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新しい学問分野を切り 拓くのは誰か?

〜食用昆虫科学研究会の挑戦の日々〜


https://www.facebook.com/events/728722173819522/


告知です。
今週末土曜日、六本木の政策研究大学院大学にて
「Smips・研究現場の知財分科会」の1演題として、
食用昆虫科学研究会について話します。

今回は昆虫食の普及活動ではなく
このブログを含め

「大学の外で学問をすること」について、

多くの方と討論することが目的です。

今回の講演は、主催の山田光利先生が当ブログの過去記事
昆虫の味見は「研究」か
を読んで下さり、オファーを頂きました。

今回は、食用昆虫科学研究会から
私だけが
フロントマンとなり、他のメンバーの名前はあまり出しません。

研究会の中で起こるべくして起こった
多くの「問題・失敗・克服」の過程を
一緒に分析し、他山の石としていただきたいと思います。

概要です。


1,学術研究における昆虫食の位置〜大学の外でやる必要あるの?〜
2,食用昆虫科学研究会の活動実績〜論文掲載とサイエンスアゴラ賞〜
3,デメリット〜公的機関からの援助の重要性を再認識する〜
4,メリット〜多くのデメリットの中で得たもの〜
5,討論:この先どうするか、どうすべきか。


最初の方は、
一般的な昆虫食の話をしようと思います。
なので、細かい研究の話もしません。

あくまで
「大学の外で学問を深めた経験」を共有し、議論するための情報を公開します。

「昆虫食の研究の最先端を知りたい!」のであれば、
毎月行っている当研究会の勉強会に見学、

もしくは入会してください。http://e-ism.jimdo.com/

以上告知でした。
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ヤフートップにこんな記事が。


神戸の須磨海浜水族園で26日から開催される特別展「アマゾンの謎に挑む」を記念し、珍しいピラニア料理が食べられる。「ピラニアのムニエル」は見た目は怖いが味は淡泊でおいしいという。価格は税込み2000円。
(時事通信) 25日18時55分配信
【関連ニュース】





そういえば昨年6月に食べたものの、
味見ブログで紹介してなかったなと思い出しまして、
時流に乗って記事にしておこうかと。

「ピラニア・ナッテリー」は熱帯地域でポピュラーに食べられている
魚で、ペットとしても飼いやすく、日本でもよく知られた魚です。

今回も、前の「逆にニワトリを食べてみる」と同様に

昆虫と比較し、その将来性を考えてみましょう。

(お題は「生死のフチ子さん」)
コップのフチ子さん、いいですよね。


彼らとの出会いは2年前、バッタを食べさせてみようと
ペット(養殖魚モデル?)として3匹、飼育を始めました。

飼っていて驚くのはその治癒能力
互いに臆病なので、
背びれが根本からえぐれるようなアタックをしてケンカをするものの、
数日でキズがふさがり、一週間もすれば新しい鱗で
覆われ、キズが消えてしまいます。ポテンシャルの高さを感じます。

残念ながら
彼らはバッタを一口齧っただけで見向きもせず、
豚肉や魚肉、金魚など、脊椎動物の味が好みのようでした。

飼育するうちに徐々に大きくなり、
元来の臆病な性質も相まって
ケンカが絶えなくなってしまいました。

そこで、
一番喧嘩っ早い一匹を、
責任をとって食べることに。

ペットとして飼った動物を、食用に転用する心理的ハードルは
哺乳類ではとても高いのですが、魚類は低く感じました。

今、ナマズにバッタを食べさせて飼っているのですが、
おなかがすくとこちらによってきたりして、
次第に懐いてきたような行動をみせるので
おそらく
「懐く・なつかない」は食用にするときのハードルに
大きく影響しそうです。


中には大きなオレンジ色の卵が。雌だったようです。
 
鱗をとり、切れ目を入れ、片栗粉で衣をつけ、油で揚げ焼きに。


甘酢あんかけにしました。


味見
水槽由来のコケ臭さが多少あるものの、
スズキのようで大変においしい。身も厚く
食べごたえがある。
卵はタラコよりもつぶが大きく、味も普通。やや水槽臭い。

骨がとても丈夫で固く、その後骨せんべいを作ったのですが
かなり揚げても硬質。特に立派なアゴは最後まで口に残りました。

 

