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とうとう200記事を突破しました。
長らくのご愛顧ありがとうございます。
突然ですが
パシフィック・リム見てきました。
初っ端のKAIJUが、
昭和ガメラの怪獣ギロンをオマージュした「ナイフヘッド」
灯台を尻尾で壊すという定番のゴジラ節炸裂。
余分な肉がブルルンと揺れる重量感、
煽りのアングル、周囲の構造物を利用したプロレス等、
特撮好きなら5分に一回の頻度で繰り出されるオマージュに
ニヤニヤしっぱなしだと思います。
CGを使いながら
特撮への愛があふれていて、これらのオマージュを
「パクリ」と非難するヒトはいないでしょう。
むしろ日本がこの映像を作るべきだった。と思います。
メキシコ生まれの特撮マニア、ギルレモ デル・トロ監督が
200億ドルの制作費をぶっこんでつくった壮大な二次創作、
ともいえるかもしれません。
さて。
昨年に
「特撮博物館」という催しが行われていたのをご存知でしょうか。
円谷英二監督らが一時代を築いた「特殊撮影」=特撮は
ミニチュアや逆回しなどの
人物描写では使わない特殊な撮影技術を駆使し
実物ではありえない情景を映し出す撮影のことです。
特に爆発やミニチュア撮影を駆使したSF作品は
大画面の映画との相性もよく、瞬く間にテレビにも進出
昭和の特撮技術は愛され、磨かれてきました。
ところが、CG技術が導入され
今回のパシフィック・リムのように
「予算さえあれば」特撮以上の特撮らしい映像が撮れる
となると、
残念ながら特殊撮影は
一線を退かなくてはなりません。
数多くの一線を退いた技術は
その経済的価値は減じたものの
洗練度は眼を見張るものがあります。
特撮、その技術を使って
何か面白いことが出来ないか。
CGでなく、小さい実物を
巨大に見せることでしか見せられない映像とは何か
一特撮ファンとして常々思ってきました。
と考えている時に、
こんなワークショップに当選してしまいました。
この度は、株式会社マーブリング・ファインアーツで募集した
特撮博物館特別イベント
「ミニチュア特撮課外講座 -ミニチュア特撮からミニチュアエフェクトへ-」へ
ご応募いただきありがとうございます。
厳正なる抽選の結果、ご当選されました。当日のご案内をお送りします。
この中で「ミニチュア撮影」の
カメラ側に必要な要素は
「広角・パンフォーカス」視野を広く、近くから遠くまでピントが合っていること。
カメラの受光量を絞るので、ライトがめちゃめちゃ必要。
「高速撮影・低速再生」 視野内の自然落下は角速度でいうと
小さいものは速く、大きい物は遅く見える。
「アオリ」 目線が1.5mとすると、1/10ミニチュアでは15cm,1/100ミニチュアで
は1.5cmの位置にカメラを置かなくてはいけない。そのため
「アオリ」という低いカメラ位置から全体を見上げる構図をとる
小さいレンズを使うか、地面より低い位置にカメラ本体を置く必要
がある。
とのこと。
見てみましょう。
ここで使われたのは
虫の目レンズ、という
写真家・栗林慧さんが内視鏡を元に開発した
広角パン・フォーカスアオリ・マイクロレンズです。
これをつかうとミニチュア撮影が
アマチュアの技術で十分にできるとのこと。
更に、
フィルムでパン・フォーカスを得るためには
はセットが溶けるほどの光量に
絞りをかけまくることが必要だったのですが
カメラがデジタル化して
iso感度が向上したことから
自然光程度の光でも
パン・フォーカスでの撮影ができるようになったとのこと。
「いつ特撮やるの。今でしょ」
ということでした。
では、
「ミニチュア撮影に虫の目レンズを使うことが出来る」
のであれば逆に、
虫の眼レンズで撮影した虫の映像は特撮である
ともいえそうです。
いかがでしょう。
「蟲特撮」
こんな感じ
この「特撮」には
円谷式のあるテクニックを使ってみています。
「カメラと被写体を90度曲げる」
というものです。
本来は
模型飛行機を吊るす透明の糸、テグスが見えにくくなるよう
飛行機の「鼻」をつるすことで
画面上では飛行機の上部にテグスが見えない、
という裏ワザでしたが
今回は昆虫が正の走光性、負の走地性をもつことを利用して
カメラに平行に留まってもらう目的で傾けました。
実は
これを地面でやると、虫はあらぬ方向に向いてしまい。
ピントボケボケの映像しかとれず、
麻酔をかけると、ダラっとした生気のない印象になってしまいます。
ということで
昆虫の生態利用し、更に特撮技術をつかった
「蟲特撮」ってやってみたいですね。
簡単なものですと虫パニック映画とかで
使われていたのですが、
もっと虫を巨大に演出するような。。。。。
何か考えたいですね。
プロジェクションマッピングで
巨大な虫を出現させるとか。。。。
やれることは多そうです。
もちろんエンディングは
「撮影に使用した食材は全てスタッフが美味しくいただきました」
と書きたいですね。
今回使ったのは
そんな特撮を気軽に楽しめる
学研 大人の科学
「特撮USBカメラ」
パソコンと繋ぐ必要はありますが
けっこう楽しい映像がとれます。
メレ山メレ子さんも
つかってるあの!特撮カメラです。
長らくのご愛顧ありがとうございます。
突然ですが
パシフィック・リム見てきました。
初っ端のKAIJUが、
昭和ガメラの怪獣ギロンをオマージュした「ナイフヘッド」
灯台を尻尾で壊すという定番のゴジラ節炸裂。
余分な肉がブルルンと揺れる重量感、
煽りのアングル、周囲の構造物を利用したプロレス等、
特撮好きなら5分に一回の頻度で繰り出されるオマージュに
ニヤニヤしっぱなしだと思います。
CGを使いながら
特撮への愛があふれていて、これらのオマージュを
「パクリ」と非難するヒトはいないでしょう。
むしろ日本がこの映像を作るべきだった。と思います。
メキシコ生まれの特撮マニア、ギルレモ デル・トロ監督が
200億ドルの制作費をぶっこんでつくった壮大な二次創作、
ともいえるかもしれません。
さて。
昨年に
「特撮博物館」という催しが行われていたのをご存知でしょうか。
円谷英二監督らが一時代を築いた「特殊撮影」=特撮は
ミニチュアや逆回しなどの
人物描写では使わない特殊な撮影技術を駆使し
実物ではありえない情景を映し出す撮影のことです。
特に爆発やミニチュア撮影を駆使したSF作品は
