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皆様
ご無沙汰しております。久々の更新です。
今回は「シロアリ」です。
昆虫の中でも比較的原始的な構造を残しており
ゴキブリとも近縁なので、図鑑によっては
ゴキブリ(網翅)目シロアリ科としているところもあります。

アリと同様に真社会性をもつ昆虫ですが
主に肉食のアリとは異なりおとなしく木材のセルロースをちびちびたべます。

ただ、家屋にとっては困りもので、
木造家屋の土台が湿気やすいことも手伝って、
シロアリにボロボロにされてしまう、という
悲劇も起きています。

シロアリは「家屋害虫」ですが、
ゴキブリのような強烈な嫌悪感はあまりもたれていないように見受けられます。
やはり生息環境に侵入している姿が見える、というのが大きな嫌悪感の原因なのでしょうか。

さて

今回は

食用昆虫科学研究の東南アジアの雄、吉田さんの
内定先の同僚の方から、アフリカ産の食用シロアリを頂いたので味見しました。


調味されているようで、
状態も同定できるレベルではないのですが
2cmほどの大型ですので食べごたえがありそうです。


来年ぐらいに日本在来の大型種、
オオシロアリを食べたいな、という思いも込めて
番外編として、味見をしておきましょう。

シロアリとアリの大きな違いは「完全変態」と「不完全変態」です。
アリの幼虫はウジ状で、文字通り「手も足も出ない」形態なので働き手は成虫です。

ところがシロアリは
不完全変態なので、生まれてすぐに動くことができます。

「研究者が教える動物飼育 第二巻 昆虫とクモの仲間」


によると

シロアリの家族=コロニー内で最も多いのが
分化していない「擬職蟻」
で、
その後脱皮により3種類に分化し
1,前兵隊→兵隊アリ
2,翅芽中→有翅虫
3,幼形生殖虫

となります。
今回は 写真右、頭の大きい兵隊アリと、
翅のある有翅虫が弁別できたので味見してみます。
調理は軽い塩味とスモークの香りです

兵隊アリ 
頭部がカリッとしておりスナック感の強い食感。わずかに植物系のさわやかな香りがあるものの
それが調理によるものかシロアリ本来のものか判別できず。クチクラはバッタぐらいで
口に残らないベストな硬さ。

有翅虫
兵隊アリに比べよりサクッとしており、食べやすい。
ごくごくわずかに集合フェロモンのような香りがあり。
味はフン抜きしたアルゼンチンモリゴキブリの幼虫に似ている。近縁種なのもうなずける。


これは期待できそうです。
もちろん文化的にもシロアリを食べる地域は多く
家屋へのダメージも薬剤でコントロールできる時代になりました。

キノコ栽培のように、湿度のある森林で、
シロアリ栽培ができるようになればいいですね。
来年こそはオオシロアリ飼育に挑戦してみたいです。

最後に

メリークリスマス


リア充爆発しろとか言っているあなた。

「恋人が居なければ虫を食えばいいじゃない」
(マリー・アントワネット?)

昆虫食を始めて5年
配偶者、同居人が昆虫食にとって大きなハードルとなっている
悲劇
を、私は数多く見てきました。

クリスマスというミーハーイベントにも負けないあなた。

チャンスです。

今マイノリティだけれども
将来性のある
昆虫食に今のうちにチャレンジしてみませんか?

そしてもうひとつ。
「昆虫を食べる女性はおきれいな方が多いですよ」
女子受けする昆虫食について勉強したいかたは
こちら。昆虫食仲間の美人若女将ことムシモアゼルギリコ著
「むしくいノート」


女性の年齢をアレコレ言うのは無粋ですが
ギリコさん、初めて会ったとき「えらい貫禄のある女子大生やな」
と思うほどの若々しさ。もちろん既婚。

以前紹介した「昆虫食写真集」に登場する
美人女性たちも、もちろん昆虫食を嗜まれる淑女であります。

いかがでしょうか。お待ちしています。
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前回イチジクカサンの幼虫と蛹を味見しましたが
残りが成虫になって産卵したのでこれらも味見しました。


卵 (小さい黄色いつぶ)
プチプチとした食感はカイコの卵にそっくり。ただ小さすぎて味がわかりにくく、カイコほど独特の味がないので、あまり料理にはむかなそう。卵に限ってはカイコの勝ちかと。



