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ブドウスカシクロバ Illiberis tenuisの幼虫が
昨年ブドウスズメがいた所に発生していたので採ってきました。
逆に今年はブドウスズメが見られません。

昆虫は地球上の半数の種を占めることから、
その種の多さが注目されていますが、
「種」の概念自体が我々哺乳類と単純比較できないような気がします。
昨年他の昆虫がいたところに、今年は別の昆虫がいる。
種は異なりますが、「昆虫群としての戦略」が成功していると言えそうです。

この時、このブドウにありつく可能性を高める進化は
どの生物も繰り返してきたことですが、それでも様々な偶然に左右されます。
どうがんばっても「毎年単一の種が同じ場所に生息し、同じ物を食べる」
ことはものすごいエネルギーが必要です。
毎年少しだけ違う条件の中で、確実に「ここのブドウを食べて成長する昆虫がいる」
というのは昆虫の多様性とゆる〜い(競争を含む)連帯のお陰ではないかと思います。

さて
採集したときはこんな黄色なのですが、


前蛹になるとこんな色に。



ラズベリーですね。

とても美味しそうです。

味見
予想を大きく裏切り、
苦味があり味が悪い。
ブドウスズメの方がだいぶおいしい。
前蛹になっても苦味がのこっており、あじわいも薄く微妙

見ためだけジューシーで酸っぱそうでも、味は簡単には似てくれないようです。
残念。ブドウスズメ戻ってきてほしい。

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美しく大きいヤママユガ科幼虫であるオナガミズアオの二回目。
前回終齢幼虫を味見したのですが、
今回は繭を作る寸前の前蛹を味見しました。



繭を作る際には体のグリーンがなくなり、茶色っぽくなります。(写真右)

ところが、
繭を作るとグリーンに戻っているのです。


繭の糸の色はこの種の場合茶色ですので
繭用の色素が体表に出てしまい、このような変色が起こったのでしょう。

繭作成前の前蛹
ジグザグの硬い構造・絹糸腺がつよく発達しており、かみ切れない。
繭を作ってから食べたほうが良さそう。味は栗とコーンの間のような味。ハンノキの香りは残っていない。茹でるとピンク色になって美味しそう。トゲは余り気にならない。アクセントとして逆に良いかもと思い始めた。

繭作成後の前蛹
小さくなってしまうものの、絹糸腺が退化し口に残らない。色もうすいグリーンからオレンジで
キレイ。

ヤママユガ科は絹糸腺がつよく発達することが知られており、
繭糸の吐出前に茹でてしまうと線維化してしまい、口に残ってしまいます。

終齢幼虫の時にも絹糸腺は見られるのですが、繊維状のタンパク質はなく、ゆでてもプリプリのままです。
ということで

ヤママユガ科の食べごろは「前蛹(繭形成後)」

といえるでしょう。
繭も利用可能になればとても有効な資源利用につながりそうです。


さて。
オナガミズアオのトゲの食感が何かに似ていると思ったんです。
むむ。なにか食べたことがあるなと。

これでした。

そうです。ウナギの小骨です。

今回はウナギ風に蒲焼にして食べてみました。
皮面は強火で一気にカリカリに(長くじっくり焼くと硬くなります。)
背開きにしてタレで頂く。大変美味しい精のつく食材といえそうです。

これからの昆虫食の可能性の一つとして、代用食が挙げられます。
パスタで有名な日清製粉・オーマイも、
米の代用品である粒状パスタの製造を始めたことからスタートしました。

オナガミズアオもハンノキという木本のバイオマスを
ヒトの食糧に適した形に変えるので、
環境負荷の高い、例えば魚粉を使った養殖肉食魚の代用になれば
それだけで多くの漁業資源が守られることでしょう。


最も守るべき食糧資源としてウナギが注目されています。

稚魚を漁獲せねばならず、養殖に1年以上かかり
魚粉も大量に使用し、廃棄物も多く出す。
稚魚(シラスウナギ)の漁獲を見れば一目瞭然。
1960年台には200トンあったのに今年は5トン。
もはや食べている場合ではありません。

味だけでいうと、ハチノコが最も近いでしょう。
味香り戦略研究所
の協力のもと、味覚センサーでハチノコのボイルとウナギの白焼きを
比較した所、見事に一致したのです(内山昭一 著 昆虫食入門より)

ところが、ハチノコはウナギと同様に
巣や女王蜂をとってきて半養殖するしかありません。
最高級とされるクロスズメバチは近年数が減っており
ウナギの代用品として使ってしまうと同様の悲劇が起こる可能性があります。