大画面の映画との相性もよく、瞬く間にテレビにも進出
昭和の特撮技術は愛され、磨かれてきました。
ところが、CG技術が導入され
今回のパシフィック・リムのように
「予算さえあれば」特撮以上の特撮らしい映像が撮れる
となると、
残念ながら特殊撮影は
一線を退かなくてはなりません。
数多くの一線を退いた技術は
その経済的価値は減じたものの
洗練度は眼を見張るものがあります。
特撮、その技術を使って
何か面白いことが出来ないか。
CGでなく、小さい実物を
巨大に見せることでしか見せられない映像とは何か
一特撮ファンとして常々思ってきました。
と考えている時に、
こんなワークショップに当選してしまいました。
この度は、株式会社マーブリング・ファインアーツで募集した
特撮博物館特別イベント
「ミニチュア特撮課外講座 -ミニチュア特撮からミニチュアエフェクトへ-」へ
ご応募いただきありがとうございます。
厳正なる抽選の結果、ご当選されました。当日のご案内をお送りします。
この中で「ミニチュア撮影」の
カメラ側に必要な要素は
「広角・パンフォーカス」視野を広く、近くから遠くまでピントが合っていること。
カメラの受光量を絞るので、ライトがめちゃめちゃ必要。
「高速撮影・低速再生」 視野内の自然落下は角速度でいうと
小さいものは速く、大きい物は遅く見える。
「アオリ」 目線が1.5mとすると、1/10ミニチュアでは15cm,1/100ミニチュアで
は1.5cmの位置にカメラを置かなくてはいけない。そのため
「アオリ」という低いカメラ位置から全体を見上げる構図をとる
小さいレンズを使うか、地面より低い位置にカメラ本体を置く必要
がある。
とのこと。
見てみましょう。
ここで使われたのは
虫の目レンズ、という
写真家・栗林慧さんが内視鏡を元に開発した
広角パン・フォーカスアオリ・マイクロレンズです。
これをつかうとミニチュア撮影が
アマチュアの技術で十分にできるとのこと。
更に、
フィルムでパン・フォーカスを得るためには
はセットが溶けるほどの光量に
絞りをかけまくることが必要だったのですが
カメラがデジタル化して
iso感度が向上したことから
自然光程度の光でも
パン・フォーカスでの撮影ができるようになったとのこと。
「いつ特撮やるの。今でしょ」
ということでした。
では、
「ミニチュア撮影に虫の目レンズを使うことが出来る」
のであれば逆に、
虫の眼レンズで撮影した虫の映像は特撮である
ともいえそうです。
いかがでしょう。
「蟲特撮」
こんな感じ
この「特撮」には
円谷式のあるテクニックを使ってみています。
「カメラと被写体を90度曲げる」
というものです。
本来は
模型飛行機を吊るす透明の糸、テグスが見えにくくなるよう
飛行機の「鼻」をつるすことで
画面上では飛行機の上部にテグスが見えない、
という裏ワザでしたが
今回は昆虫が正の走光性、負の走地性をもつことを利用して
カメラに平行に留まってもらう目的で傾けました。
実は
これを地面でやると、虫はあらぬ方向に向いてしまい。
ピントボケボケの映像しかとれず、
麻酔をかけると、ダラっとした生気のない印象になってしまいます。
ということで
昆虫の生態利用し、更に特撮技術をつかった
「蟲特撮」ってやってみたいですね。
簡単なものですと虫パニック映画とかで
使われていたのですが、
もっと虫を巨大に演出するような。。。。。
何か考えたいですね。
プロジェクションマッピングで
巨大な虫を出現させるとか。。。。
やれることは多そうです。
もちろんエンディングは
「撮影に使用した食材は全てスタッフが美味しくいただきました」
と書きたいですね。
今回使ったのは
そんな特撮を気軽に楽しめる
学研 大人の科学
「特撮USBカメラ」
パソコンと繋ぐ必要はありますが
けっこう楽しい映像がとれます。
メレ山メレ子さんも
つかってるあの!特撮カメラです。
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直翅目は
甲虫類のように固い外皮はなく
成長も早いものが多く
世界中で多くの種が食べられています。
このブログでも数多くの直翅目を食べてきました。
私の研究相手の
トノサマバッタ
を始め
ヒゲマダライナゴ
ショウリョウバッタ
コバネイナゴ
ツチイナゴ
タイワンツチイナゴ
クルマバッタ、クルマバッタモドキ
オンブバッタ ショウリョウバッタモドキ
コロギス
キリギリス クツワムシ
エンマコオロギ アオマツムシ スズムシ サトクダマキモドキ
ヤブキリ クサキリ
クビキリギス
ヒメクサキリ
マダラカマドウマ
ヨーロッパイエコオロギ フタホシコオロギ
ミツカドコオロギ
そして、
今回登場 ケラ Gryllotalpa orientalis。
しばらく会えなかったのですが、
昔から大好きな昆虫です。
Mole crkicket の英名の通り、
モグラのような生態で、土を掘りながら昆虫や
ミミズから植物の根まで
なんでも食べ、この重そうな外見に反して
泳いだり空も飛べる万能選手です。
多芸だけれどどれも一流でない様子を
「おけらの七つ芸」
と言われることもあり、ちょっとかわいそうですが。
タイでは灯火採集で多くのケラが食べられていますが
残念ながら養殖には至っておらず、研究用の飼育継代も
なかなか難しいのが現状のようです。
さて 写真を見てみましょう。
かわいい。
頭をすっぽり覆うように張り出した前胸背板。
力強く土をかき分ける前肢
コオロギに似たふくよかさの腹部。
直翅目にしては貧弱な後肢。
丸く輝く瞳(複眼)
前胸と中胸の間がフレキシブルに動くのも
愛嬌が増す感じがします
直翅目ではコロギスとならぶ可愛らしさではないでしょうか。
子犬ぐらいの大きさでフェレットの飼育ケージで
飼えたらさぞ大人気になるでしょう。
ならないですか。そうですか。
さて
大事に味見いたしましょう。
味見
やっぱりうまいなぁ。英語名 Mole cricket(モグラコオロギ)の名に恥じないコオロギ味。甘みが特に強く、濃厚なコクがあり高カロリーな感じ。茹でても赤くならないのでバッタとは違う茶色色素がありそう。
このケラ
日本には小型のものしか分布していないのですが
熱帯のものはもっと大きく
フロリダ南部には害虫として侵入し
農作物に被害をもたらしています。
天敵の不在で増えすぎたケラが