成虫♀
毛がしっかりしており、茹でただけではとれない。煎る必要がありそう。
カイコよりバランスとしては毛深い印象。食感が悪いので幼虫・蛹をオススメ。腹部に卵が詰まっており、カイコより小粒で、とびっこに似たプチプチとした食感。臭みは全くなく木質で香ばしい。トビイロスズメの成虫に近い味。




イチジクカサンは
卵を除き
多くの成長段階でカイコを圧倒しました。

次は
これに桑を食べさせるとどうなるか
変異体カイコ(広食性カイコ)に桑以外を食べさせて育てるとどうなるか
いろいろ考えられます。

養蚕を源流とする「蚕学」の蓄積は、
ぜひ利用したい日本の財産といえそうです。

蚕の次に養殖すべき昆虫を見つけられたら嬉しいですね。


「カイコは美味しくない」

残念ながら
多くのカイコ研究者にも共通する認識です

独特の味はオトナ向けの風味としては良いのですが
サイエンスアゴラでも子供にはあまりウケない味のようでした。
今まで240種食べてきましたがトップ5に入る悪い味でした。

ただ、これが
「カイコガ科独特の味」なのか、
「クワを食べたことによる悪い味」なのか、判断がつきかねます。

そこで、
「カイコガ科でありながらクワを食べないもの」がいないか、
カイコ研究者にお伺いしていました。

そんな中頂いたのが
イチジクカサン Trilocha varians という耳慣れないカイコ。


台湾ではイチジクやガジュマルの大害虫だそうで、南方の種。
今回は石垣島の系統を分けていただきました。
これにより

カイコの味の悪さは、氏(遺伝)か育ち(食草)かがわかります。


こちらは蛹


味見
幼虫
プツプツと消化管内容物の食感があるが、嫌な味は全くなく、イモ系の穏やかな風味。おいしい


ヤママユガ科と共通する栗に似たまろやかな香り。味もよくエグミは全くない。


朗報です。
クワが原因ということがほぼ確定しましたので、

次は、
美味しいカイコの生産を目指しましょう。

普通は、カイコはクワの成分を含んでいないと
どんなにお腹が空いても食べず、餓死してしまいます。

幸いなことに
カイコは多くの自然突然変異体があり、
その遺伝子も特定されているので
「広食性カイコ」という系統が見つかっています。

これにより、
カイコの栄養に適した、そして美味しい葉を食べさせると
美味しいカイコができるはずです。

なお
養蚕が盛んだった頃のカイコは、
錦鯉などのエサとして使われましたが
「肉がカイコ臭くなる」とのことで、
食用魚には使われてこなかった経緯があります。

そのため、この「美味しいカイコ」の生産は
飼料としても将来性があるのではないでしょうか。

ということで
現在問い合わせ中。続報があり次第またお知らせします。




今回は前編(2008~2011)を受けての後編です。

2012年から、私はトノサマバッタの研究に入り、
彼らはただ飼育しているだけになっていました。

研究室での滞在時間も長くなり
彼らに果物の皮や野菜くずをやっているうちに

「そうだ。データをとってみよう」

と思いました。
何事も机上の空論ではなく、
かならずデータを取ってみることが重要です。

わりとバッタの飼育に時間が取られるため、
複雑で手間のかかかる実験はできませんが、

与えるエサをそのまま品名・重量を記録し
その収支を測定できれば、と思いました。

その前に、飼育装置の改良が必要です。

1,食べられる床材を使わない
今までは紙製の卵パックを使っていたのですが
おなかがすくとすぐに齧ってしまうので、プラダン、と呼ばれる
プラスチック製のダンボールを使いました。
これは1畳で数百円の安さのため、荷物搬入時の養生(傷つきを防ぐプロテクター)
によく使われています。
ホームセンターに売っている好きな素材の一つです。

2,湿度対策
湿度が上がり過ぎないよう、
水はタッパに入れ、フタに切れ込みを入れ
そこにロープを垂らしてロープを常に湿らせることでムダな蒸発を防ぎました
そして乾燥しすぎる原因となったUSBファンは
ケージ自体を大きくすることでその影響を局所的にし
彼らの移動を基本的に自由にし、階層構造は廃止しました。

3,フンの分別収集
フンの収集は今までどおり、子供が通れず、大人のフンが通れる大きさの穴を開け
下にトレイを敷くことで
乾燥したフンが続々と貯まる構造になり、フンの測定も容易になりました。

