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繰り返しになりますが。
私は幼少の頃から昆虫食をしていたわけではないので、

食べたことのない昆虫を食べるのは普通の人と同様の抵抗感があります。

本日の抵抗感のある昆虫はこちら。
ヨコヅナサシガメAgriosphodrus dohrni


桜の木に多く生息し、おいしいモンクロシャチホコの幼虫の体液をちゅーちゅー吸っています。

なので私にとっては害虫です。また、近年の移入種であるそうなので
美味しければ心置きなく食べて駆除したいところです。
サシガメの名前の通り、口吻で刺されることがあるそうです。
刺されないように慎重にとって

茹でて試食。
強い苦味と青い柑橘のような香り。とてもケミカルな感じで他のどの昆虫とも似ていないマズさをもっている。食植性のカメムシとは全く違う香り。
体は柔らかく食感だけは良い。翅も気にならない。

ヨコヅナサシガメは本当にテンションが下がるマズさでした。
オススメしません。刺されることがあるそうなので扱いには注意して下さい。
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記念すべき100記事目ですが 
今回の記事は懺悔になります。

採集昆虫食をおすすめするかどうか、というポイントには
味や・毒の有無などがありますが
絶滅危惧種であるか
考えるべき問題だと思っています。

我々は昆虫食を普及させたいと思ってはいますが、あくまで
70億人の食糧になりうるのは養殖した生物である、というのは明白ですので
このブログは「養殖すべき生態を持ち、かつ美味しい昆虫を見つける」ことが最終目的です。

そのため、現在のままの
採集昆虫食は昆虫の生態系を破壊するリスクを持っています。

全国にいるアマチュア昆虫研究者は、
よほど信頼出来る相手でないと
貴重な昆虫のスポットを教えないそうです。。
もし業者や心ない採集者がそのスポットを荒らしてしまったら
すぐに回復不可能になってしまうからです。

昆虫は種の多様性が高い分、我々が想像するよりずっと
多様な生物の相互作用によって生息しているので、
ヒトの些細な行動によって簡単に環境が変わってしまうのです。

さて、今回の懺悔は
オオミノガEumeta japonicaを食べてしまいました。二匹も。しかも美味しかったです。
(繭の形とサイズからオオミノガと同定したのですが、大丈夫でしょうか。)

オオミノガは近年、オオミノガヤドリバエが中国から移入してきたことから激減し、
絶滅危惧種に指定されている自治体もあります。
そのため採集昆虫食にはおすすめできないのです。

ミノムシとヒトとの関わりは古く、
丈夫なミノが身を守る、身を包む、ということから災いや事故から身を守り、幸せが身から逃げないといわれ、とても縁起のよいものだそうです。
また、ミノムシの繊維はクモの糸よりも強度が高く、天然の繊維としては最高だそうです。

そのため、
カイコの影には隠れていますが、日本でも冬に空になったミノを採集し利用してきました。


これは昨年、成田山のリサイクルショップで1000円(!)で購入したものです。
1マスが一匹のミノからできています。このバッグに使われたものは一ますが大きく、
立派なオオミノガが使われたことが類推されます。

今回食べたのは5月中旬の八王子での若虫会で採集されたもの。


左は幼虫(前蛹)、右はサナギと思われます。

味見
サナギ
!うまい!木の香りと鱗翅目の脂肪が一緒になった見事な一品。ヤママユガ科の美味しさに匹敵する。ミノガは繊維もとれて味も良い。

幼虫
ほぼ前蛹のためかとても美味しい。クワガタの幼虫のような木質系の香りと鱗翅目のねっとりとした脂肪体の味。外皮は弾力があるもののかみきりやすく、コリコリ固めのキクラゲのような食感。大ヒット。これはうまい

美味しく、繊維も使える素晴らしい採集昆虫ですが
残念ながら食用にはおすすめできない種です。




昆虫食に挑戦するにあたって重大な情報
毒のある昆虫について
以前に赤ら顔の縦縞ストライプ。マメハンミョウ


メタリックケンプファーことツチハンミョウを紹介しました。

これらについては古くから毒薬として使われた文献があり、色々調べるうちに

「毒虫として誤解されたハンミョウ」

との記事が。つまり本家ハンミョウCicindela chinensisに毒がないことが証明されているっ!


