまだまだ統計解析というか「集計」レベルです。
ABどちらの方向から考察するにも十分とはいえませんので、
まだまだ「皮算用」レベルです。

しかし、
予備実験としてみても、いろいろな改良点や将来性が見えてきました。




まずはAの方向から

私の味覚が正しいと仮定して、昆虫の味がどうなっているか見てみましょう。
ランキングなので、100点満点にしたいものです。

スコアリングは

4段階の基礎ポイントを割り振りました

1 わるい 3点
2 どちらかといえばわるい 8点
3 どちらかといえばよい 13点
4 とてもよい 18点

続いて、
加点減点ポイントがあればプラスマイナス2を適宜追加して、
各項目20点満点で評価します。

項目の選択も苦労しました。

やはり「みため」の影響は大きそうなので、一項目入れています。

また、昆虫生態学が将来の昆虫の食利用のベースになるでしょうから
生態を踏まえた将来の利用可能性「のびしろ」も一項目入れました。

昆虫を食べた評価を表す指標としてかおり、のどごし、あじわいの3つを使いました。

先味、後味や、5基本味の詳しい比較については、
私のたった一人の解像度では心もとないので先に紹介した味覚センサーに任せることにします。

それらを重み付けをせずに、そのまま合算する、
というとても荒々しい方法ですが、419パターンについて全て、スコアを出してみました。

例えば、
ホオズキカメムシのスコアを見てみましょう

みため  3 -1 12点
かおり  4 +1 19点
のどごし 3 +2 15点
あじわい 3 +2 15点
のびしろ 4 +2 20点


見た目は普通のカメムシですが黒っぽく、ゴツゴツしているので減点1
香りはヘリカメムシ科特有の青りんごの香りで加点1
のどごしは口吻タイプの昆虫らしく華奢で口に残らずなめらか、しかし特長も少ない 3加点2
そして味わいは穏やかなカメムシらしい柔らかい味に、食草であるピーマンの刺激がピリッとあって加点2

将来性は既存のピーマンなどで養殖できる点、食草由来のピリ辛と、
昆虫特有のいい香りの組み合わせが楽しく、他の昆虫にない特長なので、満点の評価とします。




次にランキングの根拠となる
トータルスコアを概観してみましょう。

手に入りやすい昆虫は何度も、いくつものステージを食べているので
種ごとで平均値をとって集計しました。

平均値が66
区間が23から95

ハイスコアの方向にやや歪んだ山型の分布をしています。
まあまあ悪くないバラ付きかと。

昆虫を全くのランダムに、そして私が全く正確に
昆虫の味を記載すると正規分布のような左右対称の山型のスコアになりそうなものですが
この歪みはなぜでしょうか。

各項目(みため、かおり、のどごし、あじわい、のびしろ)の相関分析をしてみたところ
のびしろとみため、においてのみ、有意な相関が見られなかったものの

他の項目で相互に有意な正の相関がみられました。

スコアを出すにあたって合算する項目同士は本来、それぞれが独立であることが望ましいのですが、
影響しあっているようです。


改良して、より正しくなる
スコアリングの方法を考える必要が有ると思われます。
考えてみましょう。




先のAの方向から見ると、
つまり私の味覚は各項目を独立に評価していて正しいと仮定すると

「昆虫はあじわいのいいものほど香り、のどごし、将来性がある」
という相関がある、ということが出来そうです。

逆にBの方向からみてみましょう、
「昆虫の本来の味スコアはそれぞれ独立だが、私の評価が相互にプラスの影響を受けてしまっている」

ホオズキカメムシでも、将来性の見積もりに味や香を要因にしていますから、
この影響はあるでしょう。


そのため、
Bの可能性、予断による私の味バイアスを排除したいところです。
多くの人に、中身や見た目を隠した状態で食べてもらう
ブラインドテストがあるとよりよいのでしょう。

しかし
「何かわからない食べてもらう」というのは
なかなかハイレベルな協力者が必要です。

「あの、すみません。目隠しして茹でた昆虫の一種をたべてもらいたいのですが」

とはなかなかお願いできないものです。

ブラインドテストと同様の結果をシミュレートする、という意味で、
味わいについては以前に紹介した味覚センサーも
予断のない昆虫の味スクリーニングを強力にサポートしてくれる
ことでしょう。