4,スダレ
状態が悪くなったり、しばらく生ごみがでないと
空腹になった成虫が幼虫を食べてしまうことがあります。
そこでスダレを丸めて設置することで、
幼虫だけがそのスキマを自由に出入りできるようにし、空腹時の共食いを防ぎました。

これがその
「G.pマッシーン三号」です。


今回は虫フェスということで、
題名を考えました。

私が
そろそろアラサーであること、

そして部屋に置くべき虫は何か、考えた結果




お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが
これは今年ネットを賑わせたpanasonicのダサい広告
「アラサーエアコン」をパロディにしたものです。

それでは
このアラサー部屋昆の実力をお目にかけましょう


1,二週間おまかせ!



彼らは二週間ぐらい放置していても余裕で生き延びます。
忙しく、出張も多いアラサー世代に最適な昆虫ですね。


2,生ごみを分解消臭!
50gの柿の皮をおよそ一時間で完全に分解消臭します。
美味しそうに食べてくれますね


3,おいしい!

彼らの獣系のムレ臭には、母方故郷、飛騨高山の伝統料理、
「朴葉味噌」が合うと思い、物産展で買ってきました。

彼らを横開きにし、胸側の肉をこそげ落として背側の肉と合わせ、

マーガリンとチーズをトッピングしてから

250℃オーブンで軽く焼いた後、朴葉味噌とその他の野菜と一緒にホイル焼きにしました。


想像通り、朴葉の香りと相まって、とても肉っぽい香りが食欲をそそる
美味しい料理に仕上がりました。

4,スマホ連携
アラサーエアコンでは、取ってつけたようなスマホ連携がその魅力の一つでした。
なので、この装置にもスマホを連携させてみましょうか。

Gの一種ということで、
彼らを見ると恐怖を覚え、「殺したい 殺さなければならない」
という強迫観念にさいなまれる方もいるかと思います。
そんな方の恐怖を和らげるアプリがあるのです。

アンドロイドでは
「Roach killer」


iOSでは
「iRoach」等のG駆除ゲームです。


大抵日本のGよりもG.pの方が高得点に設定されています。
普通は二度タップすることで退治できるとのことです。
やってみましょう。





余談ですが、アプリを調べているうちに、こんなものを見つけました。


「Yummy Bugs」とは「うめえ虫!」ということです。
ゲテモノ系ゲームとはいえ、我々より先にアプリにされたのは
くやしいですね。ほんとうに美味しい昆虫を、安全で美味しく食べる方法を
ポケモンずかんのように教えてくれるアプリを作ってみたいものです。




それでは、この「マッシーン3号」の性能を
実測していきましょう。

開始時点で500gありました。

こんなかんじで与えていきます。

6月4日バナナ皮60
6月5日ナス70
6月5日キウイ10
6月6日フスマ50
6月6日バナナ34
6月6日ごはん38
6月6日ネギ22
6月6日きゅうり42
6月6日手羽元38
6月8日キウイ19
6月8日手羽元14
6月12日キウイ19
6月13日ナス112
6月15日ホットケーキ19
6月15日チンゲンサイ64
6月16日スイカ85

このような感じで 4ヶ月間、測定しました。
その結果がこちら。
 

4kgの生ごみを食べた500gのG.pは、840gになり、306gのフンと242gの食べ残しを排出しました。


この一点しか取っていないのですが
データを取ることで見えてくるものがありました。

他の生ごみ処理機にはない特徴 それは
「増える」ことです

4ヶ月で840g、1.6倍に増えたのです。

ここで調理をぐっと我慢すると、
自然と処理能力がアップさせることができます。

データを取るということは、
未来を類推する、ということです。
この先どうなるか、やってみましょう。

それでは、
アラフォー家昆
平均的な一世帯あたりの生ごみ
処理できるだけの数を考えてみましょう
このままの増加速度だと、あと28ヶ月我慢すると、彼らの処理能力は
平均的な一世帯あたりの生ごみ排出量に達します。



ちょっと多い感じですかね。
しかし
下水道が無い地域の合同浄化槽の大きさ考えると
無理ではない規模であることが分かるかと思います。

さて、

指数関数的に増えることを考えると
地球規模ではどうなるか、気になるところです。

「アラ2030 テラ昆!」



つまり、
世界の人々が
鶏卵をG.p代替するだけで、生ごみの出ない世の中になる、
かもしれないのです。
わりとイケると思っているのは私だけでしょうか。
どうでしょうか。