そこで、
養殖技術が確立していて成長が速く、植食性のオナガミズアオに
代用ができないか、と思い作ってみました。

食べてみると非常に美味しく、脂質の旨味がウナギを彷彿とさせます。
ウナギ保護の第一歩として、養殖昆虫による代用メニューを考えるのはいかがでしょうか。

幸いなことに、
ウナギの消費量がピークを迎える土用の丑の日は夏です。
加温しなくてもすくすくと昆虫が育つ絶好の昆虫食シーズン。

ぜひ(コマユバチに注意して)チャレンジしてみて下さい。











オナガミズアオを飼育しておよそ一ヶ月、

オナガミズアオとよく似た種、オオミズアオとを食べ比べてみたい、
と思うようになりました。

両者の成虫はよく似ており、いくつかの同定ポイントを比べても
個体差が大きく、確定的なことはいいにくいとのことです。

一方幼虫はトゲの基部に黒い部分があるのがオナガミズアオ、

黄色しかないのがオオミズアオと、比較的見分けは簡単です。

そんな中、栗の木についたオオミズアオ幼虫を見つけました。
「コレでオナガミズアオとオオミズアオを食べ比べることが出来る!」

喜んだ私は栗の枝とともにオオミズアオを持ち帰りました。
ところが、
栗の葉が気に入らないのか、
殆ど食べません。

すると数日後
何やら白いモヤモヤが出てきたのです。
コマユバチでした。

コマユバチは寄生蜂の一種で、鱗翅目の幼虫に卵を産み付け
産み付けられた幼虫は生きたまま無数のハチノコに食べられ、ハチノコが十分に育つまで絶命しない

というなんともホラーなハチなのです。

プツプツとハチが脱出した跡が残り、
大変痛々しい姿のオオミズアオ。

モサモサとこれでもか!という勢いで脱出して繭をつくるコマユバチ。

虫嫌いの方にはショッキングすぎる光景です。
虫好きの方にもかわいい幼虫の痛々しい姿は胸が痛みます。

養殖しているオナガミズアオへの寄生するのを防ぐため、
速やかに全てのコマユバチを駆除する必要がありました。

さて
私はどうするべきか

そうですね。
茹でて味見ですね。

オオミズアオ幼虫
しっかりとした木の香りがする。オナガミズアオと異なる香り。やはり食草によって昆虫の香りは影響され、木本の方がその影響が大きそう。何も食べていなかったので消化管内にはほとんど食草はなく、肉薄な印象。内部にもまだまだコマユバチが残っており、とてもかわいそう。

コマユバチ幼虫
茹でるとカタめ。味はほとんどわからず、固めのインディカ米のような印象。
鱗翅目の終齢幼虫はとても強度の高い外皮を持ち、髪切るのが困難なほど。
その中から脱出するので、けっこう固いのでは。固いことで寄主の体液を漏らさずに
脱出することができるのでは。。。養殖昆虫の敵ながらあっぱれ。

コマユバチ繭
繭になってしまったものは口に入れても繭の強度が高すぎて
全く噛みきれず、あじわうことができなかった。



大変ショッキングですが、この後にオオミズアオの写真を掲載します。
見たい方のみ「驚愕のオオミズアオ」をクリックして下さい。

前回食べたヒメヤママユ幼虫を 別の方からもう1頭頂いたので、前蛹にしてからたべてみることに。


荒い目の繭は「スカシダワラ」と呼ばれ、ヤママユガやクスサンにも見られる
美しい繭です。
内部に縮まった前蛹がはっきりと透けて見えます。



取り出してみると繭も前蛹も美しいですね。

味見
幼虫に比べ香ばしさが増している。毛が密になった分食感は好みが分かれるが、口に残るような硬さはなく美味しく食べられる。表面がツルツルの昆虫に比べ味の絡みが良いと考えられるので、天ぷらやあんかけとして食べたい。

ヒメヤママユは
密でありながら柔らかく独特の触感をもつので、他の食材での代替が効きません。
食用として人気になれば価格の高騰もありうる美味しい昆虫といえるでしょう。

5月31日に見つけたオナガミズアオ Actias gnoma gnoma

の♀から生まれた卵が

6月8日に孵化して


立派な終齢幼虫になりました。モヒカンにしたいぐらい。


(竹谷隆之の仕事展より 「漁師の角度」青木フィギュア使用)

オナガミズアオを初め鱗翅目は食べ残すこと無く綺麗に葉を食べます。
とても紳士的な食事風景です。



音楽をさしかえましたが
GONTITI Boy's Song が好きです。

それではいつものように茹でてポン酢で紳士的にいただきましょう。

味見
ハンノキのさわやかな香りがあり、他のヤママユガより特徴的で楽しい。トゲが口に残るので、気になる場合は毛抜きで処理したほうが良さそう。絹糸腺は発達しているが、やわらかく繊維質ではないため問題なく食べられる。食後はウーロン茶のようなわずかな渋みがありすっきりする。フン茶の渋みと同様で好ましい渋み。
トゲが残念だが大型で味わい深い。


Mushi_Kurotowa
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プロフィール
HN:
Mushikurotowa 
性別:
男性
趣味:
昆虫料理開発
自己紹介:
NPO法人食用昆虫科学研究会 理事長
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2008年「なぜ昆虫に食欲がわかないのか」研究を開始
食べたらおいしかったので「昆虫食で世界を救う方法とは」に変更。
昆虫の味の記載から、昆虫の特性を活かしたレシピの開発、イベント出展、昆虫食アート展覧会「昆虫食展」まで、
様々な分野の専門家との協力により、新しい食文化としての昆虫食再興を目指す。

2015年 神戸大学農学研究科博士後期課程単位取得退学
テーマは「昆虫バイオマスの農業利用へむけたトノサマバッタの生理生態学的解析」
2018年よりラオスでの昆虫食を含めた栄養改善プログラムに専門家として参加
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