植物の根を食べてしまうのです。
家畜用牧草地へ600万ドルの被害とのこと。
ここで活躍しているのが「サウンドトラップ」
オスの求愛歌を流すことで
交尾シーズンのメスを効率的に誘引し
産卵を妨害するものです。
こんな子供用プールに
バケツを付けたような簡素なもの
結果は絶大です。17,000匹のケラが一晩で採れたとのこと。
もう採れたてのエビ
にしか見えませんね。
伝染病の媒介ではなく、食害が問題になる場合
対策の要は「卵を産ませないこと」です。
そのためメスの対策が重要になります。
同様の目的で
不妊オスの放虫や、合成フェロモンによる
交尾撹乱などが行われる場合もあります。
もちろんサウンドトラップにも長所と短所があり
交尾器の春と秋の二回しかとれないので
落とし穴式トラップとも併用するそうです。
生態をうまく利用した収穫方法として
参考にしたいところです。
ケラをビニールハウスで養殖し、食べごろのメスだけ
求愛歌で集めて収穫、というのもいいかもしれません。
甲虫類のように固い外皮はなく
成長も早いものが多く
世界中で多くの種が食べられています。
このブログでも数多くの直翅目を食べてきました。
私の研究相手の
トノサマバッタ
を始め
ヒゲマダライナゴ
ショウリョウバッタ
コバネイナゴ
ツチイナゴ
タイワンツチイナゴ
クルマバッタ、クルマバッタモドキ
オンブバッタ ショウリョウバッタモドキ
コロギス
キリギリス クツワムシ
エンマコオロギ アオマツムシ スズムシ サトクダマキモドキ
ヤブキリ クサキリ
クビキリギス
ヒメクサキリ
マダラカマドウマ
ヨーロッパイエコオロギ フタホシコオロギ
ミツカドコオロギ
そして、
今回登場 ケラ Gryllotalpa orientalis。
しばらく会えなかったのですが、
昔から大好きな昆虫です。
Mole crkicket の英名の通り、
モグラのような生態で、土を掘りながら昆虫や
ミミズから植物の根まで
なんでも食べ、この重そうな外見に反して
泳いだり空も飛べる万能選手です。
多芸だけれどどれも一流でない様子を
「おけらの七つ芸」
と言われることもあり、ちょっとかわいそうですが。
タイでは灯火採集で多くのケラが食べられていますが
残念ながら養殖には至っておらず、研究用の飼育継代も
なかなか難しいのが現状のようです。
さて 写真を見てみましょう。
かわいい。
頭をすっぽり覆うように張り出した前胸背板。
力強く土をかき分ける前肢
コオロギに似たふくよかさの腹部。
直翅目にしては貧弱な後肢。
丸く輝く瞳(複眼)
前胸と中胸の間がフレキシブルに動くのも
愛嬌が増す感じがします
直翅目ではコロギスとならぶ可愛らしさではないでしょうか。
子犬ぐらいの大きさでフェレットの飼育ケージで
飼えたらさぞ大人気になるでしょう。
ならないですか。そうですか。
さて
大事に味見いたしましょう。
味見
やっぱりうまいなぁ。英語名 Mole cricket(モグラコオロギ)の名に恥じないコオロギ味。甘みが特に強く、濃厚なコクがあり高カロリーな感じ。茹でても赤くならないのでバッタとは違う茶色色素がありそう。
このケラ
日本には小型のものしか分布していないのですが
熱帯のものはもっと大きく
フロリダ南部には害虫として侵入し
農作物に被害をもたらしています。
天敵の不在で増えすぎたケラが
植物の根を食べてしまうのです。
家畜用牧草地へ600万ドルの被害とのこと。
ここで活躍しているのが「サウンドトラップ」
オスの求愛歌を流すことで
交尾シーズンのメスを効率的に誘引し
産卵を妨害するものです。
こんな子供用プールに
バケツを付けたような簡素なもの
結果は絶大です。17,000匹のケラが一晩で採れたとのこと。
もう採れたてのエビ
にしか見えませんね。
伝染病の媒介ではなく、食害が問題になる場合
対策の要は「卵を産ませないこと」です。
そのためメスの対策が重要になります。
同様の目的で
不妊オスの放虫や、合成フェロモンによる
交尾撹乱などが行われる場合もあります。
もちろんサウンドトラップにも長所と短所があり
交尾器の春と秋の二回しかとれないので
落とし穴式トラップとも併用するそうです。
生態をうまく利用した収穫方法として
参考にしたいところです。
ケラをビニールハウスで養殖し、食べごろのメスだけ
求愛歌で集めて収穫、というのもいいかもしれません。
私が以前から注目している研究者の一人、
クマムシ博士こと堀川大樹博士の有名ブログ
「むしブロ」でご紹介いただきました。
注目していたと思ったら逆に見られていた、という
パパラッチが捕まったような恥ずかしさと、
褒められていることへの照れくささがあります。
光栄です。
残念ながら
まだ直接お会いしたことはないのですが
慶応大学のクマムシ研究者鈴木先生や
ユスリカの記事でお世話になった
奥田先生から「堀川博士はすごい」という噂は聞いており
ユニークな形で日本の学術界を
盛り上げるパワーを持っている方だと思います。
日本初(?)の研究者発ゆるキャラ「クマムシさん」
クマムシのエサ・クロレラ代になるクラウドファウンディング
そして有料メルマガ などなど
「お前(アカデミア)に雇われんでもおれはフリーでやってけるんや!」
という頑固で気骨ある博士が巷にあふれると面白いですね。
研究の独立性、多様性を確保するという点では、
研究者自らが、研究の一部を
一般に公開することで研究費を得る。
という前例を作ることはとても重要でしょう。
実は、私にもクマムシの思い出があります。
クマムシはとてもかわいらしく、魅力的だったので
私も高校生3年生の自由研究(やるかどうかも自由 笑)でテーマとしました。
その中で印象に残っているのは
「乾眠クマムシは100%エタノールに耐える。
乾眠クマムシに水を加えると戻る。
ではエタノールと水の混合物を乾眠クマムシに与えると?」
という課題。
通常クマムシはエタノールには耐えられないので
乾眠クマムシがエタノールと水の混合物に触れた場合、
クマムシは乾眠を解除すべきではない。といえます。
なので、クマムシが乾眠によって
エタノール耐性を進化的に獲得したのであれば、
エタノールと水の混合物にも耐性がある=水に戻らない
可能性があると考えました。
野生のまともに同定していないクマムシをつかって
5匹ずつ、
濃度を10%エタノールから90%エタノールまで
段階的に用意して実験しました。
