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みなさま
先日は
「東京虫喰いフェスティバルVol.4」に
ご来場いただきありがとうございました。

食用昆虫科学研究会活動報告のコーナーを担当させて頂きました
蟲喰ロトワ (むし-くろとわ)と申します。
某ジブリアニメ登場人物に似ている?とのことからの命名です。

私が所属する食用昆虫科学研究会では
昆虫食に対して文系、理系を融合した
科学的なアプローチを行う団体で

「本当に昆虫食が食糧事情を改善するのか」
という点も
ひとつの大きなテーマとなっています。

オランダ、イギリス、タイなどの海外の研究も参考にしつつ、
いろいろ考えるところはあるのですが、

それはこちら→HP
にまかせておくとして、

虫フェスでは

「昆虫が食糧として普及した未来に何が起こるのか
ということを文化的に妄想していきたいと思います。

まず
普及すると思われる昆虫はこちら。

トノサマバッタです。
なぜこのバッタかというと

「相変異」という密度に応じた生理的変化が起こることが知られており、
これを利用することで、高密度で高効率な飼育ができるのではないか、
と考えているからです。

実際に実験室で集団飼育すると、
大発生時に報告されていたような
相変異したトノサマバッタとよく似た形質になります。
(相変異トノサマバッタは多摩動物園で見ることができます。)

相変異についても、本業なのでこのへんにして。

それではお題


昆虫食が普及した
未来のバッタ農家を舞台にその一年を追っていきます。

※この話は昆虫食SFであり、実際の団体、名称、研究所、大学、イベント等とは一切関係がありません。なお、写真はイメージです

もくじ



それでは


まずイネ科の草を育てます。その年の生育状況に合わせて、
養殖する個体数を決めます。

次に冷蔵庫から卵を取り出します。

バッタの休眠卵は保存が効くので、好きな時に養殖を開始できます。

養殖期間は短く、一ヶ月から二ヶ月です。
メスだと体重がおよそ360倍にもなります
恐るべきスピードです。


収穫したバッタは美味しく頂きます。


、盛んに養殖されたバッタを使って、二次的な養殖も可能です。
つまり、昆虫食性の動物の養殖が可能になるのです。


タランチュラ、フトアゴヒゲトカゲが食べることを確認しました。
腸内にある草も全て食べるので、栄養バランスは良いと思われます。

、収穫したバッタを冬に備えて保存します。
生のバッタはエビと同じくらい傷みやすいので、
保存のため冷凍か、加工する必要があります。
イナゴの佃煮も保存を考えた加工法です。
フリーズドライも試してみました。バッタは脂質が少なく、
タンパク質が多いので、フリーズドライ加工に適した食材といえます。


一方で、カミキリムシなどの脂質の多い幼虫はフリーズドライをしても
ふにゃふにゃで乾燥しきらず、脂質が変性してしまい、美味しく保存できません。

また、発酵も保存に適した加工法です。
ということで「バッタ醤油」を作ってみました。

バッタ醤油、
というとバッタを捕まえた時に出てくるアノ茶色い汁を思い出すかと思いますが、
それではなく、塩麹でバッタを発酵させたホンモノの醤油です。


草の香りがほんのりする、醤油に仕上がりました。

今回はもろみ醤油と同じ製法でしたが
魚醤は自家融解の酵素(体内にある分解酵素)を利用して
塩だけでゆっくり反応させたものです。非加熱のバッタを使って
魚醤タイプも次回やってみたいと思います。


 。バッタの適温は16℃以上なので
バッタ養殖はお休み。農閑期に入ります。

養蚕の農閑期であればくず繭を用いたまゆ工芸
民芸品等が作られました。
当然バッタ農業でも農閑期には手工芸が行われると考えられます。

このような工芸は、農業の副産物をよく使います。
バッタ農業での副産物とは。。。。。

フン

ですね

バッタは一日に体重の7割ほどのフンをします。
100匹のオスのバッタを5日間飼育した所、
乾燥重量で100gのバッタがとれました。

つまり、養殖によって生産できるものは
バッタよりフンの方が多いのです。
これは副産物としてきちんと処理を考えなくてはいけません。

フンはすぐに乾燥し、草の香りがします。

香り。。。。。香り。。。。。

うん お茶ですね。
(過去記事ティーパーティー参照)

バッタのフンは香りがよく、フライパンで炒って煮出すだけで
美味しいお茶になります。
この発想はカイコのフン、蚕沙が漢方で使われ、
お茶として飲まれていることにヒントを得ました。


