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久しぶりの更新です。
いろいろ書きたい内容があるのですが、
今回は軽めの味見記事を。



春になってオオイヌノフグリが花を咲かせる中、
ナナホシテントウと似た配色のちいさな虫が。



「ナガメ」菜亀。Eurydema rugosa

その名の通り菜の花につくカメムシで、ビビッドな配色をしていますが
触ってもニオイを全く出さず、体型もずんぐり。



これは味見してみましょう。

味見
苦い!菜の花のきっちりとした苦味、しかし、あとをひかないすっとした後味。びっくりしたが、わりと好ましい苦味に感じた。辛子酢味噌といっしょに頂きたい。食感は肉質があってカメムシの中ではずっしり系。香りは殆ど無い。ヨモギハムシにちょっと似たあじ。
匂い系カメムシと味系カメムシが居る模様。 


菜亀といえば、田んぼにいるカメムシは田亀ですね。
白バック撮影のメリットは「レイアウトが自在なところ」ですので
この機会に並べてみましょう。

(ちょっとナガメを大きめに配置しています。)


タガメとナガメ、春と秋の食のアクセントとして、
いただきたいものです。

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「見たいけど別に食べたくはない」

昆虫料理をしていると、
このようなお客さんが多くいることが分かります。
「本やブログは読んだけど食べる気はない」
「おもしろいけど体験する気にはなれない。」
以前にも言及しましたが、自らの文化にないものを新たに食べることは
相当のストレスですので、食べられなくて当然です。私も新規の昆虫を食べる時は
大変に苦労しています。(特においしくなさそうな警戒色のあるもの)

また、
「食べさせる」準備はとても大変です。
本来はとれたて新鮮なものを、しっかり加熱して、
味付けはシンプルに食べていただきたいのですが、

保存性や値段の制限のあまり、
本当に美味しくて新鮮な昆虫を提供できないことも多く

「さほど美味しくないよね」と
無料で出した昆虫料理にコメントされることあり
残念な気分になります。

「採れたてのトビイロスズメの前蛹はクソうまいんや!お前なんかに無料で食わせてたまるか!」
と言い返したくなるのをぐっと我慢。
目的は「一般人のレスポンスの収集」ですので
口論してもいいデータにはなりません。

また、逆に、我々の目の届かない所で勝手に食べられても困ります。
昆虫を含む新規の食材にはアレルギーなどのリスクがあることを理解し、

我々の免責について同意頂かないと、食べさせられないのです。
そういう意味で、5人以上はスタッフが必要になります。

そんな中、
茨城県自然博物館の方から、
当バッタ研究室へ
サバンナからのメッセージ アフリカの自然とその保全」への協力依頼を頂きました。

私の遠い兄弟子にあたる前野浩太郎博士が
現在モーリタニアでサバクトビバッタの研究を行っており、
アフリカとバッタ研究は切っても切れない関係にあります。

そちらは博士のブログ「砂漠のリアルムシキング」か
著書「孤独なバッタが群れる時」を御覧ください。




そして、
バッタは大発生時に農作物に多大な被害をもたらすとともに
平時の食料としてもアフリカに貢献してきました。

嬉しい事に、「アフリカの昆虫食を
展示したい、との意向をいただきました。

ただし期間は3ヶ月、常温での展示です。

これは困りました。昆虫料理は傷みやすいのです

そして、
このような需要が実は多いのでは、とも考えました。

これからの昆虫食イベントの形として
「食べてもらわない昆虫食イベント」もありかなと。

考えてみれば、多くの昆虫標本は乾燥でも、ある程度いきているときの
みずみずしさを保っています。味は悪くなってしまうのですが、
「見た目」だけでいうと、昆虫は保存性の高い生物といえそうです。

そして、
日本には「食品サンプル」という技術もあります。
合成樹脂を使い、色使いと質感を本物のように再現、むしろ
本物以上に脚色して「美味しそう」と見せている奇跡のワザです。

塩化ビニールのくせに、
我々が食べてもらおうと苦労している
昆虫料理を差し置いて「美味しそう」と
思われている、嫉妬の対象でもあります。

嫉妬は何も産みませんので、取り入れて利用していきましょう。
私は食品サンプルを作る技術がありませんので、
中古でオークションに出されている食品サンプルを購入し、
「ハイブリッド昆虫料理標本」を作成しようと思います。


