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日本の食用昆虫は
1919年の三宅らの調査では50種類以上食べられていましたが
1985年の野中博士らの調査では十数種類まで減ってしまいました。

この減り方には傾向があり、
イナゴ(稲作)・カミキリ(薪炭材)・カイコ(養蚕)など
生業と深い関わりのあるものが強く残されました。
他の昆虫よりも手軽に確保しやすかったためと思われます・

一方で、一部の採集昆虫
ザザムシやハチノコは、効率が悪いものの、嗜好品として
食べ続けられました。それだけ格別な味だったのでしょう。

後述しますが、やはり絶品です。
危険を犯しても、いや危険だからこそ
食べたくなる味といえるでしょう。


ここで注意して頂きたいのは
オオスズメバチは特に危険だということです。
樹液などで見られる彼らも粗暴に見えますが、
巣の近くでは尋常でない攻撃性を示します。

昆虫料理研究会では、ハチ駆除の専門家から
殺虫剤を使わずに捕獲出来た時だけ
分けてもらうことがあります。

巣が入り組んでいたり、攻撃をモロに受けてしまう
位置だったりすると煙だけでは静まらず、
防護服を着ていても
殺虫剤を使わないと手に負えない場合もあるそうです。

また、
彼らが空中に噴霧した毒を吸うと、動悸が激しくなり
夜寝付けなくなることもあるそうなので
何らかの生理的作用がありそうです。
そのため、専門家でない方に
オオスズメバチの巣の捕獲はオススメしません。

彼らのような真社会性のハチの群れでは、
働き蜂は卵を産むことが出来ません。
そのため、自分が死ぬ危険を犯してでも、
巣や女王、子を残すために行動します。
それだけに他の昆虫よりも強烈な攻撃をしてくるのでしょう。


さて
今回は味見
幼虫から成虫まで一気に比較します。


左から終齢幼虫、前蛹、蛹、成虫です。

茹でる前は半透明ですが
茹でると不透明の白になります。


前蛹になる時に、幼虫は消化管の内容物を全て出してしまうので
前蛹の背中は白いのですが
幼虫はいわゆる「背わた」が入っているので背中に黒い筋が見えます。
これは肉食であるスズメバチ幼虫のために、働き蜂が捕獲してきた「虫肉団子」
ですので、細かくなったクチクラがジャリジャリして大変食感と味が悪いので
除去することをオススメします。

肛門の少し上の背側に切込みを入れ、ニュッと出します。


これをゆっくり引っ張ると取り除くことが出来ます。



鱗翅目の幼虫でも、消化管内容物の味が気になる場合は
同様に肛門の少し上、背側に切込みを入れ、絞りだすことによって
味の強い未消化物を除くことが出来ます

今回は茹でですので、刺さる危険のある成虫の針はとっておきましょう。



お吸い物で頂きます。




味見

幼虫
糖度が高いとわかるほど甘みが強い。白身魚に似たタンパクとコーンや木くずのような香ばしい香り、動物系の僅かな香りが食欲をそそる。やはり他の昆虫とくらべても抜群にうまい。

前蛹
消化管を抜かない分プチッとした食感が楽しめる。同様に、体液が逃げないのでより濃厚な味、カニ味噌やウニのような強いうまみがあり美味しい。お吸い物にも向いているが、濃厚なのでわさび醤油で食べたい。


更にあっさりして豆腐のような味わい。形成しかかったクチクラがサクサクと良い食感を与えてくれる。強い旨みは減り、穀物のような優しい香り。一番好み。お吸い物の具に最も適した段階

成虫
クチクラが硬くなってきてしまい、茹でただけでは口に残ってしまう。体液を主とした甘みがあり、味は良い。タンパク系の味はほとんどしなくなってしまう。揚げ料理で香ばしく頂きたい。

味の違いを詳しく見ることが出来ました。

巣を見てみるとこんな感じ。部屋にフタがされたところは前蛹か蛹が入っており、
段々色がついてきます。目が黒くなったあたりがもっとも好みです。



実は
今回の味付け「お吸い物」には思い出があります。

2011年、昆虫料理のよるべ(昆虫料理研究会主催)に参加していたところ
オオスズメバチ蛹のお吸い物がメニューにあり、
食べた所ガツンと衝撃を受けました。
それまで昆虫の料理法は揚げがほとんどで、
「昆虫は他の食材と同様の普通の味」と思っていたのですが

このオオスズメバチの蛹は
お吸い物の具に最適化された味・風味・香り・食感・色を
兼ね備えていたのです。


そこで気づきました。
「昆虫料理は種・段階・時期・調理を総合的に評価して開発しなければならない」
そして
「現在の昆虫料理開発に最も不足しているのは昆虫学の体系的知識である」と。

ということで、
昆虫料理の味見に向けて昆虫学を勉強する
当ブログのコンセプトが生まれたのでした。

この大変美味しい蛹


感動したので、
当時独学で練習していた鯨歯彫刻を使ってストラップを作りました。



今ではもうちょっと上達しましたが
我ながら美味しそうに作れたと思います。
思い出の品です。





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無題
初めましていつも楽しく拝見させていただいております。