考察。
ピラニア・ナッテリーは自然治癒力が高く、
20度以下ではほとんど動けなくなり
群れる性質があり、しかも味が良い。

食用に導入できる可能性をもった魚類です。

具体的には
山間部の温泉地帯で、温泉による加温をして飼育し、
もし脱走しても生育できないようにする、
などが考えられます。

しかし、
肉食のためにコストが高く
日本で考えると市場に受け入れられる可能性が低いために
現状、
ピラニアの食用養殖業は成立しないものと考えられます。

ただ、
この自然治癒力の高さは目を見張るものがあります。
同じカラシン目の「コロソマ」なんかは
食用にいいかもしれません。


「生物としてのポテンシャル」を高く評価しましたが

この先、
「生物としてのポテンシャルがモノを言う世界」について
もうちょっとまじめに考えてみましょう。


現状のウシ生産はロスが大きいので
それを草食魚や昆虫・あるいは飼料穀物を食用穀物に転作し
「生物としてのポテンシャルが高いものに代替する」ことで
より多くの人に食糧が行き渡るようにする、という論理がみられます。

理論上はそうなのですが、よく考えてみましょう。
家畜や作物の生物としての効率の良さが、飢える人を減らす。
ということは

逆に言うと
効率の悪い生物を利用すると、飢えて死ぬ人が出る。
つまり、「食料生産が人口を決める」という状態です。

この状態こそが まさに

普通の人が想像する食糧危機といえるでしょう。
「食糧生産の効率を上げると、餓死する人が減る」状態です。


ところが、
現状の「食料不足」は、生産と分配
不全状態になることで起こっています。

世界的な作物の不作により、
人口を賄うのに必要な食糧生産を下回った年
は、史上一度もありません。分配が不全状態なのです。

天候不順
単一作物地域の増加
不作地域への食糧支援の遅れ
内戦・戦争・革命
貧富の格差の拡大

などなど、
「食糧の不均衡」が、現在の食糧不足の主役なのです。


つまり、現在の食糧問題「再分配の問題」が解決された先
「食料が平和的に再分配され、生産効率が人口を決定する食糧危機状態」
こそが、

我々が目指す理想の食糧状態、といえそうです。


ならば、
昆虫食は、
「未来の食糧危機」にフォーカスするだけでなく、
「現在の食糧危機」にどう対応すればいいのか

昆虫食を含む様々なマイナー食
の形が、
どのように参加すればよいのか、
今のうちから考えておくべきだと思っています。

ちょっとこの先は
まだまとまっていないので、
今日はここまでにしましょう。










ちょっと大事な論文を読み込んでいるので

先にオオシロアリ Hodotermopsis sjostedtiの味見レビューを。

今年の1月、
アフリカ産のシロアリを頂き、レビューした際
「屋久島のオオシロアリが食べたい」と
新年の抱負を述べていました。

本州にいる
小ぶりなヤマトシロアリは食べてみたことがあるのですが、

いかんせん小さく、
カーストによる味の違いが分からず、
おおぶりのものを手に入れたかったのです。

そんな中、今年の研究所の一般公開にて


お隣になったシロアリ研究者から、
なんと展示に使ったオオシロアリ(屋久島産)をいただけたのです。

新年度早々に
こんな幸運に恵まれるとは、嬉しい限り。

兵アリと、幼虫を頂きます。

こちらは幼虫。シロアリは不完全変態なので、幼虫からシロアリ型です。

兵アリとの比較。大型の兵アリは巣を守る存在。数はあまりいません。
頭部が柿の種のように光り輝いており、美味しそうですね。

指に乗せるとこのくらい。非常に大きく感じます。

仲はとてもよいです。殖やしたいなぁ。


味見

幼虫 
ヤマトシロアリより大型で味がある。ほんのりあまく、木の香りがしてすっとケミカルなニオイもかすかに。食感は外皮がはじけたあとくにゅっとしたしたざわり。ちょうどクワガタとカミキリムシの中間。近縁のゴキブリのような集合フェロモンの臭さはなく、可能性を感じる味。