そんなことを
発表するために
今回はクロトワの正装で行いました。



ゲストの岡本リサさんは
デコゴキアーティストとして
「Gが嫌いなところが好き」という
不条理系アートを攻めている方。


「虫好きの女性」というだけでも大変なのに
そこから更に攻めています。


そして
虫ドルのカブトムシゆかりさん


カブトムシを一時300頭飼育していたという強者で
「大人のお友達のための虫のお姉さん」実演などもしてくれて
私のあこがれ(食欲的な意味で)であるヨロイモグラゴキブリを
飼育しているとのことで、愛で方から飼い方、種類など
まさに
Gトークで盛り上がりました。

場所も
Gが大量に生息していると思われる
新宿歌舞伎町
のロフトプラスワン。

日本の真ん中でGへの愛を叫ぶ

ステキな会となりました。

虫食い仲間
ムシモアゼルギリコさんが書いた

女子向けにも嬉しいポップな書籍
「むしくいノート」

私も協力しています。

そして
リンクファクトリー様より
「昆虫料理食品サンプルガチャガチャ!」




一個500円ですが、日本人(二人が三日間徹夜)が手作業で複製し、
彩色しこれらの制作を行ったことを考えると
尋常でない安さであることが分かるかと思います。

今回、私は
学術的(標本数とか有意差検定をしていないので学術未満ですが)」
に彼らの魅力を表現しましたが、

飼う、デコる、食べる、殖やす、絵を描く、フィギュアを作る
などなど、

愛で方、そしてその表現方法は多様だ、
ということが今回再認識されました。

知名度No.1のG達を含めた
昆虫の面白さが日本を、世界を席巻するような
最新カルチャーを発信していきたいと思います。


ご参加頂いた皆様 ご来場ありがとうございました!
そして関係者の皆様。お疲れ様でした。


以前の記事
「初めての自家養殖食用昆虫」
がマダガスカルゴキブリであることを紹介しました。

彼らとは長い付き合いになります。
今回は前編、2008から2011年までをご紹介します。

前々から
記事にしようと思っていたのですが、
この度
「東京虫食いフェスティバル番外編」にて
15分ネタのテーマとしたため、先延ばしにしていました。
ここに一挙に報告したいと思います。

遡ること2008年7月

就活に・実験にと漫然とこなしていた私は
多くの一般的な学生と同様に
人生に行き詰まりを感じていました。

そんな中、飼育していた実験用の
ショウジョウバエを飼育していた思ったのです。
「こいつら食えないか」
「こんなもの食う気になれない」

「なぜ私は昆虫を食べたいと思わないのか」

「食べてみたら分かるかも」

ですが
ショウジョウバエのエサには防腐剤が含まれているので
食用には適しません

そこで食用に適した昆虫を探しました。

検索サイトにて「昆虫 料理」と検索すると

ありました。


7月31日の購入履歴



同時に江頭2:50分のDVDを購入しているあたりに
当時の迷走っぷりが伺えます。

その後すぐ、
8月1日の「セミ会」に参加し、
内山昭一さんとお会いし、セミの味を堪能しました。

就活するたびに東京に行き

アリの子(アジアスーパーストア)
タガメ(アジアスーパーストア)
サクサン(上野)



スーツを片手に買って帰ったものです。

その時とばっちりを受けていたのは
宿泊させてもらっていた高校時代の同級生TW氏。

某国立の外国語系大学に所属していた彼は、
ゼミのボス主催のサークル活動として
はだしのゲン」をウルドゥー語に翻訳し、プロの演劇指導を受け
当時核開発を進めていたインド・パキスタンへ公演に行くという

かなりキレキレの活動にハマっており、
ハマりすぎた挙句、留年を繰り返していました。
(現在は会社員としてインドネシアあたりをウロウロする好青年です。)

私が修士でしたので、
頼れる東京の友人は彼ぐらいしか居なかったのです

何を思ったのか私は
彼と彼の妹(教育実習でクラス担当になったという経緯のある)の同居する
共通キッチンで、初めての昆虫料理を開始しました。

そしてあろうことか、
この兄妹を哀れな生贄の第一号に選んだのです。
(その節は大変お世話になりました。何か宿泊のお礼と思って暴走しておりましたことをここに懺悔いたします。)