顕微鏡写真は理科室のテレビ投影機能付き顕微鏡を借り、
そのブラウン管テレビ画像を使い捨てカメラで撮り、
さらにそのフィルムを写真屋さんで
デジタルデータ化してもらう、という
もはや何がなんだか分からない方法で
画像データを作っていました。
あらい…アラすぎる…
当時こんなものも。紙粘土クマムシ。
消化管が透けているのを見誤って、
背部がブロック状に分かれていると思いこんで作ったものです。
イグアノドンの間違い復元図のようで今見ると微笑ましいですね。
実家にそのまとめがあるので
記憶だよりのため正確性には欠けますが
結果は悲しいものでした。
エタノールと水の混合物を与えられた乾眠クマムシは、
いずれの濃度においても力なく膨らみ
そして死んでいったのです。
100%エタノールを加え、
しっかり乾かしてから水に戻したものと
エタノールを加えずに水に戻したものは、
いずれも元気に動き出しましたので
クマムシは外界の状態に影響されずに
水さえあれば戻ってしまうと結論づけました。
エタノール耐性は
おそらく乾眠能力に付随して得られたものでしょう。
エタノール自体は自然界ではほとんど水との混合物で存在するため、
乾眠クマムシの100%エタノール耐性が
彼らの実生活で役に立つことはなかったのではないでしょうか。
さて
クマムシの思い出はこれぐらいにして
クマムシ博士からは「研究者」として紹介されたものの
このブログが「研究であるか」
について、
自分の見解を書き留めておきます。。
「当ブログは学術研究未満である」
です
味の評価はあくまで私の主観であり、
統計的有意差も再現性もとれていない。
紹介するデータも有意差のとれるものを扱っておらず
ただ測定した生データを披露するのみ。
なぜかというと、
「未発表の論文用データは公開すべきでない」
という研究者の慣例に従ったこと
そして
「いろんな方から間口を広く主観データをもっと集めたい。」
というブログならではの目的があったからです。
なので、味センサーや特殊な実験装置は一切使わず
(フリーズドライ装置だけは使いましたが)
家庭用品だけで調理し、自分の舌だけで味わっています。
間口を広げたおかげか、
某有名まとめサイトにも紹介を頂き、最近は
コメントも増え、とうとう昆虫食レポートまで頂けるようになりました。
「◯◯という木に××という昆虫がいて△▽して食べたら□□でしたよ!」
とか
「テメー☆☆がうまいとか言ってたけどクソマズじゃねえか!」
このようなコメントが
記事の末尾に溢れかえる日も近いでしょう。
そして、
「未満」のこの研究を
学問として成立させるためには
ある昆虫について
昆虫学をベースに飼育繁殖から始め
味や栄養を定量的に評価し
健康につながる微量元素や
独自の生態を利用した養殖につなげ、
それを使ったメニューを考案し振る舞う
そんな
ディープな「昆虫食学」で
学位をとる、そんな後輩が現れるのを期待します。
私は残念ながら
学生でいられる予算と期間が
そろそろ限界を迎えるため、ボスの指導のもと、
バッタの生理生態学を中心とした
「応用昆虫学」で学位を狙っていきます。
悔しいですが
バッタ博士やクマムシ博士のような
いい論文をきちんとまとめることが出来ておらず
今のところ、
職業研究者に至るには到底業績が足りません。
ただ、
研究者のポストを得られなくとも
昆虫食の研究は続けますし、
幸いなことに昆虫食研究には
高額の予算を必要としません。
野良研究者、兼業研究者としてでも
続けていくつもりです。
嬉しい事に、食用昆虫科学研究会には
将来有望な後輩や仲間が多くいますので
私が直接サポートすることで
昆虫食学を修了できるメンバーも
できることでしょう。
近い将来
応用昆虫学の一分野として
「昆虫食学」が出来る日を夢見ています。
クマムシ博士こと堀川大樹博士の有名ブログ
「むしブロ」でご紹介いただきました。
注目していたと思ったら逆に見られていた、という
パパラッチが捕まったような恥ずかしさと、
褒められていることへの照れくささがあります。
光栄です。
残念ながら
まだ直接お会いしたことはないのですが
慶応大学のクマムシ研究者鈴木先生や
ユスリカの記事でお世話になった
奥田先生から「堀川博士はすごい」という噂は聞いており
ユニークな形で日本の学術界を
盛り上げるパワーを持っている方だと思います。
日本初(?)の研究者発ゆるキャラ「クマムシさん」
クマムシのエサ・クロレラ代になるクラウドファウンディング
そして有料メルマガ などなど
「お前(アカデミア)に雇われんでもおれはフリーでやってけるんや!」
という頑固で気骨ある博士が巷にあふれると面白いですね。
研究の独立性、多様性を確保するという点では、
研究者自らが、研究の一部を
一般に公開することで研究費を得る。
という前例を作ることはとても重要でしょう。
実は、私にもクマムシの思い出があります。
クマムシはとてもかわいらしく、魅力的だったので
私も高校生3年生の自由研究(やるかどうかも自由 笑)でテーマとしました。
その中で印象に残っているのは
「乾眠クマムシは100%エタノールに耐える。
乾眠クマムシに水を加えると戻る。
ではエタノールと水の混合物を乾眠クマムシに与えると?」
という課題。
通常クマムシはエタノールには耐えられないので
乾眠クマムシがエタノールと水の混合物に触れた場合、
クマムシは乾眠を解除すべきではない。といえます。
なので、クマムシが乾眠によって
エタノール耐性を進化的に獲得したのであれば、
エタノールと水の混合物にも耐性がある=水に戻らない
可能性があると考えました。
野生のまともに同定していないクマムシをつかって
5匹ずつ、
濃度を10%エタノールから90%エタノールまで
段階的に用意して実験しました。
顕微鏡写真は理科室のテレビ投影機能付き顕微鏡を借り、
そのブラウン管テレビ画像を使い捨てカメラで撮り、
さらにそのフィルムを写真屋さんで
デジタルデータ化してもらう、という
もはや何がなんだか分からない方法で
画像データを作っていました。
あらい…アラすぎる…
当時こんなものも。紙粘土クマムシ。
消化管が透けているのを見誤って、
背部がブロック状に分かれていると思いこんで作ったものです。
イグアノドンの間違い復元図のようで今見ると微笑ましいですね。
実家にそのまとめがあるので
記憶だよりのため正確性には欠けますが