サバクトビバッタ丼
サバクトビバッタ Schistocerca gregaria


は、植物を食べる昆虫なので、生きたままの輸入には
植物防疫法上の制限がかけられ、飼育には
二重扉が必要なために、日本では、研究用に唯一、
当研究室で飼育されています。

見ていると、
私の研究対象であるトノサマバッタ以上に
よく食べ、急速に成長します。
サバクという過酷な環境に適応した、底力を感じます。

北部アフリカのナイジェリアは、コメを食べる文化があり、
その市場ではサバクトビバッタ丼がみられます。

スネから先と、翅をとったバッタと、揚げ、
ご飯に載せただけのシンプルな食事。日本で言うと吉野家的な
位置づけでしょうか。

これを真似して作った所、
「日本人の目からみて美味しくなさそう」
でしたので、食品サンプルの技法に則って、和風にアレンジしてみました。

こちら


紅しょうがとネギを他の食品サンプルから拝借し、散らしただけで、
美味しく見えます。また、この美味しそうなタレは「油性ニス ローズ色」です。
まさかホームセンターの塗料コーナーに食欲をそそる色があるとは。
我ながら「視覚による美味しさ」に対して、とても曖昧であることを再認識です。

続いて、
モパニワームのトマト煮 トウジンビエ添え
このサイトを参考にしました。

コンゴやザンビアを初め、多くの地域で食べられているモパニワーム
学名Gonimbrasia belina  は、消化管内容物を抜いた後、
天日で干されてから流通します。
戻す時は「干ししいたけ」のように、水で戻し、油で炒め、
トマトや野菜と一緒に煮て
穀物のおかずとして食べられています。

今回はトウジンビエを手に入れる時間がなかったので、豆で代用。

汁気のあるものなので、一回本当にトマト煮を作った後
フリーズドライし、樹脂で固め直す、という方法をとりました。

本物の野菜を使っているので、フリーズドライによって色があせてしまいます。
今回は煮物なので、問題なかったのですが
みずみずしい生物には向いていない方法だと思いました。

そして完成


こちらも地中海風アレンジをして、
馴染みやすい美味しさに脚色しました。とてもおいしそうですね。

今回のこれらの「昆虫料理標本」は
「アフリカ展」内で展示していただけることになりましたので、
皆様、3月8日から6月15日まで、
茨城県自然博物館にぜひお越しください。

宣伝でした。














標題のとおりです。

以前からプッシュしている、
そして私も大変お世話になっている
「Dr.夏秋の臨床図鑑 虫と皮膚炎」


ややお高いですが、そこは臨床の事例と、
愛らしく憎らしい虫たちを
フルカラーでお届けするため仕方のない事です。

この図鑑は、皮膚に炎症をおこす
様々なタイプの虫について
実際に著者の肌に炎症を起こして経過を見る
というなんとも荒行のような図鑑です。

中には患者さんの写真もありますが、
たいていは炎症がひどくなってからの
症例しか得られないものですので、
炎症の初期から観察するためには、
「自演乙」するしかないのでしょう。

前回「正しいちらし寿司
で「筋子からイクラへ」処理しておいた
マイマイガの幼虫が孵化してしまいました。
 

これまでの寒さにより
休眠が打破されてしまった、というより
オオカマキリのように休眠状態にならず、
積算温度がたまり次第孵化する、というタイプのようです。

そのため保存上の警告です。
「マイマイガの卵を保存する場合は屋外か、加熱して冷凍」
ということになりそうです。

カマキリの場合は室内で大発生しても
彼らの室内アスレチックを観察でき、
大変に愛らしいものですが



警告したのもこのマイマイガ。
この図鑑や、他の図鑑にも
「一齢幼虫にのみ毒刺毛がある」との記載が。
ただ臨床写真は掲載されていませんでした。

そしてボスが昔アメリカで実験材料として
扱ったとき、一齢幼虫を筆で触っていたためか
炎症は起きなかったとのこと。

これは確かめてみたい。

というか
「Dr.夏秋の気分を体験してみたい」


ミーハーな気持ちで自演をすることにしました。

幅広のマスキングテープに一齢幼虫を一匹置き
そのまま前腕の内側、パッチテストをする位置に。
 

コントロールとしてなにもしていないマスキングテープを貼っておく。
写真右のマーカー部分にマイマイガ一齢幼虫をセットします。
 

30分後
 
一時間後
 
一時間半後


ほとんど痒くないのですが
確かに炎症反応が起きました。
まわりとの差が不明瞭な腫れがおき、
刺毛が触れたのか、一齢幼虫をおいた場所の周囲にも
軽い班点が見られました。