兵アリ
頭部のプチッと感が素晴らしい。大きいぶんやや味が濃い。クワガタ幼虫のような菌系のやな香りはなく、木材のさわやかな香り。割合が少ないので、レア。大事に食べたい。


シロアリは多くの熱帯国で食べられている昆虫で、
養殖化には成功しておらず、また
飼料効率も悪いのであまり注目されていませんが

木材をおいしいバイオマスに転換する系として、
「非木材林産産物」の一つ
として今後注目されていくと考えられます。


非木材林産産物を説明しますと
(勉強したてですみませんが)

かつての熱帯の森林は、木材の供給源としてしか評価されず、
材木を取り尽くすと、開墾して畑とし、
次第に単一作物のみを生産する、
巨大なプランテーションと化していました。

プランテーションにはサトウキビやキャッサバなど、
「効率のよい」作物を植えることで
森林だった時よりも効率的な農業だ、と期待されました。

ところが、大きなデメリットがあったのです。

それは「国際価格の急落」

プランテーション地帯では、もちろん産物は単一ですので
自給しようにも、当然食べきれず、売って
他の食品を買わなければなりません。
近くには同様のプランテーションばかりですので、売り先は海外、特に先進国になります。

ところが、そこで
国際価格が急落すると、特に賃金のやすい発展途上国は大打撃をうけ
「農地で農家が飢える」というトンデモナイ状況に陥ったのです。

また、
食物の国際価格は投機マネーが価格決定に関わっており、
一度落ち始めると、急落する(逆に急騰する)特徴もあり、
例え加工原料として使う先進国がちょっと痛いぐらいの変動でも
賃金の低い輸出国にとっては致命的なダメージになります。

その反省をもとに、
森林を開墾せず、「持続的に得られるものを最大限に活用する」
ために注目されたのが、木材以外の森林資源
「非木材林産産物 Non Wood Forest Products」
なのです。

ここでいう産物とは、具体的な物質だけにとどまらず
生活に欠かせない「生きがいとしての仕事」も含まれます。
そこで、手作業での自給的食物であった昆虫や山野草においても
効率を高め、

「現金収入につながる仕事=フォーマルな仕事」
へと転換することで、「伐採・開墾による収入の誘惑」に
対抗して経済力をつける道が模索されているのです。

ここでも
やはり注目すべきは「社会性昆虫」でしょう。

人件費は
どうしても裕福になればなるほど高くなることから
ある手仕事で貧困を脱出すると
その手仕事では生計が成り立たなくなる、
というトレードオフになってしまいます。

特に
開墾しない森林は多様性が高いため、
目標とする一種類の資源へのアクセスが悪く、
手間がかかります。

日本では大型哺乳類や、一部の高価な山野草しか
狩猟採集に寄る収入は得られていません。

森林に住む昆虫はたくさんいますが、
美味しい昆虫由来バイオマスを大量に手に入れる手段として

「社会性昆虫の使役技術」
が今後重要になると考えられます。

世界中で使役されている社会性昆虫として「ミツバチ」が有名ですが

森林に散在する新鮮なタンパク質を
効率的に収集する手段としてのスズメバチ、アリであったり

分解が困難な植物バイオマスを微生物の力を使って
組織的に食糧へと変える ハキリアリやシロアリなど

更に利用価値は高まるでしょう。

そこで開発すべき技術は…
これまた次回に。今読んでいる論文がキーとなるはずです。



今回はわりと固い話です。

前記事で、「蜂の巣の害虫であるハチノスツヅリガとハチノコを分けて養殖するには」
という問題を投げかけました。

今のところ、そのような技術はありません。室内で隔離するしかないのですが
この先大量に食用に使う場合は、何らかの革新的技術が必要ではないかと思います。

「この先利用可能性の高い応用昆虫学」として
応用昆虫学の最先端、マラリアを媒介する蚊の研究を紹介します。


蚊は、熱帯地域における重篤な感染症「マラリア」を媒介することで恐れられています。
原因となるマラリア原虫が蚊を介して血液内に侵入すると、
赤血球に寄生し、その機能を阻害することで、重度の貧血症状を引き起こします。