のどごし、香りまで含めて質の良いブラインドテストをするためには
「中身がわからない昆虫を食べて評価してくれるヒト」が多く必要であることがわかります。



私が研究や理論をベースにはしていますが、
昆虫愛好家の広がりを大事にするのもこのためです。

質の良い官能評価をしてくれる市民昆虫食愛好家に
研究者は情報や美味しさの尺度を提供し、奉仕することで、
彼らの協力をいただきたいのです。

また、
「昆虫食は健康によい」と、声高にアピールすることもしたいのですが
今は健康に関する統計的調査のレベルが向上したことと
健康をうたう変な商品が蔓延して消費者被害を出し続けていることから
そこらへんのハードルは高くなっています。

今年の4月から
景品表示法違反による課徴金が追加されることから、事業者側のリスクを高くするほうが望ましい、という
社会の流れがあります

健康効果について
参考になるのがコーヒーです。



カフェインなどの毒成分を含みながら、大規模な疫学的調査により
「メカニズムはわからないが、コーヒーを適度に飲む人は総合的に健康な傾向がある」
(コーヒーがヒトを健康にする、とまでは言えないのですが、コーヒーを飲むことで死亡リスクなどの重篤な健康を害するメカニズムは今のところなさそう、あっても小さいだろう、とまではいえます。)

との報告がありました。
単一の嗜好品で、文化や経済状況にあまり関係なく広く飲用されており
悪影響もふくめてその効果がここまで明らかにされたのは
コーヒーが最先端ではないでしょうか。

昆虫食に関しても、健康に関する大規模な疫学的調査をするためにも
「昆虫食が健康にいいかどうか関係なく昆虫を食べるヒト」が
恐らく世界に、バラバラに10万人ほどいれば、総合的な昆虫食の評価ができるでしょう。

それまで
「自発的に昆虫を食べるヒト」をマイノリティといえるレベルまで増やすことが
第一のフェーズです。

そして、
第二に、「食べているヒトがいるから食べるヒト」という
自発性の低い集団に安全な昆虫食材を提供できれば、昆虫食ブームが起こった後、定着へと向かうでしょう。

その時に、
第一のフェーズで食べ始めた、ファーストペンギンな愛好家は、
愛好家同士の狭いマウンティング合戦ではなく、
ライト層の定着に向けての活動を始めてもらいたいと思っています。

そのフェーズの切り替えにあたって第一フェーズの愛好家同士で
「昆虫食は今どのフェーズにあるのか」という議論ができれば、完璧です。

自発的な集団が、周囲の集団に利益をもたらしていることを
社会集団全体から信頼されるようになると、

ゆくゆくは社会の壁を突破し
「昆虫を食べるヒトがいるのも当たり前の社会」になるでしょう。




さて

ランキングをよく聞かれる、と最初に言いながら、
話が蛇行してしまいました。

せっかくスコアリングしたのですから

皆様お待ちかねのランキング

…といいたいところですが

ブログとはまた別のメディアで、ランキングについては
読んでいただこうかと考えています。

もう少しで皆様にお知らせできるかと思いますが

お待ち下さい
Mushi_Kurotowa
カレンダー
07 2017/08 09
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
ブログ内検索
最新コメント
[08/23 ブランド激安市場IWC]
[08/22 ブランドコピー]
[08/22 ダミエ 偽者]
[08/21 激安コピーブランド]
[08/21 偽物 サングラス]
最新トラックバック
プロフィール
HN:
Mushikurotowa 
性別:
男性
趣味:
昆虫料理開発
自己紹介:
人生迷走中 顔はクロトワ似「なぜ昆虫に食欲が湧かないのか」をテーマに研究開始。食べたら美味くて研究頓挫「昆虫を美味しく食べる調理法とは」に変更/食用昆虫科学研究会 Edible insect science meeting 昆虫料理研究会 趣味自転車;鯨食文化研究;法螺貝;トランペット;リコーダー;鯨歯彫刻
http://e-ism.jimdo.com
バーコード
P R
カウンター
コガネモチ
忍者ブログ [PR]

material by: