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大寒も過ぎ、
今は一年のうちで最も寒く、虫が少ない時期。
昆虫料理も基本的に保存したものか、
越冬昆虫を取りに行くぐらいです。

以前にコクワガタと ユミアシゴミムシダマシを味見しましたが

越冬昆虫を探しているうちにこいつらも。

オオスズメバチ女王

クロスズメバチ女王


カワイイですね。

越冬中なので、動きが鈍く
そっと触るぐらいでは大丈夫です。

女王は「巣の長」ですから、
自分の身を守ることが大事ですので
攻撃性は低いとのこと。

一方で、春から秋に見られる
に繁殖した巣の働き蜂は
攻撃性が高く、自身の死も厭わず威嚇し、
襲ってきます。
働き蜂は生殖能力が無いので、巣に残る
女王や幼虫を守らないと、次世代に自分の遺伝子が残りませんので
「攻撃」「労働」のみが子孫繁栄のための行動といえるでしょう。

そのため、
ヒトから働き蜂をみると常軌を逸した攻撃性に見えるのですが
女王と対峙すると、彼らの「ニュートラル」な自己防衛の状態を
垣間見ることができます。

さて、
クロスズメバチは
乱獲により絶滅の危機に貧しており
オオスズメバチも決して増えているとはいえません
(ニュースで取り上げられることは増えたが事故件数も
数も増えているとはいえない、と某ハチ駆除の方、談)

女王は巨大な巣のいわば「要石」になる存在ですので、
食べると生態系へのダメージは巣一個分と言ってもいいでしょう。

ハチ駆除としては
ヒトの生活圏と競合した場合は退いてもらって、
食べさせてもらっているのですが、
今の段階で食べるのは気が引けます。

成虫は概して硬いので
ハチノコよりも美味しい気もしませんし。

ということでそっと戻します。
でも食べたくなってしまったの事実。
こんな時は、
採集に半養殖されている市販品を食べましょう。


松浦誠 著「スズメバチを食べる」によると


「飼い巣」
と呼ばれる愛好家の団体が始めたとのことで、

春先から夏にかけての小さい巣を、
女王と働き蜂ごと弱らせないよう持ち帰り、

自家製の「巣箱」に入れて、マグロの頭やニワトリのキモなど、
動物質のエサを補助してやることで3〜4キロの巨大な巣を得る、とのことです。

また、「昆虫食文化事典」によると


温室内で交尾させ、交尾済みの新女王を得る技術も開発されました。(西尾1999)

今、達成されていない技術的課題は
「越冬後の女王のエサと管理」
だそうです。

越冬後、女王は樹液などの天然物を食べて、
初期の営巣のための
エネルギーを賄いますが

越冬の場所や条件、そして目覚めた後のエサの
供給が難しく、
完全養殖(養殖して得られた個体から次世代を養殖できること)には、
この段階の達成が必要だそうです。

越冬場所から移動させると、うまくいかないことから、
どうやら越冬時にも、
環境に合わせて女王が何らかの応答をしており
越冬といえども、「寝ている」わけではなく
環境に応じた変化をすることで
厳しく乱高下する冬を耐えているのだと思われます。
挑戦したいところです。

さて
このような知識を入れることで「食欲を抑え」
虫食い仲間のムシモアゼルギリコさんから写真提供のお礼に、と頂いた
市販品のクロスズメバチの佃煮を頂きましょう。


(虫食い仲間の間では報酬のやりとりは必ず虫の物々交換で行い、そのレートは株価のように変動しています)
ウソです。


ちなみにムシモアゼルギリコさんの手がけた
「一般向け」とは名ばかりの濃い内容の本
「むしくいノート」は



世界昆虫食大全、昆虫食文化事典という
三橋淳博士の 日本昆虫食界におけるバイブルを
ぎゅっと濃縮し、

「昆虫に詳しくないヒトでも手軽に食べられる」
実践的な内容をたっぷり詰め込んだ本です。

表紙もポップなので、書店の料理コーナーに平置きされることも。
私も校正や写真提供に参加させていただきました。


話を戻しましょう。

女王1頭を諦め、
市販の蜂の子に切り替える、
という我慢の方法を学びました。

せっかくですので昆虫料理を開発したいところです。
他の
「食べてもOK」な越冬昆虫食材は無いのでしょうか。

次回に続きます。
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甲虫類(鞘翅目)は、35万種とも言われ、昆虫中、
いや「動物中」最大の目
として記載されているため、

昆虫食を追求するには避けては通れないのですが
「あまりに巨大」な分類群のために、
なかなか攻められないでいました。

食べてはいけない!猛毒の マメハンミョウツチハンミョウ アオバアリガタハネカクシ
とってもおいしく香りもよい カミキリムシ
味が極めて悪いカブトムシ
幼虫は食べられるが成虫は食べられない ツヤケシオオゴミムシダマシ

などなど。

分類によって
食べられるもの、
食べられないものの多様性が大きく
「種」をきちんと同定しないと危険なため、
気をつけていきたい分類群です。

今回はその中でも
分類が難しい「オサムシ亜目」に目をつけました。
世界に25000種いると言われているそうです。

というのも今年の夏、
先輩が「エゾカタビロオサムシはサフランの香りがする」
と教えてくれたのです。

むむむ これは…



エゾカタビロオサムシ Campalita chinense
日本に分布するオサムシの中でも大型で
その名の通り肩が広く、
オサムシにしては珍しい「飛べる」オサムシとして有名です。

他の同定が難しいオサムシは
オスの交尾器の一部「ゲニタリア」を取り出し、(通称ゲニ抜き)
その立体構造から同定するとのこと。
ううむ…恐ろしい世界だ…

私はオサムシ初心者ですので
そこらに手を出す前に、外形からわかりやすい
ものから攻めてみましょう。

もしイケたら、他のも…

というか
オサムシ科のハンミョウが美味しくなかったので
じつはあまり期待していません。よく見るオサムシは臭いし。

明らかに刺激臭なので、まず
サフランの香りをウォッカに移してみます。
(2013年8月29日)

そして半年後、
よく浸かったエゾカタビロオサムシウォッカ。


黄色みがかって
甘い香りがしますが、サフランとはちょっと異なった香り。
もしかしたら酸化したのかもしれません。

飲む前に、
「毒がないのか」文献調査です。

1979年出版「昆虫の生理と化学」



兼久勝夫 博士の章では、
ゴミムシ類(オサムシ含む)の忌避物質を、
ガスクロマトグラフィーという揮発性成分の測定装置で分離・同定し
その物質名と、解剖した時の分泌腺の形態的特徴を比較しています。

この中で、
「エゾカタビロオサムシ」は、
他のオサムシからは検出されない
「サリチルアルデヒド」を60%も含んでいることを示しています。

その他は他のオサムシにも含まれるメタクリル酸 35% チグリン酸 4.9% とのこと。

この物質は香料として、バター、カラメル。
シナモンナッツなどのフレーバーに使用されるとのこと。
それでいい匂いがしたんですね。


ちなみに、

「サフランの匂い」のサフラナールはこんな形。

同じくアルデヒドで、サフラナールはベンゼン環が開いたような形。
よく似ています。ヒトの鼻というのもなかなか侮れないですね。


引き続き検索していると
エゾカタビロオサムシのサリチルアルデヒドを鱗翅目害虫の忌避剤に
という2006年の特許に当たりました。

エゾカタビロオサムシは畑における鱗翅目害虫の天敵なので、
害虫の成虫に、エゾカタビロオサムシの匂いをかがせると、産卵しに来ない
という特許です。

害虫のうち、
特に作物の保存性や食味を著しく低下させるものに
特異的な忌避物質、
ということでエゾカタビロオサムシの匂い物質の一つ、サリチルアルデヒドが
使われるそうです。。

ここでは
「酸化しないよう微量噴霧する」との特許事項が。
やはりアルデヒド。酸化しやすいのでしょう。

すると、
このウォッカの中で何が起こっているのでしょうか。
アルデヒドですので、長期間放置しても酸化します。
考えられるのは


サリチル酸。

いわゆる頭痛薬。アスピリン(アセチルサリチル酸)の前駆体です。

鎮痛作用はアスピリンと同様に強いのですが、
酸が強く、胃に穴が空くことも。これは恐ろしいですね。

少量では…大丈夫だとおもいますが

3頭のエゾカタビロオサムシを375mlのウォッカに分散させました。
オサムシの1頭の体積を2mlとしましょうか。
6mlのオサムシをおよそ62倍に希釈したことになります。
中に含まれている防御物質は、
1頭をそのまま食べた時の62倍の薄さになっています。

まとめてみましょう。

エゾカタビロオサムシに特異的に含まれる
ニオイ成分はサリチルアルデヒド
半年漬け込んだので一部は酸化してサリチル酸に。
他に含まれるのは
メタクリル酸 チグリン酸

なんだか酸っぱそうです。 笑

いずれも
香料として使われていることから、
不快でない匂いの範囲であれば問題ないと判断。

ちょっと飲んでみます。
(責任持てないので真似しないでください。)


香り:ウォッカのアルコール臭にまじって甘ったるいにおい。
スズメバチの焼酎漬けにも似た、やや標本臭もある。酸味系の匂いはしない。

味:なまぐさい。いわゆるオサムシ臭。
酸味はなくただ不快。ほわっといい香りがする分イラッとする。
口に入れないと生臭さがこないので不意打ち。くやしい。

エゾカタビロオサムシのサフラン臭はあるのですが
その他メタクリル酸、チグリン酸のオサムシ共通成分が
邪魔をしてきます。

これは難しい。残念です。

彼らの戦略はなかなか巧妙です。
マメハンミョウやツチハンミョウが
血液中に毒物質カンタリジンをもち、
敵に襲われると「出血」するのに対し

オサムシ達は防御物質専用の分泌腺を持っています。
そのため、体内に毒物質を循環させること無く、
そして分泌寸前まで比較的毒性の低い物質で保管し
分泌時に混ぜあわせて危険物質をつくることで
オサムシ自身への中毒の危険を防ぎ

「致死量」に特化せず、
突然不快な匂いを敵に浴びせることで
最大限の防御効果をもたらすのです。

イメージでいうとコレですね。
「ヒトを感知して芳香剤を噴霧する」


おそらく毎日撒くよりエコです。

逆に言うと、鱗翅目成虫の飛来を
感知してサリチルアルデヒドを噴霧するセンサーを作れば
かなり低コストで病害虫を防止できる、と考えられます。

畑は広大で、
そしてサリチルアルデヒドは酸化しやすいので、
噴霧装置自体が移動すると、なおよいでしょう。

そこで思い出すのは、
身長15cm、3万円ほど(という設定)の
殺虫用ロボット
「一撃殺虫ホイホイさん」



マンガの世界では、
殺虫剤耐性をもつGが拡大した、
という設定のようですが、

現状の費用対効果を考えると
農業用「一撃防虫エゾカタビロオサムシさん」の


商品化がより近い未来かもしれません。

エゾカタビロオサムシに擬態し
サリチルアルデヒドを噴霧することで
好奇心旺盛なカラスやネコの襲撃にも
備えることができます。

空も飛べ、丸っこいフォルムが愛らしく
そしてちょっと生臭いのがチャームポイントの
「一撃防虫エゾカタビロオサムシさん」
 


商品化、いかがでしょうか。
特に農工大の特許をお持ちの方。ぜひ!





















昨年のこと。
「話者として登壇して欲しい」と「虫cafe!」というイベントにお誘いいただきました。
渋谷のどまんなかのアイリッシュパブで、
虫のイベントがあるとのこと。

当時
昆虫食のため、
「昆虫学」をきちんと勉強し直していた折
とうとう
「虫屋」と呼ばれる世界に足を踏み入れたのです。

「商用に昆虫を扱うヒト」という単語ではありません。
ニュアンスとしては「茶人」に近いです。これもお茶の販売業者を指す言葉ではありません。


茶人(デジタル大辞泉)
ちゃ‐じん 【茶人】
1 茶の湯を好む人。茶道に通じた人。茶道の宗匠。
2 普通の人と違った好みのある人。物好き。風流人。


2ですね。圧倒的に2の意味で使います。
「虫屋」とは、虫好きのあまり、
人生の一部を献上してしまったひとのことを指します。
この時、プロかアマチュアかはあまり重要ではありません。

そこで、
昆虫食について、
そしてこれからの昆虫食には「昆虫学」が必要であることを力説してきました。

そんな中、TVチャンピオン 昆虫王の長畑さんのプレゼンのツカミのネタ。

「シラホシハナムグリとシロテンハナムグリの違いがわからない方はいないですよね 笑」
一同盛り上がる中、
分からなかった私は恥ずかしながら、決意したのです。

シラホシハナムグリとシロテンハナムグリの違いを味見を!


それから半年、
シロテンハナムグリを食べ
更に半年、
シラホシハナムグリProtaetia brevitarsis brevitarsisを手に入れることになったのです。

顔の先は丸く

大きな細長い「しらほし」が背中に見えます。

カブトムシの幼虫を他の実験に使う目的で採集していたところ
混獲されたコガネムシ科の幼虫を
室内で放置していたらいつの間にか蛹室を作って羽化していました。

脱皮後、
どうせシロテンハナムグリだと思い、どうしようか迷っていた所、
なんだかやけに手足が短く、ずんぐりしている。

これは!と思い


調べた所、シラホシハナムグリだとわかったのです。


この見た目ではほとんどわからない両者。
味でわかったら、、、味覚分類学の夜明けでしょうか。


半年前、というハンデを克服し、
いざ味覚による同定へ向け味見をしてまいりましょう。


味見
土の香があるがカブトムシのような強烈な臭さは全くなく、芋のように風味として楽しめレベル。けっこう美味しい。足が短いためか、そのまま食べても引っかからず食べやすい。やや翅が硬い。


シロテンハナムグリは


典型的なコガネムシ味。すこし外皮が薄く硬い感じ。土臭さはまったくなく、香ばしい。
マメコガネとよく似て、土臭さがなく香ばしい味ですが、若干固いですね。



と評していたので
残念ながら差はみられそうにありません。
道のりはまだまだ遠いようです。

ただ、季節が全く違うので、
ステージを揃えて来年、二種同時に食べ比べて
再挑戦したいと思います。


さて、
その虫cafe!。
今年も参加します。開催発表後、数時間で一杯になるという恐るべき集客率。
さすが虫屋、「旬に敏感」なのでしょう。

今年のテーマは「集え、虫人よ。」

今年もような「虫人むしびと」と集合できることを楽しみにしております。



虫人(デジタル大◯泉)
ちゅう‐じん むしびと 【虫人】
1 虫を好む人。虫道に通じた人。虫道の師匠。
2 普通の人と違った好みのある人。虫好き。風流人。


こんな項目が追加される日も近いでしょう。

「虫道=むしどう」早口でいうと武士道のようでカッコ良いです。
虫人も、
沖縄言葉のように「むしんちゅ」って読んでもかわいいですね。

ちなみに
虫人(見習)が楽しんだお茶の話はこちらにも。


「クリエイティブな仕事がしたい」ってさ
ずっと思ってきたし、これからもそうするつもり。
生活苦しいけど。

笑っちゃうけどさ、
はじめは学者とか目指したんだぜ?
論文とかぜーんぜん書けなくてあきらめたけどさ。
学者くずれなんて、今どきマトモなトコ雇ってくんないじゃん?

だからさ、
食うためだったら何でも引き受けたし、
とりあえず注目されたいから
カネもないのに最新のガジェットとかいちいち買ってレビューしてさ。
多少は修理できるようになったからまぁ良いけど。

ライターでもなんでもやったな
前に脚本の仕事も来てさ、
人形劇の。割に合わないし、本番とか全然客来ないの。
あれはしんどかったね。

一応さ、
コピーライターって名乗んのは
今までで一番ラクな仕事だったから。
たった数文字だけで食えたら理想だよね。
ひらめきは昔から誰にも負けなかったし。
そんなオイシイ仕事なんてほっとんど来ないけど。
不景気だし。

ぶっちゃけ俺、ゲイだからさ
どうせ結婚もできないし。今が一番大事なんだよ。
家業は妹につがせたし俺は用なし。
ここでやっと自由を勝ち取ったんだ。な?