そして、
それら稚拙な初期の昆虫料理をうまい/不味いといいつつ
受け入れてくれた兄妹によって
私の昆虫料理熱はすこしばかり種火がついてしまいました。

年が明けて2月、
就活は一層混迷を極め
人生の行き詰まりを大学院へ先延ばしにすることにした私は

東京に通うこともなくなり、冬になってしまったので
新たな、仙台で手に入る養殖昆虫を求めました。

次なる犠牲者(?)は
KキャンパスにあるM研究室。
ここでは昆虫の脳機能を電気的に測定する装置をもっており
感染症に強く、賢く、そしてよく増える昆虫の代表。
ワモンゴキブリを研究パートナーの一つにしていました。

脳機能を測定するわけですから、
脳は大きいほうが良いので
多くの論文で使われているワモンゴキブリの他に
大きく体重のあるマダガスカルオオゴキブリが飼育されていました。

残念ながら彼らの脳はワモンゴキブリよりも小さいことが分かり
単なるペットとして飼われていました。

そしてその情報を、
私は事前に仕入れていたのです。

「M先生、マダゴキ・食べさせてもらえませんか?」


意外なことに、「昆虫料理を楽しむ」が
研究室に既においてあり、H先輩が食いついてくれました。
H先輩は既にセミ幼虫を捕獲し「セミチリ」を自作して
食べたことがあるそうで、昆虫食に関しても私の先輩に当たることが分かりました。

さて

食べてみます


ほっこりとしたイモ系の香りと脂質のまったりとした味わい。
バターのような獣系の香りとムレ臭。
腹部は集合フェロモンと思われる「G臭」があり、
好みが分かれる所でした

後に腹部の消化管を取り除くことになるのですが
この当時はそのまま美味しく頂くことができました。

その後、
このコロニーから分譲された
飼育個体を徐々に増やし、次の会が開かれます。

2009年9月

同級生の怪魚ハンターが 人生を決める大物を釣り
「昆虫食べてみたい」とのリクエストを頂き
彼の帰国に合わせ希望者をつのり(半ば無理やりですが)
フルコースの会を開くことに


今から見るとまだまだですが、
当時としては精一杯の昆虫料理を出しました。
当時のブログでは私のことを

“常識的な狂人”であり“紳士的な危険人物”


と評されており、
彼の観察眼は魚を見つけるためだけでないことが
伺えます。

彼の言うように、「常識的な狂人」でありたいものです。


さて
この時つくったG料理は
スープカレー。
揚げた食材をスープ状のカレーをかけて食べる、という形は
煮込んで食材の個性が失われてしまう通常のカレーよりも
揚げとの相性の良い昆虫も気軽に参加させることが出来る
最適な料理であると確信しました。




時は流れ2011年
「食用昆虫科学研究会」の初期メンバーとなった私は


サイエンスアゴラ2011の出展企画として、
Gを使った生ごみ処理機の計画を発表。
この時は試食昆虫を多く準備しすぎ、
話を殆ど聞いてもらうこともなく

ただただ昆虫料理を給仕するだけになってしまいました。


この計画をご紹介しましょう。

「名前が悪い」という特徴から、
ここからは彼らを学名「G.portentosa」と称します



彼らは野菜くずは果物の果皮を好んで食べます。
そしてフンをします。彼らの体はおいしい昆虫料理となり、
またペットの餌となり、フンを肥料として利用することで
野菜を再生産する。つまり循環型生活が行えるのです。

発酵分解式のコンポストはニオイが強く、
乾燥式の生ごみ処理機は電気代もかかり
堆肥化もできません。
この時G.pのアゴと消化管を利用して処理することで
乾燥ペレット状の堆肥(のような物体)となるのです。


では
次に飼育環境を改良していきましょう。


ペットとして、生き餌として養殖する方は
基本的に水と配合飼料を使うそうです。

野菜くずは水が多く含んでおり、
湿度を高めてしまうので
コバエやダニの発生を促し、健康を害してしまうことが多くあるとのこと。
なので、湿度対策が特に必要です。

「煙突効果」という現象があります。
上下に穴の空いた円筒形のものがあるとき、温められ膨張した空気が
軽くなり、上がることで、動力なしに新鮮な空気が下から入ることです。