そして一時間半後には、殆ど消えました。
これは「即時型アレルギー反応」と思われます。
IgE抗体によって認識され、肥満細胞上にあるIgE受容体に受容されることで
ヒスタミンの遊離が起こり、紅斑や膨疹、痒みを伴います。


続いて、
一日後、ぷっくりと、周囲とは明確に段差のある
ふくらみ(おそらく丘疹とよばれる腫れ)が見られました。
 
これは最初の抗原の進入時に
皮膚にある抗原提示細胞がリンパ節まで移動し、
感作リンパ球が末梢を巡回、ふたたび同じ抗原
(残っていたマイマイガの刺毛)に触れることで、
活性型リンパ球となり、炎症性サイトカインを放出したと
考えられます。

いやー。ためになりますね。

細胞間の分子シグナル伝達は、
生物系学部ではいやというほど覚えさせられるんですが
しばらく分子系から遠ざかっているのでうろ覚えになってます 笑

自分の体で分子レベルの情報交換が行われ、
それが二種類の遅延反応となって皮膚に現れるとは、

なかなかロマンを感じました。
マネすることはオススメしませんが、
たのしい経験でした。

実際にやってみると
「不用意に刺された時はイラつくが、自分で刺させたときはむしろ楽しい」
ことがわかりました。

ケガをした時も、
「キズの半分だけキズパワーパッドで覆う」


と、傷の治りが楽しくなってきます。

イライラを自分の好奇心に置換できると
いろいろ楽しくなりそうです。

Dr.夏秋も虫好きを公言されていますし、
実は楽しんで臨床実験をしていた可能性があります。

そのうちお会いしたいですね。

このマイマイガの幼虫、糸を出して
ぶら下がることから「ブランコ毛虫」ともいわれ
一齢幼虫はそのまま糸に風を受けて木から木へ
(ジェット気流に乗って更に遠く)へと
文字通り飛んで行く「バルーニング」といわれる
移動をします。

それがこのような炎症をおこすのですから、
春先のマイマイガには注意が必要です。

まずは、今のうちに卵を食べましょう!

ツツジの葉を食べ始めたので
脱皮したら「二齢幼虫には毒がないのか」
も、引き続き確かめておきたいと思います。
先週末は記録的な大雪が降り、首都圏は交通の不具合が多発しました。

そんな中。60人の「虫屋」さんが
全国から渋谷駅のほど近い超おしゃれなアイリッシュパブに
集う恐るべきイベント「虫cafe!」
が、昨年に続き開催されました。

主催者は
栃木・宇都宮の虫屋、りゅうひさん

SNSを駆使し、参加募集開始後
わずか8時間で予約一杯になるという集客パワーを魅せつけました。
(予約70人に対し、記録的な大雪の中異常なまでに出席率が高いのは虫屋のフィールドに対する強さだと思います)

私もダウンを着、登山用の防水靴を履いて渋谷に参じました。
(渋谷にここまでアウトドアな恰好で行ったのは初めてかもしれません。)