次に。

草に含まれるタンパク質、糖質、脂質は吸収され、
乾燥重量あたりフンは草の二倍の繊維を含みます。

繊維。。。。。。繊維。。。。。。

そう、ですね。


今回は手すきハガキにしたバッタのフンに、バッタのハネをあしらい
飛んでいるバッタをモチーフにしました。

続いて フンには色素が含まれているので
染物 が出来ると考えられます。
ミョウバンを媒染剤に使い、フンの煮出し汁に何度も漬けることで
鮮やかな黄色いTシャツができました。


意外な黄色いいい色ができました。媒染剤を変えてまた挑戦したい所。

更に更に。
工芸ができ、地域の結束が高まると
その年のバッタの収穫に感謝する収穫祭

が発生することでしょう。
バッタのフンを20%紙粘土に練り込むことで
バッタ面の完成です。


さてさて
今年の収穫を感謝するバッタ祭
始まります。

最初は私。正装の蟲喰ロトワが法螺貝にて祭りの開催を宣言します。


首元にはバッタ面。ネクタイとしてコーディネートしました。

バッタガールも。

バッタ屋台も


バッタ茶も


バッタおじさんも。


そして、日本の祭といえば、和服美女ですよね。


以上。

昆虫食が普及した未来に何が起こるか。
バッタ農家の一年とバッタ祭り妄想でした。

※あくまで昆虫食SFとしてお楽しみください。











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無題
はじめまして、趣味で色々な直翅目を採集・飼育しているM.H.と申します。
トノサマバッタの研究をされていると聞いて来ました。
孤独相と群生相が居ますがどちらのほうが美味しいのか気になります。
群生相のほうが脂肪が多いのでまろやかになるのでは?
と思っていますが飼育下では転移相止まりになってしまい、
群生相はまだ入手したことがありません。
最近では関西国際空港で群生相らしき大発生がありましたが、
個体の入手は叶いませんでした・・・。
また、対馬には巨大な個体群が生息しているので、
たくさん食べられるのではないかと思っていたりしています。
この個体群の卵は非休眠にできるのか、本州個体群と比べて産卵数や
成長速度に違いはないのか気になっているので来年採集に行く予定です。
今後、日本でトノサマバッタの群生相が発生したり、
サバクトビバッタなどの外来種が進入するとも限らないので、
昆虫食をはじめとするバッタの有効活用のさらなる発展に期待しています!
M.H. URL 2012/12/09(Sun)03:11:42 編集
Re:無題
M.Hさん 初めまして。
コメントありがとうございます。

群生相・孤独相の味の違いですが、
今のところ飼育密度と味の関係は
食べてみた限りでは分かりませんでした。
成長段階に伴い味も変わるので
比較のためには日齢を揃える必要があると思うのですが
そのあたり止まりです。

また、野外での群生相と孤独相を採集しても
それらの味の違いはあるかもしれませんが、
食草、ステージ、日齢等
かなり条件があるので一定の味の違いを
記述することは難しいかと思います。

こちらは主に昆虫食のブログなので、
研究に関することは余り書きません。すみません。
対馬の系統は大きいのですが死亡率が高く
飼育が難しいです
(非休眠化は長日条件で出来るようですが)。
沖縄系がよく増える印象なので
比較データをとっています

沢山の情報ありがとうございます!
トノサマバッタについて
また何かありましたらお知らせください!


【2012/12/11 21:56】
無題
こちらこそ掲示板へのコメントありがとうございます。

飼育密度以外にも食草、ステージ、日齢等さまざまな要素があり、
単純に比較するのは困難なのですね。
確かに全くの同一条件で何代も累代するのは難しいですね。

沖縄系統のトノサマバッタは本州よりも増えるとのですが、
私が八重山まで直翅採集に行ったときは本州よりトノサマバッタの数は
少ないように感じたので意外です。
おそらく八重山にはトノサマバッタが好む乾燥したまばらな草原が少いため
繁殖能力の高さが活かされていないのかなと思いました。
今度また八重山に行くので確認と採集をしたいと思います。

対馬系統の情報ありがとうございます。とても参考になります。
長日設定で周年発生が可能というのは特に朗報です。
インセクタリゥム1994年12月号にトノサマバッタの休眠卵率の全国マップが
掲載されていますが対馬は触れられていなかったので気になっていました。
トノサマバッタを研究されている方でも死亡率が高いようですので、
一般飼育者の私ではとてつもなく難物なのでしょうね…。
食草、気温、湿度、通気性、日齢、密度などなど色々試しながら、
なんとか累代を継続できるよう挑戦してみたいと思います。