それを利用した円筒形の飼育容器を考えました。

野菜くずではやはり水気が気になったので、
エアポンプを使った強制換気装置を付けました。

そして「フルイ」を下に向かって小さくすることで、
子供と大人を分け、共食いを防ごうと考えました。

この時、最下層のトレーには、フンのみが入り、
その他の子供やGは(彼らは卵胎生なので一齢幼虫>フンであれば大丈夫です)
下に来ること無く、安全に回収できます。



残念ながら換気装置が貧弱で蒸れがちで、
倒れると脱走することも多く(笑)


すぐに第二号の開発にかかりました。



次はサイエンスアゴラ・虫フェス2011でも発表するので、
外見をちょっとかっこよくしています。


構造は似ていますが、材質をポリスチレン製の100円金魚鉢から、
ポリプロピレン製の四角いタッパに変えたことで、ひび割れを防ぎ、軽量化と
強度を両立させました。最上部には強制換気装置としてUSBファンを設置し
低湿度を保つよう気をつけました。


ところが、彼らは走地性があり、下に下に行ってしまいます。
そしてファンの出力がやや強く、常に乾燥状態になってしまいました。

改良は次年に持ち越しとなってしまいました。(後編に続きます)


次に、初期の味見で気になった「腹部のG臭」について
確認していきます。

まず、食用昆虫科学研究会の兄貴的存在、
Gの殺虫剤耐性の研究で学位をとった水野さんの協力のもと
解剖します。
そして、匂いの強い部位を特定するため、それぞれの器官を食べ比べたのです。
その結果がコチラ。




消化管を茹でてそれぞれの器官を食べ比べた結果、おそらく
中腸から後腸にかけての付属腺から集合フェロモンが分泌されていそうです。
胃は酸味がありましたが、そのようなニオイはしませんでした。

また、卵はバツグンに美味しいのです。
バターのような香りとコクがあり、誰でも美味しくいただけると思います。
この結果から、
当研究会では、G.pの成虫を食べる場合、腹部の消化管を除くのが通例となっています。


次に、調理法について考えて見ましょう。
彼らは体重があるため、内部がジューシーで、クニュっとした食感ががあります。
また、外皮は弾力があり固く、口に残ってしまうことが残念です。

そのためしっかり揚げることで、クリスピーな食感にし、
美味しく食べられていました。

ただ、昆虫のヘルシーさ、高タンパク低脂質を実現するには、
揚げ意外の料理法も挑戦したいところです。

そこで辿り着いたのが
フリーズドライでした。

フリーズドライは-30度以下に凍結したものを
低圧条件におき、水分が昇華したところを「コールドトラップ」と呼ばれる
霜取り装置で捕まえることで、極端な加熱をせずに水のみを取り除く手法です。


近年ではインスタント味噌汁の具の野菜などに使われています。

これにより、サクサクとした食感を、油を使わずに実現できます。

消化管を取り除いたボディをフリーズドライすると、
外皮がカリッとして弾力が減り、食べやすくなりました。
そして内側の脂肪体がふわっとパフ状になりウエハースのような食感が実現したのです。

また、フリーズドライは加熱しないことから、その香りを多く残す特徴があります。
別にしておいた消化管をフリーズドライすると、そのG臭、集合フェロモンのニオイが強く残っていたので
フリーズドライで食べる場合にも消化管を除去したほうが良さそうです。


まとめます。

1,G.pは野菜くずなどの植物性家庭ごみを再利用する生ごみ処理機として利用可能である。
2,処理機として利用する場合、湿度の管理が重要である
3,フンは肥料として使えそうだが未検証
4,フリーズドライは消化管を抜いて作るととても美味しい。


それでは後半2012〜2013をお楽しみに。
Mushi_Kurotowa
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プロフィール
HN:
Mushikurotowa 
性別:
男性
趣味:
昆虫料理開発
自己紹介:
NPO法人食用昆虫科学研究会 理事長
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2008年「なぜ昆虫に食欲がわかないのか」研究を開始
食べたらおいしかったので「昆虫食で世界を救う方法とは」に変更。
昆虫の味の記載から、昆虫の特性を活かしたレシピの開発、イベント出展、昆虫食アート展覧会「昆虫食展」まで、
様々な分野の専門家との協力により、新しい食文化としての昆虫食再興を目指す。

2015年 神戸大学農学研究科博士後期課程単位取得退学
テーマは「昆虫バイオマスの農業利用へむけたトノサマバッタの生理生態学的解析」
2018年よりラオスでの昆虫食を含めた栄養改善プログラムに専門家として参加
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