結果は悲しいものでした。
エタノールと水の混合物を与えられた乾眠クマムシは、
いずれの濃度においても力なく膨らみ
そして死んでいったのです。
100%エタノールを加え、
しっかり乾かしてから水に戻したものと
エタノールを加えずに水に戻したものは、
いずれも元気に動き出しましたので
クマムシは外界の状態に影響されずに
水さえあれば戻ってしまうと結論づけました。
エタノール耐性は
おそらく乾眠能力に付随して得られたものでしょう。
エタノール自体は自然界ではほとんど水との混合物で存在するため、
乾眠クマムシの100%エタノール耐性が
彼らの実生活で役に立つことはなかったのではないでしょうか。
さて
クマムシの思い出はこれぐらいにして
クマムシ博士からは「研究者」として紹介されたものの
このブログが「研究であるか」
について、
自分の見解を書き留めておきます。。
「当ブログは学術研究未満である」
です
味の評価はあくまで私の主観であり、
統計的有意差も再現性もとれていない。
紹介するデータも有意差のとれるものを扱っておらず
ただ測定した生データを披露するのみ。
なぜかというと、
「未発表の論文用データは公開すべきでない」
という研究者の慣例に従ったこと
そして
「いろんな方から間口を広く主観データをもっと集めたい。」
というブログならではの目的があったからです。
なので、味センサーや特殊な実験装置は一切使わず
(フリーズドライ装置だけは使いましたが)
家庭用品だけで調理し、自分の舌だけで味わっています。
間口を広げたおかげか、
某有名まとめサイトにも紹介を頂き、最近は
コメントも増え、とうとう昆虫食レポートまで頂けるようになりました。
「◯◯という木に××という昆虫がいて△▽して食べたら□□でしたよ!」
とか
「テメー☆☆がうまいとか言ってたけどクソマズじゃねえか!」
このようなコメントが
記事の末尾に溢れかえる日も近いでしょう。
そして、
「未満」のこの研究を
学問として成立させるためには
ある昆虫について
昆虫学をベースに飼育繁殖から始め
味や栄養を定量的に評価し
健康につながる微量元素や
独自の生態を利用した養殖につなげ、
それを使ったメニューを考案し振る舞う
そんな
ディープな「昆虫食学」で
学位をとる、そんな後輩が現れるのを期待します。
私は残念ながら
学生でいられる予算と期間が
そろそろ限界を迎えるため、ボスの指導のもと、
バッタの生理生態学を中心とした
「応用昆虫学」で学位を狙っていきます。
悔しいですが
バッタ博士やクマムシ博士のような
いい論文をきちんとまとめることが出来ておらず
今のところ、
職業研究者に至るには到底業績が足りません。
ただ、
研究者のポストを得られなくとも
昆虫食の研究は続けますし、
幸いなことに昆虫食研究には
高額の予算を必要としません。
野良研究者、兼業研究者としてでも
続けていくつもりです。
嬉しい事に、食用昆虫科学研究会には
将来有望な後輩や仲間が多くいますので
私が直接サポートすることで
昆虫食学を修了できるメンバーも
できることでしょう。
近い将来
応用昆虫学の一分野として
「昆虫食学」が出来る日を夢見ています。
以前に
成虫ばかりの巣を駆除して味見したのですが
今回は幼虫とサナギです。
先日 昆虫料理研究会主催のバッタ会に行ってきました。
多摩川の河川敷でバッタを採り、その場で揚げて食べる野外イベント。
この時に常連の昆虫食エキスパートのご夫婦が
キイロスズメバチを差し入れてくださいました。
キイロスズメバチ (ケブカスズメバチ) Vespa simillima 幼虫
味見
オオスズメバチに比べやや臭みがつよい。脂質が多くコクが強い味。体内の未消化物の割合も大きいので蛹になってからがオススメ。といっても巣の駆除で出た幼虫はサナギまで育たないし、というジレンマ。ともかく美味しく食べましょう。
続いてサナギ 太陽光の下で見ると
生命力や美味しそうな感じが際立ちますね。
味見
やはりコチラのほうが美味しい。
すこしカニ味噌系の動物質が嫌気分解したような
香りがするので薬味や味噌と一緒に食べたいところ。
今回はその場で調理するのと
巣から出された幼虫やサナギはすぐに傷んでしまうので
この場で味見をしました。
調理に集中してこっちには目もくれない参加者のみなさま
私は
趣味の団体、昆虫料理研究会と
学術の団体、食用昆虫科学研究会の両方に参加しています。
見比べて気づくのは
「学問はある物事の楽しみ方についての一つの切り口にすぎない」
という点です。
もちろん学術的に価値のあることを見出すことは、
自身の主観を廃し
再現性のあるものを発見することですので
他人や将来にとって利用しやすい、意義深いことです。
そのために社会的リソースを使って保存すべきなのです。
ただ、
研究者本人は
そもそも楽しくてやっていることが
ほとんどだと思います。
その
「楽しみ方としての学問」は
多様な昆虫食の楽しみ方の一つの形でしかなく
他の楽しみ方を受け入れ、膨らませることで
より魅力を増すことでしょう。
この趣味の会で 今までに出会った方は
「食虫植物が好きで彼らと同じものを食べてみたくなった」
「週末イベントを検索していたらなんか辿り着いた」
「肉は気持ち悪くて食べられないが虫なら食えるから来た」
「バッタが採りたくてきた」
などなど
楽しみ方は多様です。
そう考えると
学問の世界を紹介する際に 論文を平易な文章に書き換えるだけではなく
研究者本人の人柄や情熱 研究対象の愛らしさなど
非学術的な魅力についてももっと採り入れたいところです。
もちろん研究者の本分は論文を書くことですので、
それを妨げるようなことがあってはなりません。
そういう意味で、昆虫料理研究会・食用昆虫科学研究会の
2つのグループは相互に関わりあいながら
総合的な昆虫食啓蒙グループとして
活動できれば、と思います。
その将来の形として羨望の眼差しを向けている団体があります。
「なにわホネホネ団」
です。
(HPより引用)
2003年に博物館の学芸員・アルバイトの3名から始まった「なにわホネホネ団」。2004年の「大阪自然史フェスティバル」に出展したのを契機に、募集もしていないのに「参加したい!」という人が集まりだしました。今では小学校前のコドモ団員から様々な職種のオトナ団員まで、ホネ好きが集まって骨格標本作りをしています。
本まで!