P.S.
対馬系統のトノサマバッタは産卵しにくいようですね。
しかし、短翅型・短脚型が発現するなど他産地のトノサマバッタには
見られない大きな特徴を持っているようでますます興味が尽きません。
※第56回日本応用動物昆虫学会大会初出(ばったりぎす150号掲載)
確か対馬産ニシキリギリスも短翅型が出現しますので、
島嶼である対馬内ではさほど移動(生息域の拡大)をする必要が無く、
翅を短くして移動コストを抑えたほうが有利だからなのでしょうか・・・?

・・・すみません、昆虫食ではなく研究の事を書いてしまっていました。
M.H. URL 2012/12/12(Wed)19:58:41 編集
Re:無題
ありがとうございます!
…実は所属はそのあたりの研究室でして…ゴニョゴニョ。
短翅はそろそろまとまった報告が出るかと思います!

養殖に適した性質(飛翔、跳躍能の低下)や、
体色変異などを伴う野外適応度の低下がみられる変異を
組み合わせて系統を作ることで、
より効率的な養殖につながると思います。

後脚が退化しているなど、
脱走防止に有効な形質が今後見つかれば維持したいです。

こちらは趣味ブログなのですが、
食用昆虫科学研究会HP http://e-ism.jimdo.com/
では実名での活動していますので
より詳しい話が出来るかと思います。
(メールフォームを使っていただければ、と思います。)

私がトノサマバッタを始めたのが今年ですので、
できるだけ様々な情報を集めたいところです。
詳しい方に出会えて、有難いです。
今後ともよろしくお願いいたします!
【2012/12/14 00:30】
すごい!
虫が好きなだけの通りすがりで拝読させて頂いています。
虫を食う=ゲテ・見せ物
の下らない枠を遥かに越えた、素晴らしいブログですね。
私は趣味で魚釣りをするのですが、
食味、各種の性格や性質、生活スタイルが種の同定やグループ分けに役立つのは事実だと思います。

トノサマバッタの唐揚げが居酒屋の定番メニューになれば良いのにな・・
日本の虫の食い方はみんな佃煮で面白くない。
くそコロネ 2013/07/10(Wed)21:16:19 編集
Re:すごい!
コメントありがとうございます!
昆虫食は今まで文化学由来のアプローチが多く、
現在の文化とのギャップを利用したエンタメ(ゲテモノ系)や
食べ方も冷蔵庫が無い時代の保存食、佃煮がほとんどでした。

魚の漁獲や保存、調理法が魚類学をベースとして洗練されてきたように
昆虫食も昆虫学をベースとして、発展させていきたいと思っています。

ですが
昆虫は種類が多すぎて、分類群ごとに専門家が細分化しないと
網羅できませんので、それぞれの専門家「虫屋さん」との情報交換をしながら
進めて行きたいと思っています。なのでマジメです 笑

魚釣りは一本釣り等を除き「漁」とは一線を画す面白い文化だと思います。
捕獲スタイルが目標種、サイズを絞って取り過ぎないことが前提で
一般的に環境負荷も低く、趣味としても大きな市場になっています。

釣り分野を参考に、ライバルに思いながら
やっていきます!

先日虫取り網用の長い竿を探していたら
玉網の竿が同じネジ穴を使っていることに気づきました。
タマムシが取れるような長い竿が近所の釣具屋に激安で売っていて嫉妬です。

「虫具屋」とか普及させたいですね…
【2013/07/12 03:45】
Mushi_Kurotowa
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Mushikurotowa 
性別:
男性
趣味:
昆虫料理開発
自己紹介:
NPO法人食用昆虫科学研究会 理事長
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2008年「なぜ昆虫に食欲がわかないのか」研究を開始
食べたらおいしかったので「昆虫食で世界を救う方法とは」に変更。
昆虫の味の記載から、昆虫の特性を活かしたレシピの開発、イベント出展、昆虫食アート展覧会「昆虫食展」まで、
様々な分野の専門家との協力により、新しい食文化としての昆虫食再興を目指す。

2015年 神戸大学農学研究科博士後期課程単位取得退学
テーマは「昆虫バイオマスの農業利用へむけたトノサマバッタの生理生態学的解析」
2018年よりラオスでの昆虫食を含めた栄養改善プログラムに専門家として参加
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