あぁそうだ前さ、
めっちゃ好みの男と会っちゃって。お茶したの。
恰好もめっちゃ個性的でさ、俺好みの。
機能美あふれるっていうか?
なんかしかも短髪でガッチリしてて。ドストライク。

向こうもびびっと来たいみたいでさ、
目があった瞬間お互い固まっちゃったよ。
いやぁ運命的だと思ったね。
ついつい声かけちゃった。俺カレシいんのに。

んでさ、
立ち話もなんだからって早速お茶したんだけど
彼、何も言ってくんないんだ。黙っちゃって。
えらいカタブツ?なんか悩み事があるっていうか。

いまひとつもりあがんないし上の空っていうか。
そしたら深刻な顔して 「お願いがあるんだけど」ってさ。
ヤバいじゃん。宗教かカネって思うよねフツー。

「俺 借金あるからカネ以外なら」って
チャラけたらなんかそいつ「知ってる」て。全然笑わないの。
なんか気持ちわりいじゃん。ストーカー?なにそれって。

そしたらなんて言ったと思う?

「コピーライター辞めて欲しい」だってさ。
ワケ分かんないだろ?

さっきも言ったけどさ、
コピーライターあんま仕事ないけど、
ワリがいいのよ。ラクだし。

んで「タダではやめるわけにはいかない」って
もったいぶってみたの。
ちょっと下心もあったんだけどさ、
そしたら 
体で払う〜とはさすがに言ってくれなかったんだけど

「タダで、とは言わない」ってそいつ。
カネでもくれんのかと思ったら

すげえの、例のあのガジェットくれたの。
日本未発売だよ?すごくない?

ケースとか削り出しで高級感バリバリだし。
前のより相当バッテリー長持ちするらしいし。
あ、アンテナもよくなったって。

んでさ、仕方ねぇから。
そいつと約束したの。欲しいし。
「あぁわかったよ。もうコピーライターはやらない」ってさ

もう
とにかく使ってみたくて。
今レビューしたらめっちゃ人気アガんじゃん?

でもさ
持ち帰って線つないだらなんかぜんぜん動かないの。
充電できてないって感じ?
どこ触っても何も出てこないし。
まだ
中開けてないけど 騙されたのかな。
ちょっとキズあったから中古かも。

ウソつくような男には見えなかったんだけどな。
どうせパーツが出回ったら直すけどさ、
なんか今日
お前にも見せびらかしたかったじゃん。

え?理由?
よくわからねぇよ。
なんか?「ウナギが食べられなくなる」?ってさ、
こんなに店、すいてるのに。

大将!こんな空いててお店大丈夫!?
どうせウナギなんて夏売れないっしょ。
何なら俺 看板書いてやろっか!?

うーんと……

いやいいんだよ。
看板だからキャッチコピーじゃないし。

うーん
「本日…土用丑の日」ってのはどうだい?
売れそうな気がするだろ?

並2つでいいや。
こいつと二人前。

な、
ゼニもらってないし、
これならコピーライターじゃないだろ。





http://ja.wikipedia.org/wiki/平賀源内

元ネタ頂きました。
お待たせしました。
捌きます。

今回は卵用に長期間飼育されたもので、個人での飼育ですので、
サルモネラ菌を始めとする感染症について全く検査されていません。

サルモネラ菌は、食中毒を起こす代表的な細菌で
家畜やペット、特に両生類や爬虫類に保菌が多いようで
近縁の鳥類にも保菌者がいます。

ニワトリに関してはフンに含まれるほか、
生殖腺に感染することによる卵内部への侵入感染があるそうです。

そのため、卵の生食を行う文化圏は少なく、
日本の「卵かけごはん」は危険食品として
海外のニュスースサイトで話題になりました。

その対策として
卵の徹底洗浄や、ワクチンの投与が
行われているそうですが、

耐性菌の出現やコストの増加など、「本当に必要なのか」
きちんと判断する必要が有ると思います。

今回は安全性を優先させ
「圧力鍋でスープカレー」
を料理に選びました。

100度以上、高圧による殺菌は
細菌を利用した分子生物学実験においても
「滅菌操作」として利用されていますので
細菌感染はほぼ防げると思います。


さて。
ここからは
「屠殺者の主観」を重視しますので
再現性はないですし、客観性もありません。
ただ。個人の感覚ですので、
同様のことが起こりうる、として
読み進めてください。


飼い始め 1月9日
ニワトリを頂いた。メスのため
大変におとなしく、捕まえようとすると逃げるが、
掴んでダンボールに入れ、暗くすると落ち着いて動かなくなる。
大変扱いやすい。寒い中つかむと温かい。