背わたが予想外に大きくてびっくりしました。しかし綺麗に取れるものですね。

蛹ストラップ、お見事です。よく似てます。蟲喰ロトワさんは手先が器用ですね。食虫料理もいつも美味しそうですし羨ましい限りです。

これからの更新も楽しみにしております。
soy 2013/09/21(Sat)11:41:28 編集
Re:無題
お褒めいただきありがとうございます!
今見ると造形に多くの間違いが多くあるのですが…笑
スズメバチの背わたはまとまっていて他の昆虫より立派ですね。
除くと幼虫がショボンとしてしまいます。
【2013/09/21 14:12】
無題
予想外の調理法でしたが、お吸い物すごくおいしそうです…!揚げ物はちょっと手間ですし…。
成虫の方が色が映えておいしそうなのに、硬くなってしまうようで残念です。

ところでクロトワさんがご試食されてる以上大丈夫だと思うのですが、スズメバチの毒は食べてもなんとも無いのでしょうか…?
フグみたいに毒を除くのが大変そうだと思ったんですが、特に記述が無いと言う事はアリジゴクの記事の様に「熱で大人しくなるタンパク質毒」なのでしょうか。
スズメバチを食べる機会は無いだろうと思いつつ、ハチノコの毒抜きとか聞かないなとふと疑問に感じたので教えて頂けると…!
URL 2013/09/21(Sat)18:46:41 編集
Re:無題
ご質問ありがとうございます!
「食べて危険な毒」と
「血中に入って危険な毒」に分けると考えやすいかと思います。

ヒトの消化器系は強力です。
水溶性の成分が血中に移動することはありませんし
胃から腸にかけて
酸からアルカリへpHを変えながら強力な酵素で分解していきます。

そのため、仰るとおり
蜂毒(アミン・ペプチド・酵素の混合物)は
食べても変性・消化されてしまい、量も元々少ないので
すぐに薄まってしまい食中毒のような症状は起きません。

ところが、
フグに含まれるテトロドトキシンは小さい分子で熱にも強く、
しかも大量に含まれるためにヒトが消化する間もなく中毒になってしまいます。

そのため、毒の作用の強さは一般的に
食べて危険な毒>血中に注入されて危険な毒 といえます。
(消化されて毒性を発揮するへんな毒もあるそうですが)

食べて危険な毒は血中に注入しても危険ですが、
血中に注入される毒は食べても大丈夫なことが多い、
といえると思います。

大ざっぱな説明なので、もちろん例外もあるかと思いますが
こんなかんじでお答えになっているでしょうか。

【2013/09/22 09:05】
無題
分かりやすい説明ありがとうございます!

人間の消化器官ってすごいんですね、消化液程度と侮っていたら酵素の力で毒まで分解なんて…。

一応血中に入ったら危険ということで、機会があっても虫歯や口内炎の時は食べるの止めておきます…!
2013/09/22(Sun)19:32:00 編集
Re:無題
そうですね。スズメバチと同様にタンパク系の毒をもつ蛇に噛まれた場合
毒を口で吸い出す場合、口内炎や虫歯があると危険だそうです。
必ず加熱していただきたいですね。
【2013/09/23 22:18】
無題
昆虫を食べるには、味も大切ですが、量が採れるかどうかも重要だと思います。
その点、スズメバチの巣は理想的だと思います。
我が家では前蛹と白いサナギしか食べないのですが、一度の狩りで十分な収穫が得られます。
ただ私は狩るのは得意なんですが、残念なことに、自身のハチアレルギーのため、少ししか食べられません。
KOH URL 2013/10/03(Thu)01:47:05 編集
Re:無題
コメントありがとうございます!
仰るとおり、1919年の調査で55種類食べられていた昆虫ですが、
採集効率が悪いためか
その後カイコやイナゴ、カミキリ(薪の副産物)、
そして社会性昆虫のハチなど、
多く採集できるものがメインに変わっていったようです。

現在のように嗜好品レベルならばよいのですが
食料需要を満たすには養殖への道を
考える必要があります。

その時に、スズメバチは肉食なので、
食用養殖にはコストが高めになりそうですので、
まず草食のものから養殖化を目指すべきだと思っています。。

食物アレルギーとしての蜂アレルギーの方は
未だお会いしたことがありません。
どのような反応が起こるのでしょうか?
差し支えなければ教えていただければありがたいです。
【2013/10/04 08:55】
Mushi_Kurotowa
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プロフィール
HN:
Mushikurotowa 
性別:
男性
趣味:
昆虫料理開発
自己紹介:
NPO法人食用昆虫科学研究会 理事長
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2008年「なぜ昆虫に食欲がわかないのか」研究を開始
食べたらおいしかったので「昆虫食で世界を救う方法とは」に変更。
昆虫の味の記載から、昆虫の特性を活かしたレシピの開発、イベント出展、昆虫食アート展覧会「昆虫食展」まで、
様々な分野の専門家との協力により、新しい食文化としての昆虫食再興を目指す。

2015年 神戸大学農学研究科博士後期課程単位取得退学
テーマは「昆虫バイオマスの農業利用へむけたトノサマバッタの生理生態学的解析」
2018年よりラオスでの昆虫食を含めた栄養改善プログラムに専門家として参加
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