当日朝、
いつものようにバッタのお世話。
午前中にどうにか終わり、

研究室から最寄りの駅まで、
いつもは自転車で12分なのですが
さすがに無理そう。

近くにタクシー会社があったので、雪をかき分け、ノック。

ラフな格好のおいさんが出てくる。
「今日は雪で運転手が出勤していないんです」

とのご返答。恐るべし雪

仕方なく歩くことにしました。片道40分。
雪のため余計に足が重く感じます。

渋谷駅にほど近い東京三菱UFJ銀行のすぐ裏。
カッコイイアイリッシュパブに。
全国の虫屋が集まります。


虫屋、といっても採るだけでなく作る方もいます。
こちらはガラス細工の数々。



今回はシークレットも含め10名のプレゼンター。
抽選の結果、私は無事4番手。いい位置につくことができました。

そしてプレゼン。
なんとムービーが動かない!というアクシデント。
macとwindowsの互換性に悩まされます。

ご来場者の皆様へ、
そして雪や他の都合で来られなかった方、人数制限に泣いた方へむけて
この度完全版としてここにご紹介したいと思います。


お題は
「美味しい鱗翅目の養殖を目指して 〜Bombyx moriの功罪とベイツ型擬態〜」

このブログをお読みの方ならお分かりかもしれませんが、
今までの鱗翅目の記事を5分に要約したものになります。


虫好きですから、一度ぐらい食べたことありますよね。
(実際7割ぐらいの方は手を挙げられました。すばらしい。)


でもカイコにはいい面「完全養殖OK」と悪い面「卵以外味が悪い」があります。


そもそも絹糸用ですので、
副産物はともかく、わざわざ食用に養殖する必要はありません。


なので、手当たり次第食べてみました。
162種、成長段階を変えて243パターン。
今回はその中でも鱗翅目について3トピックほどお話します。

カイコの味ですが、「遺伝」か「食草」か
区別したかったので、カイコガ科の桑を食べない種「イチヂクカサン」
を食べました。すると香ばしく・甘く。大変美味しかった
ことから「カイコ味は食草由来」であると考えられます。




続いて
とてもモフモフかわいいオナガミズアオ
そしてモサモサかわいくない、食欲わかないマイマイガ
両極端な二頭ですが
どちらものどごしが最悪。サンマの腹側の肋骨をまとめて飲んだような感じですね。
そこから、捕食者にとってはモフモフとモサモサは相同器官であると考えられます。




サクラ餅のニオイ成分「クマリン」は桜の葉の細胞が傷ついた時に発生する
生体防御物質の一つです。なのでサクラケムシ(モンクロシャチホコ)は
桜餅の香りがして、とても美味しいのですが、同じくサクラを食べるモモスズメや
カレハガはその香りがとても少なく、クマリンが感じられません。
そこから、サクラケムシはクマリンを体内に溜め込み、捕食者に食べられない
戦略をとっていると考えています



警戒色をもつ生物の多くは、有名な二種類の擬態にカテゴライズできます。
本当に危険な「モデル」のマネをするハッタリ型、ベイツ型擬態
キケンな種同士が似たような恰好をし、食べた捕食者に強く印象づける
ミュラー型擬態

このホソバセダカモクメはどちらでしょうか。
食べてみないとわかりませんので、チャレンジしたのですが
大変美味しいのです。おそらくハッタリ型のベイツ型擬態といえるでしょう。
このように、ベイツ型擬態の鱗翅目が、将来の養殖昆虫となるかもしれません。

時間がないので動画にまとめてきました。

(会場では踊る大捜査線のテーマを使ったのですが、youtube公開にあたり
音楽を差し替えました)


トップ10

シンジュサン
キバラモクメキリガ
ヒメヤママユ
ホソバセダカモクメ
モンクロシャチホコ
トビイロスズメ
キアゲハ
シモフリスズメ
セミヤドリガ
オナガミズアオ

ワーストファイブ

ツマグロヒョウモン
ブドウスカシクロバ
マイマイガ
チャバネセセリ
セスジスズメ

毒ありきけん

オオゴマダラ
ヒロヘリアオイラガ
チャドクガ

養殖しましょう
エビガラスズメ
エリサン
オナガミズアオ

最後に
美味しく食べましょう

エリサンカレー
エリサングラタン
モスバーガー
エリサン寿司
オナガミズアオ蒲焼き
最後は
お節料理に「ちょいたし」して
あけましておめでとうございます。




まとめ やはりカイコは鱗翅目の中でもあまり美味しくない。
全般的に前蛹が一番食べやすいです。
カイコは桑以外でどれだけ育てられるか、挑戦します。
未来の食料はベイツ型擬態をするカラフルな鱗翅目かもしれませんね。