彼らは
学術・芸術を問わず骨格に興味のある人材を集め、
博物館に収蔵する標本の作成や
依頼に応じてメンバーを派遣し、様々なイベントを行っています。
学術をベースとしつつも、生物への畏敬の念を持って行うことで
多様な楽しみ方を模索することで
独自の魅力を発信しています。
まだ
ホネホネ団の方と直接お知り合いになれてはいないのですが
そのうち
コンタクト(あわよくば入団)を
してみたいと思います。
昆虫食への注目の高まりとともに、
我々の団体にもいくつか依頼をいただけるのですが
メンバー的にも、内容的にもなかなか期待に答えることが出来ていません。
ホネホネ団に学んで
しっかりした団体を作っていきたいですね。
まずは拠点となる博物館探しでしょうか。
成虫ばかりの巣を駆除して味見したのですが
今回は幼虫とサナギです。
先日 昆虫料理研究会主催のバッタ会に行ってきました。
多摩川の河川敷でバッタを採り、その場で揚げて食べる野外イベント。
この時に常連の昆虫食エキスパートのご夫婦が
キイロスズメバチを差し入れてくださいました。
キイロスズメバチ (ケブカスズメバチ) Vespa simillima 幼虫
味見
オオスズメバチに比べやや臭みがつよい。脂質が多くコクが強い味。体内の未消化物の割合も大きいので蛹になってからがオススメ。といっても巣の駆除で出た幼虫はサナギまで育たないし、というジレンマ。ともかく美味しく食べましょう。
続いてサナギ 太陽光の下で見ると
生命力や美味しそうな感じが際立ちますね。
味見
やはりコチラのほうが美味しい。
すこしカニ味噌系の動物質が嫌気分解したような
香りがするので薬味や味噌と一緒に食べたいところ。
今回はその場で調理するのと
巣から出された幼虫やサナギはすぐに傷んでしまうので
この場で味見をしました。
調理に集中してこっちには目もくれない参加者のみなさま
私は
趣味の団体、昆虫料理研究会と
学術の団体、食用昆虫科学研究会の両方に参加しています。
見比べて気づくのは
「学問はある物事の楽しみ方についての一つの切り口にすぎない」
という点です。
もちろん学術的に価値のあることを見出すことは、
自身の主観を廃し
再現性のあるものを発見することですので
他人や将来にとって利用しやすい、意義深いことです。
そのために社会的リソースを使って保存すべきなのです。
ただ、
研究者本人は
そもそも楽しくてやっていることが
ほとんどだと思います。
その
「楽しみ方としての学問」は
多様な昆虫食の楽しみ方の一つの形でしかなく
他の楽しみ方を受け入れ、膨らませることで
より魅力を増すことでしょう。
この趣味の会で 今までに出会った方は
「食虫植物が好きで彼らと同じものを食べてみたくなった」
「週末イベントを検索していたらなんか辿り着いた」
「肉は気持ち悪くて食べられないが虫なら食えるから来た」
「バッタが採りたくてきた」
などなど
楽しみ方は多様です。
そう考えると
学問の世界を紹介する際に 論文を平易な文章に書き換えるだけではなく
研究者本人の人柄や情熱 研究対象の愛らしさなど
非学術的な魅力についてももっと採り入れたいところです。
もちろん研究者の本分は論文を書くことですので、
それを妨げるようなことがあってはなりません。
そういう意味で、昆虫料理研究会・食用昆虫科学研究会の
2つのグループは相互に関わりあいながら
総合的な昆虫食啓蒙グループとして
活動できれば、と思います。
その将来の形として羨望の眼差しを向けている団体があります。
「なにわホネホネ団」
です。
(HPより引用)
2003年に博物館の学芸員・アルバイトの3名から始まった「なにわホネホネ団」。2004年の「大阪自然史フェスティバル」に出展したのを契機に、募集もしていないのに「参加したい!」という人が集まりだしました。今では小学校前のコドモ団員から様々な職種のオトナ団員まで、ホネ好きが集まって骨格標本作りをしています。
本まで!
彼らは
学術・芸術を問わず骨格に興味のある人材を集め、
博物館に収蔵する標本の作成や
依頼に応じてメンバーを派遣し、様々なイベントを行っています。
学術をベースとしつつも、生物への畏敬の念を持って行うことで
多様な楽しみ方を模索することで
独自の魅力を発信しています。
まだ
ホネホネ団の方と直接お知り合いになれてはいないのですが
そのうち
コンタクト(あわよくば入団)を
してみたいと思います。
昆虫食への注目の高まりとともに、
我々の団体にもいくつか依頼をいただけるのですが
メンバー的にも、内容的にもなかなか期待に答えることが出来ていません。
ホネホネ団に学んで
しっかりした団体を作っていきたいですね。
まずは拠点となる博物館探しでしょうか。
以前の記事でsoyさんからご質問を頂きました。
「なぜ虫クロトワさんは昆虫を食べるようになったのですか?」
お答えには
ちょっと長めの文章が必要になるのと
コメント欄に返信するとなぜか妙に字が小さいので
この機会に記事にしておこうと思います。
私の初めての昆虫食は小学3年生の夏休み。
岐阜県飛騨地方の
母方の祖父母宅に遊びに行った時のことでした。
いつものように
庭遊びをしていた小学3年生の私は
縁側の隅にアシナガバチが営巣しているのを見つけました。
祖父に報告すると「じゃぁ喰うか」と
ささっと傍にあったクワで叩き落とし、
成虫を追い払い屋内に持ってきました。
母「バター醤油で炒めると美味しい」「成虫になりかけが特に美味い」
祖母「昔はカイコのサナギを煮付けて食ったもんだ」
「スズメバチの成虫は瓶詰めにされて売られ、病後の滋養のために食べさせられた」
などと
私の「昆虫って食べものなの?」という素朴な疑問は発する間もなくスキップされ、
温められたフライパンにはバターが。
「ほれ、取りな」と祖母に促され、巣を崩しながらチマチマと幼虫を取り出す。
ささっと炒められた幼虫・サナギ達。
「ほれ ここ美味いから食え」
と喰い「うん 美味しい」と答える。
正直その時の味は覚えていません。
モチをバターじょうゆで食べる事が多かったので、
食べ慣れた味付けだったなぁとしか。
幼虫とサナギの味の違いもわかりませんでした。
この元体験が
私の昆虫食へのハードルを下げてくれたことは確かです。
この体験を今思い返して整理すると以下のことが言えそうです。
1,新規食材に対する嫌悪感は周囲の人に流される。
2,一度でも「食品」となった生物は大人になっても食品と認識される
3, ガキは味なんかわかっていないので、食わせてしまえば食うようになる。
4,文化とは押し付けである。
時は流れて2008年。
当時 理学部生物系の4年生だった私は
仙台で、ショウジョウバエの研究をしていました。
ショウジョウバエは一般の方には馴染みがないかもしれません。
こんなのです。
体長は3mm前後
目が大きくて赤く、可愛らしいですね。
ショウジョウバエの一群の中でも
Drosophila melanogaster (キイロショウジョウバエ)
は遺伝学の研究材料として古くから使われてきました。
そして
分子遺伝学の高まりとともに人気も上昇し、
ゲノム計画で昆虫の中でいち早く配列が読まれ、
