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ニホンミツバチ Apis cerana japonica
は日本で古くから利用されてきたミツバチです。
従来は
野生集団の巣から蜂蜜を強奪する採集が行われてきましたが
明治時代に巣箱を使った養蜂が導入されて以降、
ニホンミツバチの養蜂も同様に行われています。
ただ、ニホンミツバチ由来の蜂蜜流通は
ほとんどないそうです。
養蜂に最も適すると言われる
セイヨウミツバチ(イタリアミツバチ Apis mellifera ligustica )
に比べ気むずかしい事がわかっており、巣箱を放棄することもあります。
蜜の量も少なく、採蜜用の花もバラバラ(セイヨウミツバチは一種類の花の蜜を集める傾向がある)で、なかなか難しいそうです。
今回は知り合いの方がメンテナンスのため、
巣箱を開ける機会があったのでそれに乗じて
味見をさせていただくことに。
モフモフで清潔感があり、大変愛らしい姿です。
「ミツバチと蝶」は女子に嫌われない昆虫の二大巨頭ですね。
幼虫とサナギ
巣板の上のワーカー
上から見るとこんな感じ
味見
幼虫 スズメバチのように消化管内容物を除く必要はない。
ほのかに甘い味と花の香、とろっとしてスズメバチ系の匂いはなく、小粒ながら美味しい。
前蛹 意外と味がしつこく、収斂味がある。濃厚で滋養によさそうな味。薬っぽい強さがある。
花の香はせず甘くない。掴むのは大変困難ですぐに外皮が破れてしまった。
サナギ:シャクッとした食感と淡白な味、木質のいい香りが立ち上り、やはりサナギの美味しさは格別。
成虫 味はかなり薄い。
毛の感触が少し食感に面白みをもたらすが他の段階にくらべ取り立てて美味しい点は見つからず。
小粒ですが、なかなか味わい深く、
スズメバチとの種間の違いがよくわかりました。
「ミツバチは幼虫、スズメバチは前蛹、白いサナギはどちらも美味い!」
覚えておくとよいでしょう。
きっと何かの役に立ちますとは言いません。
さて
ミツバチの家畜化は
飼料のすべてを人間が用意する「完全養殖」ではなく
住居のみを提供する「半養殖」として完成しました。
彼ら真社会性の昆虫は、
交尾や産卵を女王が
エサの収集、次世代の養育、外敵からの防御や天候や気温への対応などを
ワーカー「働き蜂」が
役割分担することで、効率よく群れを拡大することが出来ます。
ワーカーは毒針を持つ代わりに産卵機能を失っており
彼らの子孫が繁栄するためには、
女王とその子供、巣を守らなくてはいけません。
そのため、
ワーカー個々の命はさほど重要ではないのです。
ミツバチはスズメバチと違って、毒針を使って攻撃すると、
針が抜けて腹部が傷んでしまい、死にます。
人生に一度きりの捨て身の攻撃なのですが、
女王や巣を守るために、
けっこう気軽に刺してきます。
この「気軽な捨て身感」は、
我々哺乳類には共感しづらい行動でしょう。
そんなミツバチを利用するには、
一匹一匹に衣食住を完全提供する「終身雇用制度」よりも
ミツバチの最も大切な「巣」を守る
丈夫で居心地のいい住処を提供する
「大家さんー家賃収入モデル」が
よさそうです。
ここでいう家賃収入は、
蜂蜜であったり、虫媒花の作物の受粉であったり
更にはローヤルゼリーなど、ミツバチの恩恵は多大です。
先ほど書いたように
ニホンミツバチはセイヨウミツバチに比べ、
巣箱の住み心地が悪いと巣を放棄して移動することもあり
「気むずかしくて飼いにくい」そうですので
その点では
養蜂に適したセイヨウミツバチが優れています。
ですが
ここ日本では事情が異なります。
そうです。
スズメバチです。
この巣箱を御覧ください。これはセイヨウミツバチの巣箱です。
周囲を網で囲い
入り口には細かい金網を使ったトラップ。
オオスズメバチがトラップされています。
更に巣箱の上に粘着シートを設置すると
こんな感じ。大量にスズメバチが捕獲されています。
一方ニホンミツバチの巣箱はこんな感じ
入り口にスズメバチ侵入防止の細かい金網が付けられていますが