ムービーが動かず、ふがいない思いをしたのですが
投票の結果第二位に!賞品を頂きました。



ご投票頂いたみなさま、ありがとうございます。
来年は互換性に気をつけ、
ちゃんとしたプレゼンを他の「目」でやろうと思います。

とても楽しい会でした。
Twitter上でやりとりしていただいた方と実際にお会いできたり、
「食べてもらえませんか」との嬉しいオファーを頂いたり。

ネットの普及でウェブ上の付き合いは簡単になりましたが、
それだけに、リアルで会うことが一層貴重で、
意味のあるものになってくる予感がします。
大事にしたいですね。


さて、
越冬女王蜂は瓶詰め佃煮ハチノコに切り替えました。

たいていの昆虫は冬に個体数が激減するので
越冬モノは注意して選びましょう。

冷凍庫をあさっていると
こんなものが


マイマイガです。
あまりに食欲がわかないので
今年の6月1日に捕獲し、写真撮影した後、
冷凍して放置していました。

モサモサした、のどごしの悪そうな毛
背中にはなぜかブルーの突起と赤の突起。
顔は目が2つニャッキ!のようでカワイイのですが。



茹でて味見しましょう。

味見:味は…味は悪くない。
硬い毛はむしろ食感のアクセント。
柔らかい毛はものすごくのどごしが悪い

さんまの腹側の肋骨を飲み込んだ時の感じに近い。
ケムシの毛はガの燐毛と同様に
食感とのどごしを悪くする機能がありそう。
「ガ」のモフモフと「ケムシ」のモサモサ、に共通の食感の悪さがあることは新しい発見かも。

トンボやカゲロウ、ゴキブリに比べ、
哺乳類や鳥類といった俊敏な捕食者の登場に前後のデザインだけに、
いろいろ捕食圧による独特の進化の結果なのかもしれません。
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20120605001

哺乳類を殺すような毒は昆虫にとっても毒であることが多く、
その生産や防御機構まで含めると、かなり高コストなので
繁殖力が旺盛な昆虫は
「食べられなくはないけど食べづらい、美味しくない」

という状態がデザインと捕食圧の妥協点として取られたのかもしれませんね。


さて
なんでこんな見るからにまずそうなのを
食べようかと思ったかというと

このマイマイガを食べて、
こんなニュースに対抗したかったのです。
北海道で夏に大発生
http://www.hokkaido-np.co.jp/cont/video/?c=animal&v=576766646002

マイマイガは、
初齢幼虫に微弱な毒があるとのことですが、
基本的に「ただ増えるだけ」の害虫です。

繁殖力と食欲が旺盛で、
さほど強力な天敵もいないことから、
(おそらく寄生蜂が天敵となりそうです)
大発生するととんでもないことになります。

特にアメリカに侵入した例では被害が深刻で、
森林が丸裸になるほどのに深刻な被害が出ました。

ヨーロッパ由来のマイマイガを養蚕実験のため保持していた
研究者が、たった数頭逃してしまった結果、との説が有力です。

アメリカ農務省はその対策に乗り出し、研究の結果
たった一種のガについてこんな分厚い本が出ることに。


マイマイガの話をふとボスに振った所
「昔アメリカに居た時やってたよ」
と見せてくれました。
1981年出版。

「Gypsy Moth :Research Toward Integrated Pest Management」


豪華なハードカバーで 757ページ。
カラー写真もふんだんで、めっちゃオカネかかってます。
逆に言うと、それほど深刻な被害だったのでしょう。

最近ではこんな本も。




日本でも
農薬を使い過ぎない「Integrated Pest Management=総合的病害虫管理」
という概念が浸透してきましたが、農薬を使わない、エコで自然にやさしい、
というイメージがあります。

しかし
このマイマイガは
「殺虫剤が効きにくく、どれだけ撒いてもカネが足らん」
という圧倒的な猛威の結果、「総合的になんとかせんとどうにもならん」
という絶望的な状況の中で使われた言葉というのが分かります。

マイマイガの天敵となる
菌類や寄生蜂、寄生蝿などの利用に向けた詳細な調査が行われていました。

彼ら天敵のほうが効果的な状況では、殺虫剤によって
かえって被害が増大する「リサージェンス」という状態になります。

殺虫剤さえ撒けば良い、という害虫対策は、
国土の広いアメリカでは通用しなかったのです。


本では
林業被害として
「黒く死んだオーク(ナラノキ)が多く見られた」
「被害を受けた地域の木の根の乾燥重量が低くなった」
「根に含まれる糖分が減少した」

とのこと。
木は被害を受けてから、その結果が出るまでが長いので、具体的に
「◯本の木が枯らされ、〇〇ドルの被害が出た」
と言えないのが林業被害の難しいところです。