他分野の、他生物の技術を相互に導入することで、
トリッキーな遺伝子組み換え技術が花開いていきました。
今でも多くの論文が、ショウジョウバエの実験から書かれています。
実験のため、
他の生物の遺伝子を組み入れたショウジョウバエは、
二重扉を設けた室内に閉じ込めておく必要があります。
そこで、
プラスチック製の試験管に酵母や澱粉を寒天で固めた煮こごりを注入し、
一系統ずつ(遺伝子Aを入れたもの、遺伝子Bを入れたものは別の系統として維持します。)
飼育していました。
7mlほど煮こごりを入れ冷まし、ハエの成虫オス・メスを数匹入れると数日で幼虫が発生し
一週間で次世代の成虫が生まれ、煮凝りを食べつくすまで3週間ほど世代を交代します。
実験室では、およそ二週間で新しい瓶へと交換します。残念ながら冷凍保存は出来ません。
使用済みはこんなかんじ。
同様の飼育方法で、
京都工芸繊維大学のストックセンターでは
2013年4月現在で 27000系統のショウジョウバエがストックされています。
既に、養殖昆虫は実用化されていたのです。
そこで思いました。
「このハエは食用に利用できるのではないか?」と。
同時に
「こんなハエなんか食べたくない、キモチワルイ」
という感情も沸き上がってきました。
奇妙な自己矛盾です。こういった自己矛盾=葛藤は
「合理的に説明できる部分」と
「どうしても説明しきれない部分」
に分けられます。
切り分けて、要素ごとに説明をつけることで
自分の中にある
「合理的でないけど大事な部分=食の自己同一性」を
明らかにできるのでは、と考えました。
ここの切り分けをすることなく
「ムリムリ絶対に無理。」とごっちゃにして放置しまうのは
たいへんモッタイナイ行為です。
葛藤は
合理的な理由と、合理的ではない
自身の文化的な本質の競合によって起こるので
そこに「アイデンティティ」が隠れていると思うのです。
ということで
始まりました。趣味の研究課題名
「なぜ 私は昆虫は昆虫を食べたいと思わないのか」
前述のとおり、ハチノコは食べたことがあり、
食品と認識していましたので、
同じ昆虫類のハエだけが食べられない合理的な理由は見当たりません。
残念ながらハエのエサには防腐剤・防カビ剤が含まれていますので
食用に適した養殖昆虫を他に探すことにしました。
グーグル先生に
「昆虫 料理」と検索すると
ヒットしました。「楽しい昆虫料理」
著者の内山昭一さんとは
その3年後、私の関東への引っ越しとともに
昆虫料理研究に合流しましたが、
当時は本が最初の出会いでした。
本がアマゾンから届くと(当然仙台に在庫はみつかりません)
近くの研究室でペットとして飼育していた
マダガスカルオオゴキブリに目をつけました。
食べたくない度で言ったらハエに劣らない
堂々たる存在感です。
先輩と一緒に
揚げて、カレーと一緒に
食べました。
…美味しいのです。
後でわかったことですが
マダガスカルゴキブリは消化管に臭みがあるものの
外皮や脂肪体に含まれる香りが乳製品のようでたいへん
いい香りです。
現在も増やしながら飼っていますが
家庭での残渣を使った養殖と食用に
最も適した昆虫だと思っています。
「家庭用生ごみ処理機としてのマダゴキ」
という記事をその内書きますので、ご期待ください。
さて
話は戻ります。
残念ながら私の研究
「なぜ 私は昆虫は昆虫を食べたいと思わないのか」
は第一歩目で頓挫してしまいました。
食べたいと思うようになってしまったのです。
もちろん
今でも初めて食べるときは全く食欲がわきません。
それでもその先に美味しい昆虫がいると信じているからこそ
味見をするのです。
前述のとおり、
私の研究は、そしてこのブログは昆虫グルメを極めるために
開設したのではありません。
将来、
養殖昆虫食を実用化するにあたって、
昆虫学の知見を応用するための架け橋なのです。
美味しく、栄養があって、よく増やせ、環境に適応し
課題や目的に応じた昆虫を、
100万種の昆虫の中から学問的に見つけだす。
これがこのブログのゴールになります。
私の稚拙な同定間違いにお付き合い頂いた虫屋の皆様
食べる気はないけど虫好きで数多くの虫を
標本にせず分けてくださった方々
そして
虫嫌いにもかかわらず私のブログに興味を持ってくださった方々
マジキチ といって去った方々(思いの外少なかったので残念ですが。)
それらの
今まで出会わなかった方とのつながりを作ることが
わざわざ胸糞悪い(と感じる人もいる)情報を
垂れ流して炎上させている意義です。
ということでまとめましょう。
1,なぜ私が昆虫を食べることになったのか
ショウジョウバエの研究中、「これ食べる?これ食べたくない!」との
葛藤があったから
2,なぜ私が昆虫を食べ続けるのか
昆虫食を昆虫学とドッキングさせるための基礎データ収集
3,なぜ私が昆虫の味見ブログを公開しているのか
興味を持ってくださる人とのつながりを作り、昆虫食の未来を
一緒に開拓するため
こんなかんじでしょうか。
頭のなかにあったものも、形にするとすっきりしますね。
「なぜ虫クロトワさんは昆虫を食べるようになったのですか?」
お答えには
ちょっと長めの文章が必要になるのと
コメント欄に返信するとなぜか妙に字が小さいので
この機会に記事にしておこうと思います。
私の初めての昆虫食は小学3年生の夏休み。
岐阜県飛騨地方の
母方の祖父母宅に遊びに行った時のことでした。
いつものように
庭遊びをしていた小学3年生の私は
縁側の隅にアシナガバチが営巣しているのを見つけました。
祖父に報告すると「じゃぁ喰うか」と
ささっと傍にあったクワで叩き落とし、
成虫を追い払い屋内に持ってきました。
母「バター醤油で炒めると美味しい」「成虫になりかけが特に美味い」
祖母「昔はカイコのサナギを煮付けて食ったもんだ」
「スズメバチの成虫は瓶詰めにされて売られ、病後の滋養のために食べさせられた」
などと
私の「昆虫って食べものなの?」という素朴な疑問は発する間もなくスキップされ、
温められたフライパンにはバターが。
「ほれ、取りな」と祖母に促され、巣を崩しながらチマチマと幼虫を取り出す。
ささっと炒められた幼虫・サナギ達。
「ほれ ここ美味いから食え」
と喰い「うん 美味しい」と答える。
正直その時の味は覚えていません。
モチをバターじょうゆで食べる事が多かったので、
食べ慣れた味付けだったなぁとしか。
幼虫とサナギの味の違いもわかりませんでした。
この元体験が
私の昆虫食へのハードルを下げてくれたことは確かです。
この体験を今思い返して整理すると以下のことが言えそうです。
1,新規食材に対する嫌悪感は周囲の人に流される。
2,一度でも「食品」となった生物は大人になっても食品と認識される
3, ガキは味なんかわかっていないので、食わせてしまえば食うようになる。
4,文化とは押し付けである。
時は流れて2008年。
当時 理学部生物系の4年生だった私は
仙台で、ショウジョウバエの研究をしていました。
ショウジョウバエは一般の方には馴染みがないかもしれません。
こんなのです。
体長は3mm前後
目が大きくて赤く、可愛らしいですね。
ショウジョウバエの一群の中でも
Drosophila melanogaster (キイロショウジョウバエ)