これは食べなくてはいけないと思い、いつものように茹でてポン酢で食べてみた。

感想
さすがオサムシ亜目。美味しくない。
外皮はそこそこ硬く、内部からじわじわと苦味が出てくる。噛めば噛むほどうまみのない苦味が
口に広がるほど強くない様子でずっと続く。

ううむ まとめましょう

マメハンミョウ 食べられません
ツチハンミョウ 食べられません
  ハンミョウ 食べてもマズい

結論
ハンミョウと名のつくものはオススメしない。

「マンガの神様」と言われる手塚治虫。
特にオサムシが好きで本名「治」をペンネーム「治虫」としたという話は
あまりに有名ですが、
彼は作品に度々養殖昆虫食を登場させています。

むしくい.net さんにて紹介されていたのは
ジャングル大帝レオによるバッタ牧場。コチラ

これはマンガ版、アニメ版ともに天変地異や脱走でバッタ牧場はうまく行かず、
ジャングル大帝の中では昆虫牧場の是非が明らかにされませんでした。

しかし、
こっそりと昆虫による食料生産が
成立していた描写があったのです。

それは超有名作「火の鳥 太陽編」

宗教戦争により火の鳥を崇拝する「光」と彼らの迫害により地下スラム街に追いやられる人々。
地下の人々は「シャドー」という反乱組織を作り、
「光」に対しスパイ活動を行い、頃合いを見計らって宣戦を布告する。

この地下世界
主人公スグル少年が
「横浜や東京の地下街と下水道をごっちゃにしたもの」
「寒く薄暗くジメジメして空気が悪い」
と表現しているとおり、かなり不自由なようです。

食べ物も限られていて、
地下の共済マーケットには

「無菌ネズミ」16頭ぐらいで8ダカット 
「ゴキブリ10匹100円(うちのデュビアで換算すると約16g?)」 
「ウジツクダニ(10gあたり?) 50円」 
「ザザムシ 10G 200円」

が売られていました。(他は詳細が確認できず)

1ダカット=3.5g金貨なので
1gあたりの価格に換算すると
137005円! じゅうさんまん! 高いっ!

1頭1万円弱ですね。超高級品です。 

大きさとしては200gぐらいあるでしょう。大きさはラットぐらいです。
参考;ラットの体重曲線

この資料を元にすると、
6週から10週程度で200gぐらいになりそうです。この間の摂餌量は15〜25g/24hですので
平均20gとして8週で1120g。
これを昆虫食で賄うと考えてみましょう。

うちのデュビアが一匹0.6g(乾重)でしたので
1866匹食べたことになります。ゴキブリだけで育てると飼料代だけで18660円です。
するとゴキブリよりずっと安いウジ(佃煮加工前)で養殖していた可能性が高いと思われます。

また、
ラットと昆虫の圧倒的な差額を考えると
昆虫より安い飼料源が
シャドーにはなさそうだ、ということも伺えます。

当然太陽の光が届かないのですから、
米麦などの穀物を初め果物やイモなど、
比較的裕福なスグル少年ですら買えないほど高価だったと思われます。

このスグル少年の職業は若干17歳にして殺し屋・スパイですので
今回地上に出ると、食べ慣れたこれらの食材とはしばらくお別れです。
任務に失敗したらもう食べられないかもしれません。

無菌ラット16匹は
さぞ奮発したことでしょう。

さて、
このラットの飼料でもありスグル少年の食料でもある
昆虫はどのように養殖されたのでしょうか。

使われていた昆虫の種類を考えると
ゴキブリやウジは分解者ですので、
生ゴミやウンコの再利用と考えられます。
しかし、
地下世界で排出されるウンコだけでは
それに含まれるエネルギー以上の生産は物理的に不可能なので、
次第に枯渇してしまいます。

そのため
有機物をシャドーの外から補充する必要があります。

人の出入りが殆どムリで、光も届かないのに
何がシャドーに供給されているのでしょうか。

有機物の供給源は
おそらく「光」からくる下水でしょう。
シャドーの世界は配管が多く、『水漏れにともなう消毒(殺菌?)』が頻繁にあることから
これらの配管の多くは不衛生な下水と思われます。