トノサマバッタをやると活発になり、
頭を確実に突いて丸呑みする。とてもほほえましい。
家畜飼育者のアドバイスの通り、名前は付けない。

一日目、卵を産んでいた。これも後で頂く。
市販品に比べてフンにまみれていて汚らしい。
総排泄孔から出てくるのだから当然だが。


二日目
小型の出刃包丁を買う。
頸動脈を切るので切れ味がよいほうがよいだろう。
ニワトリの頸動脈を確認してみる。
捌き方をネットで確認する
夜に見に行く。
体を丸めて寝ており、ダンボールに入れてやる

土日
忙しくて割りと放置
朝にバッタとサトウキビをやる。
バッタを差し出すと間違えて突かれるが
攻撃として突くことはなさそう。あまり痛くない。

月曜午後
バッタの世話を終えた後、祝日だということで
日のあるうちに決行。先輩に補助と撮影をお願いする。
脚をガムテープで縛り、吊るす場所を近くの雑木林に決め、
決行


屠殺
羽根を押さえ、首元に出刃包丁を刺し、しっかりと骨に達するまで刃を滑らせる。
やはり暴れる。
一人では無理そうだったので補助は有りがたかった。
頸動脈が切れると黒みがかった血が たーっと出てくる。
勢いは1Lペットボトルのめんつゆを注ぐぐらい。

気管も傷ついているらしく、
口から泡を伴って血が出ており咳き込んだようになっている。

一分ほどで不規則に痙攣するようになる。
中枢が酸素不足により麻痺してくるので、
筋肉が不随意的に動くと思われる。

念のため3分間は押さえておく
静かになったら吊るして血抜きの続きを行う。
30分ほど放置する。
結果として目算で150mlほどの血が抜けた。

写真
先輩に撮影をお願いしたにもかかわらず
ニワトリの「状態の悪い」写真
(血が滴っていたり目が半開きだったり)
を撮影されることに対して不快感が湧いてきた。

屠殺者は
ニワトリに対して少なからず感情移入してしまうようで
屠殺によって直後は強めのストレス状態になっていると思われる。

この時、
屠殺の事実を明らかにする行為=撮影に対する後ろめたさと
殺されたニワトリへ残酷な行為があったと誤解されかねない被写体の状況
そしてニワトリを弔うにあたって写真がそぐわない、
というヒトの葬儀に似た感情が湧いてきた。
「親族の墓を暴かれる」ような羞恥心と違和感。


これらの感情について
ちょっと考察してみましょう。
「写真」は、
「被写体」「撮影者」「閲覧者」の最低3名。
被写体が複数の場合は被写体間の関係が想定されます。

「閲覧者」は、基本的に被写体に感情移入します。
そのため撮影者の意図は無視され、被写体の強烈な感情と
閲覧者とが直接対峙したように感じます。

写真メディアの強いところは「撮影者の存在感の薄さ」です。
被写体となった私は、強烈に閲覧者を意識します。
気分的には「突然公衆の面前」に立たされているのです。

どう思われるか、誤解されないか、
批判されないか、様々な感情が沸き起こります。
公衆の面前に堂々と立つには、「一般化」という作業が必要でしょう。

その社会に
一般的に受け入れられている行為に見えるようにする、
受け入れられない場合は、
その違和感を利用したメッセージ性があると主張する
でしょうか。

なので
「撮影される」と「自己を一般化(正当化)」しようとする感情が湧き、
私の脳内で再生される
公衆イメージに合うように撮って欲しい、と
思うようなのです。

撮影技術や機材に一定以上の水準があると安心感があるのはこのためではないかと思います。
「取材に一眼レフ」というのは被写体との信頼関係の上で重要なのではないでしょうか。