この原虫の対策となる「鎌状赤血球」の遺伝子をもつ人が
アフリカ地域に多くいることを考えると、
マラリアが我々ヒトに与えてきた影響の強さが想像できます。

当然ですが、蚊はヒトの出すCO2やニオイに誘引される性質があります。
そのため、今までの忌避剤は、ヒトの誘引性よりも強く
忌避する物質を使って、「虫避け」が行われてきました。

世界中で使われている虫除けDEEDなどが有名ですが、
そのメカニズムは分かっていません。



こんなかんじ。
DEED→蚊(ブラックボックス)→忌避行動

DEEDのどこがどう効いているのか、
それ以上効くようにするにはどうすればいいのか
人体に影響が少ないようにするためにはどうすればいいのか

全く予想がつきません。
これでは、DEEDより良い忌避剤を見つけるために
膨大なトライアンドエラーを繰り返す必要があり、研究費がいくらあっても足りません。

もちろん、ヒトは代謝するたびにどんどんニオイを発しますので
DEEDを24時間塗り続けることもできません。

かといって高濃度を使い続けると、
ヒトへの悪影響も心配です。

こんな感じ。
DEED+人→蚊(ブラックボックス)→誘引行動?忌避行動?

できるだけ少なく、
蚊の防除に効率的な物質を、効率的に見つけるのはどうすればいいでしょうか。



そこに踏み込んだがこちら。
Stop the Biting: Targeting a Mosquito’s Sense of Smell

元論文は
まずは去年の
「ヒトのニオイとCO2を感知する感覚細胞を(ほぼ)特定して、蚊をだますニオイを見つけたで」という話。
Targeting a Dual Detector of Skin and CO2 to Modify Mosquito Host Seeking

そして今年の論文
「蚊の組み換え体を使って1つの感覚細胞だけを操作して、とうとう本丸の細胞と受容体を特定したで」という話。
Multimodal Integration of Carbon Dioxide and Other Sensory Cues Drives Mosquito Attraction to Humans


この研究グループは、蚊の行動ではなく、蚊がヒトのニオイを検知するときに必要な
「感覚細胞一個」にターゲットを定めました。
そして、2の論文では感覚細胞における受容体タンパク質一個にターゲットを狭めています。

蚊のすべてをシミュレーションするのは難しいですが
「分子一個の挙動」ならば、現在のシミュレーション技術である程度の予測が可能です。

既知の結合分子からのシミュレーションによって、
この感覚細胞に影響をあたえる可能性の高いニオイ分子に検討をつけ、
実際に与えて、その行動や、神経活動を記録し、比較しました。

ヒトのにおい→受容体分子→感覚神経→脳→行動 というルートの
       ↑ココをターゲット

すると

人の匂いがある状態で、受容体の活動をキャンセルする物質や(ニオイを感じなくなる)
分子  とか
ヒトのニオイよりも低濃度で、受容体分子を活性化する、
ニオイ物質が見つかりました。

今までの忌避剤のような
「ヒトがいるけど臭くて近寄れぬ!!」
ではなく
「あれ? これヒト? ヒトのニオイじゃなくね?」
という感じでしょうか。

これらを組み合わせることで、

誘引性の殺虫トラップと、
撹乱性の「対蚊ステルス」を組み合わせることで
「ヒトと蚊の居場所をずらす」可能性が考えられます。

しかも、受容体分子のみをターゲットにしているので
蚊にとって致死的ではなく、薬剤耐性ができにくい、という大きなメリットもあります。



さて、
この研究から言えるのは
「化学物質をメインに利用している昆虫をダマす」
ということが、
技術的には十分可能であり、まだまだ実用化の余地がある、ということです。



そう考えると、
以前に「ダーウィンが来た」でやっていた昆虫食の猛禽類、ハチクマの
「スズメバチの攻撃を抑えるニオイ成分」なんかも候補に上がります

私のボスにこの話をすると、
「ハチクマがもしスズメバチを抑えるニオイ物質を持っていたとすると、初回から匂い物質を出していれば安全に捕食できるのに、攻撃受け放題だったのがおかしい。もしかするとスズメバチの
警報フェロモン自体が、長時間分泌されると攻撃を抑制するようになるのかも」
とのこと。
するとスズメバチの駆除の前に、その警報フェロモンを遠隔操作で噴霧しておき、スズメバチがひとしきり興奮した後に駆除(もしくは捕獲・捕食)できるのではないか、と考えられます。