つまり
「光」は下水をシャドーに垂れ流すことで、
シャドーの食料資源を供給しているのです。
また下水には排熱や、水の位置エネルギーも含まれています。
シャドー内に地下鉄や図書館・テレビが完備されていることから、
光からくる下水はシャドーの重要な熱・電気エネルギー源であったことが推察されます。

シャドーへの迫害が起こったのは「光」が成立した7年前ですので、
以前からスラム街と化していた不自由な地下世界を
そのまま追放スペースとしたのでしょう。

さて、このマーケットの商品で明らかに異質なものがあります。
「ザザムシ」です。

ザザムシとは
長野県伊那地方・天竜川にて冬場に捕獲される
食用のトビケラ・カワゲラの幼虫を指すことばですが
彼らは冷たく澄んだ低有機物の川に住むため、
下水由来の水から養殖できるとは到底思えません。

 なぜでしょうか。なぜザザムシ養殖に適した水がどこからきたのでしょうか。

ここで仮説です。
「光」はシャドーへの兵糧攻めを行いはじめた


シャドーは組織的にスパイ活動を行なっており、
「光」にとっては脅威です。
また、出入り口は封鎖されており、互いに人員を送り込むこともできません。

そのためシャドーへ供給していた下水から
熱と有機物を除去することで
シャドーの熱源と食料源を奪おうとしたと思われます。

つまり、
ザザムシが住めるほど冷たく・有機物の少ない水が徐々に増えてきた
のでしょう。

低濃度の有機物を高濃度に集めることは困難です。
ゴキブリやネズミに与えるには多くの水を濃縮し、暖めなくてはいけません。
ザザムシでラットを育てるには
市場価格から類推して
更に1.6倍、一匹3万円の飼料代がかかってしまいます。

そのため
ザザムシの養殖はシャドーの食糧危機の前兆といえるのです。

シャドーがこのあとすぐに蜂起に踏み切ったのも、
ゴキブリ→ザザムシという食糧のやむを得ないシフトが原因と思われます。

ザザムシというマイナー食品が、
重要な戦争のきっかけとなった
、世にも珍しい作品といえるでしょう。

結論
手塚治虫作品でザザムシを養殖しだしたらヤバい。

以上
「火の鳥」の一コマから考えるザザムシ養殖でした。
以前 キバラヘリカメムシが美味しいと報告しましたが。

クヌギカメムシは一般的なカメムシ臭がします。


クヌギカメムシにはサジクヌギカメムシやヘラクヌギカメムシがいるようですが
生殖器の形を比較する必要があるため今回は見送ります。
というか味が違うと思えないので。。。

基本的に幼虫は成虫に比べ柔らかく、カメムシ類の場合はニオイがやさしく食べやすいのが特徴です。

クヌギカメムシ幼虫は見ためはキツイですが、多分美味しいでしょう。

味見
茹でてしまえばカメムシ臭はさほど気にならない。キバラヘリカメムシ幼虫のような旨味のある柔らかい体で調理法によってはもっとおいしく頂けそう。

半翅目は種によって全く味わいが違うので、
勉強しがいがあります。次はオオクモヘリカメムシを狙いたいですね。
キバラヘリカメムシと同様に青りんごの香りがするそうです。

Mushi_Kurotowa
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プロフィール
HN:
Mushikurotowa 
性別:
男性
趣味:
昆虫料理開発
自己紹介:
NPO法人食用昆虫科学研究会 理事長
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2008年「なぜ昆虫に食欲がわかないのか」研究を開始
食べたらおいしかったので「昆虫食で世界を救う方法とは」に変更。
昆虫の味の記載から、昆虫の特性を活かしたレシピの開発、イベント出展、昆虫食アート展覧会「昆虫食展」まで、
様々な分野の専門家との協力により、新しい食文化としての昆虫食再興を目指す。

2015年 神戸大学農学研究科博士後期課程単位取得退学
テーマは「昆虫バイオマスの農業利用へむけたトノサマバッタの生理生態学的解析」
2018年よりラオスでの昆虫食を含めた栄養改善プログラムに専門家として参加
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