は遺伝学の研究材料として古くから使われてきました。
そして
分子遺伝学の高まりとともに人気も上昇し、
ゲノム計画で昆虫の中でいち早く配列が読まれ、
他分野の、他生物の技術を相互に導入することで、
トリッキーな遺伝子組み換え技術が花開いていきました。
今でも多くの論文が、ショウジョウバエの実験から書かれています。
実験のため、
他の生物の遺伝子を組み入れたショウジョウバエは、
二重扉を設けた室内に閉じ込めておく必要があります。
そこで、
プラスチック製の試験管に酵母や澱粉を寒天で固めた煮こごりを注入し、
一系統ずつ(遺伝子Aを入れたもの、遺伝子Bを入れたものは別の系統として維持します。)
飼育していました。
7mlほど煮こごりを入れ冷まし、ハエの成虫オス・メスを数匹入れると数日で幼虫が発生し
一週間で次世代の成虫が生まれ、煮凝りを食べつくすまで3週間ほど世代を交代します。
実験室では、およそ二週間で新しい瓶へと交換します。残念ながら冷凍保存は出来ません。
使用済みはこんなかんじ。
同様の飼育方法で、
京都工芸繊維大学のストックセンターでは
2013年4月現在で 27000系統のショウジョウバエがストックされています。
既に、養殖昆虫は実用化されていたのです。
そこで思いました。
「このハエは食用に利用できるのではないか?」と。
同時に
「こんなハエなんか食べたくない、キモチワルイ」
という感情も沸き上がってきました。
奇妙な自己矛盾です。こういった自己矛盾=葛藤は
「合理的に説明できる部分」と
「どうしても説明しきれない部分」
に分けられます。
切り分けて、要素ごとに説明をつけることで
自分の中にある
「合理的でないけど大事な部分=食の自己同一性」を
明らかにできるのでは、と考えました。
ここの切り分けをすることなく
「ムリムリ絶対に無理。」とごっちゃにして放置しまうのは
たいへんモッタイナイ行為です。
葛藤は
合理的な理由と、合理的ではない
自身の文化的な本質の競合によって起こるので
そこに「アイデンティティ」が隠れていると思うのです。
ということで
始まりました。趣味の研究課題名
「なぜ 私は昆虫は昆虫を食べたいと思わないのか」
前述のとおり、ハチノコは食べたことがあり、
食品と認識していましたので、
同じ昆虫類のハエだけが食べられない合理的な理由は見当たりません。
残念ながらハエのエサには防腐剤・防カビ剤が含まれていますので
食用に適した養殖昆虫を他に探すことにしました。
グーグル先生に
「昆虫 料理」と検索すると
ヒットしました。「楽しい昆虫料理」
著者の内山昭一さんとは
その3年後、私の関東への引っ越しとともに
昆虫料理研究に合流しましたが、
当時は本が最初の出会いでした。
本がアマゾンから届くと(当然仙台に在庫はみつかりません)
近くの研究室でペットとして飼育していた
マダガスカルオオゴキブリに目をつけました。
食べたくない度で言ったらハエに劣らない
堂々たる存在感です。
先輩と一緒に
揚げて、カレーと一緒に
食べました。
…美味しいのです。
後でわかったことですが
マダガスカルゴキブリは消化管に臭みがあるものの
外皮や脂肪体に含まれる香りが乳製品のようでたいへん
いい香りです。
現在も増やしながら飼っていますが
家庭での残渣を使った養殖と食用に
最も適した昆虫だと思っています。
「家庭用生ごみ処理機としてのマダゴキ」
という記事をその内書きますので、ご期待ください。
さて
話は戻ります。
残念ながら私の研究
「なぜ 私は昆虫は昆虫を食べたいと思わないのか」
は第一歩目で頓挫してしまいました。
食べたいと思うようになってしまったのです。
もちろん
今でも初めて食べるときは全く食欲がわきません。
それでもその先に美味しい昆虫がいると信じているからこそ
味見をするのです。
前述のとおり、
私の研究は、そしてこのブログは昆虫グルメを極めるために
開設したのではありません。
将来、
養殖昆虫食を実用化するにあたって、
昆虫学の知見を応用するための架け橋なのです。
美味しく、栄養があって、よく増やせ、環境に適応し
課題や目的に応じた昆虫を、
100万種の昆虫の中から学問的に見つけだす。
これがこのブログのゴールになります。
私の稚拙な同定間違いにお付き合い頂いた虫屋の皆様
食べる気はないけど虫好きで数多くの虫を
標本にせず分けてくださった方々
そして
虫嫌いにもかかわらず私のブログに興味を持ってくださった方々
マジキチ といって去った方々(思いの外少なかったので残念ですが。)
それらの
今まで出会わなかった方とのつながりを作ることが
わざわざ胸糞悪い(と感じる人もいる)情報を
垂れ流して炎上させている意義です。
ということでまとめましょう。
1,なぜ私が昆虫を食べることになったのか
ショウジョウバエの研究中、「これ食べる?これ食べたくない!」との
葛藤があったから
2,なぜ私が昆虫を食べ続けるのか
昆虫食を昆虫学とドッキングさせるための基礎データ収集
3,なぜ私が昆虫の味見ブログを公開しているのか
興味を持ってくださる人とのつながりを作り、昆虫食の未来を
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こんなかんじでしょうか。
頭のなかにあったものも、形にするとすっきりしますね。
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プロフィール
HN:
Mushikurotowa
HP:
性別:
男性
趣味:
昆虫料理開発
自己紹介:
NPO法人食用昆虫科学研究会 理事長
このブログは以下に移動しました。http://mushi-sommelier.net
2008年「なぜ昆虫に食欲がわかないのか」研究を開始
食べたらおいしかったので「昆虫食で世界を救う方法とは」に変更。
昆虫の味の記載から、昆虫の特性を活かしたレシピの開発、イベント出展、昆虫食アート展覧会「昆虫食展」まで、
様々な分野の専門家との協力により、新しい食文化としての昆虫食再興を目指す。
2015年 神戸大学農学研究科博士後期課程単位取得退学
テーマは「昆虫バイオマスの農業利用へむけたトノサマバッタの生理生態学的解析」
2018年よりラオスでの昆虫食を含めた栄養改善プログラムに専門家として参加
このブログは以下に移動しました。http://mushi-sommelier.net
2008年「なぜ昆虫に食欲がわかないのか」研究を開始
食べたらおいしかったので「昆虫食で世界を救う方法とは」に変更。
昆虫の味の記載から、昆虫の特性を活かしたレシピの開発、イベント出展、昆虫食アート展覧会「昆虫食展」まで、
様々な分野の専門家との協力により、新しい食文化としての昆虫食再興を目指す。
2015年 神戸大学農学研究科博士後期課程単位取得退学
テーマは「昆虫バイオマスの農業利用へむけたトノサマバッタの生理生態学的解析」
2018年よりラオスでの昆虫食を含めた栄養改善プログラムに専門家として参加
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