さて
話を戻しましょう。
同様に、

ハチノスツヅリガは蜂の巣の害虫なので、
養蜂と同時に養殖することは困難です。

ところが、
蜂の巣のニオイに誘引されない状態を演出できれば、
同時に扱える可能性があります。

蜂の巣+撹乱ニオイ              誘引ニオイ 巣の残渣
         →ハチノスツヅリガの移動→
こうすることで

蜂の巣とツヅリガを近所で共存飼育できる可能性があります。

もともと養蜂には殺虫剤が使えないので
養蜂のさらなる高度化に他の昆虫を利用することは比較的簡単にできるでしょう。

「ハチで受粉した果物」と「蜂蜜」と「ハチノコ」と「ハチノマゴ」

養蜂の高度化が成功すれば、よりハチとヒトのいい関係が築けるのではないでしょうか。


更に、
化学物質によって社会を営んでいる「アリ・シロアリ」の利用にも
同様にニオイ分子を探索し、ヒトの匂いを撹乱することで
アリの子を効率的に捕獲出来ると考えられます。

「好蟻性生物」というものをご存知でしょうか。




日本では丸山宗利博士、小松貴博士らが精力的に研究をしている
分野で、
「アリの巣に居候」することで、
アリに用心棒をしてもらったり、アリのエサを分けてもらったり
あろうことかアリ自体を食べたりして暮らしています。

けしからん遊び人ですが、アリは主に化学物質をつかったコミュニケーションで
互いのニオイを確認し、社会生活をしています。
この時、視覚は余り重要でないらしく、アリの30倍以上の体重をもつ
巨大な昆虫も、アリの巣でのうのうと暮らしています。

アリにとって、サイズはあまり関係ないようなのです。

そのため、
ヒトが「ニオイでアリに擬態」することで
「アリのニオイをつけた巣箱」へ誘導したり
彼らのエサ収集能力や、用心棒、アリの子を食べたりする
「アリ食」にも応用出来る可能性があります。

オオシロアリ」の記事で言及した
「非木材林産物」としての利用が、これらの昆虫学の進展により
一気に進み、「養蜂」ならぬ「養アリ」が新たな半養殖昆虫になるのではないか、
と考えています。





「ハチノコ」は、昆虫食の中でもメジャーな存在で
イナゴの次ぐらいに食べたことのある人が多いかと思います。

主に
クロスズメバチの子を称するのですが
地方によってスズメバチ類全般の幼虫を指すことも。

これらは
皆肉食なので、彼らが健全に大きな巣を作るためには
餌となる新鮮な小昆虫がたくさんいる環境が大切です。

ところが近年、クロスズメバチの減少が問題になっています。
他の肉食のハチよりも
クロスズメバチに顕著なので、乱獲が原因と考えられています。

そこで、昆虫食の盛んな長野では、
春のうちに小さい巣を屋内に入れ、「飼い巣」
と呼ばれる半養殖が行われています。
タンパク質を多く含む「魚のアラ」などを巣の前に置くことで
野外ではめったに見られない巨大な巣に仕上げることができるとのことです
飼い巣の大きさを競うヘボコンテストも行われているそうです。

そのため
昆虫食文化を背景としない我々ミーハー昆虫食者は、
できれば
「飼い巣」のクロスズメバチを、
文化の保護を目的として購入したいものです。

「乱獲されているから食べるべきでない」と、常食者に言いたくなるのは
我々ミーハー昆虫食者が自戒して慎むべきことといえるでしょう。

「減少している事実」が知られたのも
継続的に捕獲している彼らの存在があってこそです。

(逆ですが、ミドリガメはその個体数を計測する研究者がいなかったために、
その侵略的外来種としての定量的な調査がすすまなかった、という経緯があるそうです。)

そのため、
既存の昆虫食文化は「持続可能性な形」で存続・保全してもらう、
というのがひとつの方法です。
そして
新規参入に関しては「既存の食文化を圧迫しない形」で行われるのが理想でしょう。