「ケータイで写メ」の不快感はこの逆だと思います。
撮影技術も機材も撮影者もなんのポリシーもない写真で
勝手なイメージを作られることに不快感を覚えるのです。

これは昆虫料理の時にはほとんど沸き起こらない感情で、
大変興味深い体験でした。

そして、この
「一般化」できていない屠殺中の写真情報を
そのままこのブログで公開するのは相応しくない、

と今のところ判断しています。
少なくとも
「アクセス数を稼ぐため」だけであれば、
ニワトリの死体の写真を利用するのは「悪趣味」に分類されるでしょう。


残念なことに、そしてありがたいことに、
現在は屠殺の現場は日常から離れています。

もしかすると今食べている肉は、
地球の反対側で知らない誰かが屠殺した可能性も大いにあります。
ブラジル産もも肉なんかよく流通していますね。

もし、日本において、ニワトリを生きたまま各家庭で買うことが主流で
どこでも屠殺が行われていたら
当然公開します。一般的な「ありふれた光景」だからです。

ですが、
今回はニワトリ食の残酷性を訴え昆虫食へ勧誘するもの
ではありませんし
写真情報は、勝手にこのブログから切り離され独り歩きしてしまいます。

幸いなことに、
文章による表現はかなり刺激の強いところまで許容されていますので
このまま文章での公開にしたいと思います。



精肉
ニワトリのさばき方は
習った通り、初心者向けの「4つばらし」にて行います。

まずは血抜きしたニワトリを
65℃の湯にくぐらせ、羽根をとれやすくします。
丹念に羽根をとり除きます。

もも肉、胸肉、ササミを切り離し、
砂肝と肝臓、心臓、頭を残して捨てることにします。

消化管内容物との接触は感染症リスクを高めますので
できるだけクリーンな部位として確保したいものです。
内臓を傷つけないよう、そして感染症リスクを下げるため
決してケガをしないよう、最新の注意をはらいます。



羽をむしった1.32kgの鶏に対し
 
肉(もも・むね・手羽・肝臓・心臓・砂肝)は700g、
鶏ガラは640g

およそ半分が食肉になりました。


料理
すべての料理は死体写真です。
なので、調理は「死化粧」といってもいいかもしれません。
調理への気配りはその料理の姿として現れます。
そのため「料理写真」は調理者のメッセージが含まれていると言っていいでしょう。

刺し身や活き造りも「残酷」というのはたやすいですが
殺して活力を失った魚の魅力を、料理で再現し、みずみずしい新鮮な印象
復活させることに成功しています。それには料理人のプライドと技術が必要です。

私の目指すのもこのあたりだと気づきました。。
昆虫の生きていた当時の印象を守り
昆虫の命に思いを馳せる料理ができたら、と思います。

話はそれますが
「欧米では〜」という観点が押し付けられることがよくあります。
欧米は市民が議論を尽くし政治的な判断をすることが根付いています。
それは数多くの革命の失敗の教訓です。

そのため、欧米から論を輸入すると「一見根拠がしっかりしている」と感じます。
ですが「自らが議論に参加せず鵜呑みにすること」こそが、
彼らが最も恥ずべきこととして議論を研鑽してきたのですから、
当然、欧米から論を輸入する我々日本人は、大前提として、鵜呑みにしてはいけません。
そこを起点に、長期に渡る議論が展開できることが理想です。

活き造りやクジラ食など、欧米で議論が整理され「わかりやすく編集」された
論で批判されると納得しがちですし「他国の文化に口出すな」と感情論が起こるのも
その「わかりやすさ」のパワーへの反発といえるでしょう。

ですが、
「神に近いNo.2のヒト」が「他の生物のヒエラルキーを決めること」に
何ら違和感のない欧米に対し、(かつて黒人はヒトではないとヒエラルキーが定められました)

日本は八百万の神、と言われる「すべての事物に神が宿る」
という観点があり、私はこちらの観点が優れていると思っています。

そのため、
養殖用の家畜でも、植物でも、微生物でも、野生の動物でも
すべての命が神様であり、尊いのです。そして感謝しながら食べることが
「いただきます」なのです。

植物だけが欲しいからとムダに虫を殺戮したり
ゲテモノだからと筋肉以外の部分に口を付けなかったり
賢い神様の順番に勝手に序列をつけるような、無礼な真似はできないのです。
(いただきますの代わりに神に感謝する欧米とは決定的に異なりますね)

議論は「わかりやすい概念」だけを取り出すためのものではありません。
わかりやすい概念の奥にある、とても大事で言語化しにくい「わかりにくい概念」
をあぶりだすために使うべきだと思っています。。


話を戻します。

今回は衛生面に自信がなかったため
圧力鍋を使ったスープカレーにしました。



材料
玉ねぎ 2個
セロリ 1本
生姜  ひとかけ
トマトピューレ 一缶
ヨーグルト 150g
ギャバン カレー粉 適量

(これ、安くてかなり美味しいです。)