セイヨウミツバチほど特殊な設備は付けていません。
セイヨウミツバチの分布域は
元々スズメバチと重なっていなかったため
彼らはスズメバチに対する特別な対処法を持っていません。
他の侵入昆虫と同じように、
攻撃しにワラワラとでてきてしまいます。スズメバチの力は圧倒的ですので、
その下にはミツバチの死体の山ができてしまい、巣が疲弊してしまいます。
一方ニホンミツバチでは、
熱を出してスズメバチを殺す「蜂球」という
有名な攻撃行動があります。
また、オオスズメバチなどの圧倒的な敵が複数来た際には
巣箱の中に引きこもり、攻撃せず、彼らが立ち去るのを待つそうです。
そういう意味では
ニホンミツバチは「日本での養蜂に適した」
種といえるでしょう。
このことから将来の昆虫養殖利用は
以下のようなことが考えられます。
1,在来種の利用によるリスク低減
在来生態系の改変を最小限に抑えることで、当該地域における環境の変動や
外敵などのリスクに対して、昆虫本来が持っている防御機構を利用する。
2,養殖ノウハウの共通化
在来種をヒトが利用するために他地域の近縁種の事例を参考に、
養殖ノウハウを導入する。
3,地域に応じたカスタムとそのための調査
近縁種間の生態の違い、地域の養殖従事者の性質の違い、
地勢の違いを調査し、それに対応するべく条件検討を行う
4,制度を設けた持続可能な養殖業へ
環境を破壊する無秩序な養殖を防ぐために組合を結成し
持続可能な養殖業となるよう管理制度を設計する。
この養殖業について「ブランド」を整備し、
消費者が乱獲由来の昆虫を購入しないよう促す。
と
言った感じでしょうか。
ミツバチはハチノコも美味しく、
ヒトと長らく歩んできた家畜ですので
そこから学ぶことはまだまだ多くありそうです。
しかも、食べ始めた経緯について記事にしていただけるようで、非常に楽しみにしております
しかしながら私、前回のコメントで思いっきり蟲喰ロトワさんのお名前間違えてましたね。すみません。(汗)
いつだったかミツバチが激減、なんてニュースが流れましたが激減したのはセイヨウミツバチの方なのでしょうか?
あまりの激減ぶりに様々な陰謀論が出ておりましたのを覚えております。
ニホンミツバチが激減していないようであればこれからの養蜂界での活躍に期待したい所であります。
名前は適当につけているので気にしません。
ミツバチの激減(死亡というより失踪)については
神経に特異的な毒であるネオニコチノイド農薬が有力だと(私は)思っています。
ミツバチの高度な社会性は、本能的な行動と、確実な学習によって
構成されているので死なない低濃度の毒でも、学習の阻害や行動の変調を来し
群れという社会構造が崩壊することが十分に考えられるからです。
ともあれその原因を突き止めないことには、ニホンミツバチへのシフトは難しいでしょう。
利用されている数があまりに違いすぎるので、今の段階でニホンミツバチのほうが安全、ともいいきれなそうです。ですがニホンミツバチには踏ん張って欲しいですね!
は
昆虫を材料にした研究室で女性が多い割合から推定したものです。
コオロギ・ハエ・ゴキブリはやはり男性ばかりの研究室になりがちです。
テントウムシは扱っている研究室を見たことがないので ノーデータということで。
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このブログは以下に移動しました。http://mushi-sommelier.net
2008年「なぜ昆虫に食欲がわかないのか」研究を開始
食べたらおいしかったので「昆虫食で世界を救う方法とは」に変更。
昆虫の味の記載から、昆虫の特性を活かしたレシピの開発、イベント出展、昆虫食アート展覧会「昆虫食展」まで、
様々な分野の専門家との協力により、新しい食文化としての昆虫食再興を目指す。
2015年 神戸大学農学研究科博士後期課程単位取得退学
テーマは「昆虫バイオマスの農業利用へむけたトノサマバッタの生理生態学的解析」
2018年よりラオスでの昆虫食を含めた栄養改善プログラムに専門家として参加