そんな中
「ハチの子の資源を気にせずに食べたい!」という方におすすめしたいのが

「ミツバチの蜂の子」です。こちら



不敵な笑みをたたえるお兄さん。
それもそのはず、

「おらん家のハチの子」には
主に働かないミツバチのオスバチの蜂の子が使われているそうで
(雌雄の判断は働き蜂が作った巣の内径次第だそうです。
女王蜂は巣の内径を測定した後、未受精卵(オス)受精卵(メス)を貯精嚢を操作して産み分けます。)

働かないゴクツブシは
養蜂家の判断で、幼虫のうちに捨てられます。

この時、採集して煮て缶詰にしたのが、この「おらん家のハチの子」なのです。
養蜂の副産物ですし、オスバチだらけになった巣は勢力を失っていきますので
妥当な間引きでしょう。

コクや香りは肉食のハチの方がある気もしますが
ミツバチの幼虫、蛹も美味しくいただけます。

初めての昆虫食にはピッタリではないでしょうか。

そんなハチの子がいまならセール!
140gが1680円なのに、200gが1890円!
(追記;増税により値段UPしましたが)
たった210円で60gも余分についてくる。

ステキですね。
一人で食べるのはちょっと量が多いので

パーティーに持参すると
この不敵なお兄さん
(しかしモデル誰なんでしょうかね)

にやられること請け合いです。

さて、
「ミーハー者のためのハチノコ食」として
もう一つご紹介しましょう。
「ハチノマゴ」とも呼べる?存在
「ハチノスツヅリガ」です。


蜂の巣に侵入して、蜜と巣を食べてしまう厄介者ですが
逆に蜂の巣の廃材や、
コムギのフスマを使って簡単に養殖もできます。

こんなかんじで蜂の巣を「綴って」まゆを作ります。

ほぐすと中には蛹が。


成虫はこんな感じの地味な虫。


味見 いつものようにゆでポン酢で。

幼虫 フスマでの養殖したものを食べる。蜂の子よりシコシコしており、木の香りがしてとても美味しい。甘みもあるので蜂の巣の残渣で飼育したらもっと美味しそう。チャレンジしてみたい。


蛹 噛みごたえはピーナッツのうす皮程度でクリーミー。香りはうすく、油が強いナッツクリーム。いずれもおいしくたべられる。甘い香りはほとんどなし

成虫 モフモフとした鱗粉の食感が今ひとつだが、香ばしい成虫独特の香りが食欲をそそる。肉質な部分はほとんどないので満足度は低め。

このハチノスツヅリガは
「ハニーワーム」として爬虫類用の生き餌としても
売られています。
養蜂の迷惑になるので、もちろん屋内での飼育が推奨です。
成虫になっても
決して野外に放虫しないようにしましょう。

ゆくゆくは、養蜂の残渣をハチノスツヅリガで処理し、
「ハチノマゴ」を食べる文化になれば、と考えています。

もともと養蜂には殺虫剤が使えないので
養蜂のさらなる高度化に他の昆虫を利用することは比較的簡単にできるでしょう。

「ハチで受粉した果物」と「蜂蜜」と「ハチノコ」と「ハチノマゴ」

養蜂の高度化が成功すれば、よりハチとヒトのいい関係が築けるのではないでしょうか。

では、
養蜂の害虫である、ハチノマゴをハチノコから
どのように「隔離して飼育」するのか、
その未来の展望を、とある論文から覗き見てみましょう。

次の記事に続きます。



















Mushi_Kurotowa
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プロフィール
HN:
Mushikurotowa 
性別:
男性
趣味:
昆虫料理開発
自己紹介:
NPO法人食用昆虫科学研究会 理事長
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2008年「なぜ昆虫に食欲がわかないのか」研究を開始
食べたらおいしかったので「昆虫食で世界を救う方法とは」に変更。
昆虫の味の記載から、昆虫の特性を活かしたレシピの開発、イベント出展、昆虫食アート展覧会「昆虫食展」まで、
様々な分野の専門家との協力により、新しい食文化としての昆虫食再興を目指す。

2015年 神戸大学農学研究科博士後期課程単位取得退学
テーマは「昆虫バイオマスの農業利用へむけたトノサマバッタの生理生態学的解析」
2018年よりラオスでの昆虫食を含めた栄養改善プログラムに専門家として参加
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