鶏肉(骨付き)
醤油
ナンプラー
エリンギ

野菜系の材料をすべてフードプロセッサーで破砕し
鶏を漬け込んだ後エリンギとゆでたまごを加え
圧力鍋で30分煮込みました。

ニワトリの力強い脚と、卵という恵みを
スープカレーで味わう料理になりました。
シンボルとして
トサカを真ん中にトッピングしています。

今までの昆虫料理写真と共通するのですが
「生きていた当時を思い起こさせる料理写真」
あることを重視しました。


味見
通常鶏ガラを使ってきちんとダシをとらないと
薄味で、味気なくなってしまうスープカレー。

年をとったニワトリは「丸鶏」と言われ
ラーメンスープにも使われるほど言いダシが
取れるとのことなので期待したのですが。
脚や手羽の骨しか入れていないのに
濃く、いい味のダシがとれています。



ウロコがあり、鶏が恐竜の子孫であることを再認識。筋張っており食べるところは少ない

もも肉
若鶏よりも筋張っており、昆虫も鶏も年をとると筋張るのは共通であることを確認。噛み切るのが難しいほど硬いが、とても味が良く旨味が強い。
通常食べている「鶏肉」が、
50日飼育したブロイラーというたった一日の味でしかないことを実感。

胸肉
やや硬いが味がしっかりしており、パサパサというかムッチリがっしりした肉。
筋張っているが弾力もあるので、胸肉のパサパサ感が苦手な人は年取らせたほうがいいかも。かなり食味が良好な部位。

手羽先
肉がだいぶ少ない。皮下に繊維が発達しており、肉と皮とが一体となったしっかりとした噛みごたえ。味も強く美味しい。羽根の取り残しが多く、食味を低下させるのできっちり羽根は取る必要がある。

トサカ
プリプリで食べやすく、味もしみており大変美味しい。もっと欲しいが貴重なので味見程度。

心臓
プリプリとしており食べやすい。やや血の匂いがするが市販品レベル。これも年寄りだからといって味が強いわけではなさそう。

肝臓
血なまぐさくなく、風味があってとても美味しい。いわゆるレバーの味。ここは若鶏とほぼ変わらない印象。

砂肝
内壁が肥厚して硬くなっており、ほのかな苦味がある。市販品よりもクセが強い印象。色もやや黒いかと。
噛みごたえはバツグン。


市販の卵も年寄りから生まれているので全く変わらず。



まとめます。

1,家畜の解体が一般的でない現代において、ニワトリの屠殺は昆虫に比べストレスが多く、屠殺者が動揺することがわかった。

2,大型の動物、しかもヒトに近縁の動物は共通感染症の危険が高く、可食部位も限られているので食べるまでの作業量が多い。(屠殺からカレーづくりまで3時間)

3,「一般的でないもの」特に動揺の大きいコンテンツに関しては、編集し一般化するか、メッセージ性を持たせてから社会に発信しないと逆効果であったり誤解を招くリスクがある

4,料理は死化粧である。日本の料理は「素材が生きていた姿」を想起させることで、
そのみずみずしさやありがたさを感じさせる調理法といえる。

5,料理研究家は、一般に違和感のある料理を発表、提供することで研究成果をメッセージとして発信する人物である。(平野レミさんは料理愛好家)




最後に
私の食べ残しは我が家のマダゴキたちが食べてくれました。
たった一晩で
骨格標本にできそうなほどいい仕事しています。



ごちそうさまでした。


Mushi_Kurotowa
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プロフィール
HN:
Mushikurotowa 
性別:
男性
趣味:
昆虫料理開発
自己紹介:
NPO法人食用昆虫科学研究会 理事長
このブログは以下に移動しました。http://mushi-sommelier.net

2008年「なぜ昆虫に食欲がわかないのか」研究を開始
食べたらおいしかったので「昆虫食で世界を救う方法とは」に変更。
昆虫の味の記載から、昆虫の特性を活かしたレシピの開発、イベント出展、昆虫食アート展覧会「昆虫食展」まで、
様々な分野の専門家との協力により、新しい食文化としての昆虫食再興を目指す。

2015年 神戸大学農学研究科博士後期課程単位取得退学
テーマは「昆虫バイオマスの農業利用へむけたトノサマバッタの生理生態学的解析」
2018年よりラオスでの昆虫食を含めた栄養改善プログラムに専門家として参加
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