成長点を食い荒らす害虫は、食痕を調べることで原因とすることができるのですが
葉のみを食い荒らす(元気な木はその後すぐ回復する)場合の、被害額の推定は難しそうです。
その分、圧倒的な大発生になるまで放置されてしまう、という側面があるのでしょう。

林業は農業以上に昆虫との付き合い方が難しそうです。


残念ながら、この中でも
「食べて利用しよう」「飼料に利用しよう」という話はなかったようです。

やはり具体的な林業被害がでていることから
「駆除」を念頭に。そしてその利用方法が見つかったとしても
今後安定的な養殖が許可される予定もないでしょうから
妥当な判断でしょう。

では次に
「どの段階での駆除が効果的か」
を考えてみましょう。

長々と書きましたが、答えはコレです。


卵塊。


マイマイガは
日本では大発生といえど、
一定数以下に抑えられています。

菌類や寄生蜂・寄生蝿がいるためだとすると、
ここにむやみに殺虫剤をまくと
「リサージェンス」を起こしかねません。

そのため、マイマイガのみを、簡便に、多くの個体数を駆除するとなると
ブラックバスの対策でも効果を上げた「卵塊駆除」が答えとなりそうです。
これがもし「美味しければ」
マイマイガにお困りの地域で駆除することにより、翌年のマイマイガの数をコントロールできると考えられます。

見てみましょう。

メス成虫の鱗毛で覆われています。

しっかりと卵一つ一つが毛に覆われており、暖かそうです。
母の愛を感じます。

めくると裏側は、美味しそうな卵がたっぷり。
この毛=母の愛は強力すぎるために苦労します。

ぬるま湯に入れ、荒い網でこする、
という「筋子の要領」で取っていきます。

卵自体の強度は高いので、筋子ほど力加減を気にする必要はありません。
ごしごしやりましょう。
水に流れても気にせず、細かい網でキャッチ、そして最後は水を切って乾燥させると
残った燐毛が飛んでいきます。
これで「とんぶり」のような卵が出来ました。

これを軽く塩で茹で、
ハチノコ大和煮、
チョロギ風に酢漬けにしておいたエリサンサナギと一緒に
食感のアクセントとして使いましょう。

2月に食べる正しい昆虫ちらし寿司
目的はクロスズメバチの保護と、マイマイガの駆除です。




実食

マイマイガ卵
プッチプチで美味い!
香りはカイコガの卵の方がよい。初心者向けの普通のお味。
初令幼虫は微弱な毒があるとの報告があるが、卵に関しては今のところ影響なし。

クロスズメバチ
イモのような舌触りと肉質のコク、
味がとても穏やかでスズメバチ類では一番馴染みやすいかも。酢飯ともよく合う。
節分ですので、恵方巻きにでも、と思ったのですが、ネタが小さいのでちらし寿司にしてみました。


森を食い荒らし、
人家に出没することで「むしぎらいを増やす」
マイマイガは、オニになってからでは遅いのです。

オニは今のうちに…
気にならない程度に減らしておきましょう。

ごちそうさまでした。
Mushi_Kurotowa
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プロフィール
HN:
Mushikurotowa 
性別:
男性
趣味:
昆虫料理開発
自己紹介:
NPO法人食用昆虫科学研究会 理事長
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2008年「なぜ昆虫に食欲がわかないのか」研究を開始
食べたらおいしかったので「昆虫食で世界を救う方法とは」に変更。
昆虫の味の記載から、昆虫の特性を活かしたレシピの開発、イベント出展、昆虫食アート展覧会「昆虫食展」まで、
様々な分野の専門家との協力により、新しい食文化としての昆虫食再興を目指す。

2015年 神戸大学農学研究科博士後期課程単位取得退学
テーマは「昆虫バイオマスの農業利用へむけたトノサマバッタの生理生態学的解析」
2018年よりラオスでの昆虫食を含めた栄養改善プログラムに専門家として参加
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