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久々の長編になります。
今回は昆虫ではないものの「昆虫食性の食用資源」
としてこの先注目していきたい
「タランチュラ」の話をまとめましょう。
ウィキペディアによると
「タランチュラ」は俗称で、
元はヨーロッパの伝説の毒グモの名前だそうです。
噛まれると「タランティズム」という病を発症し、
タランテラという踊りを踊ると治るとか。覚えておきましょう。
タランテラ
踊りましょう。
その伝承から、
ヨーロッパ人が新大陸で見た大きなクモをタランチュラと呼ぶようになり
次第にオオツチグモ科をざっくりと示す名称になったとのこと。
低緯度地域に広く分布しており、形はよく似ていますが
地上性から半地中性、乾燥地域から高湿度まで
地域に合わせて様々な生態の分化が見られます。
食用としては、特にカンボジアでよく食べられており、
炭火で毛を焼き落とし、カニのように山盛りに売られています。
写真 吉田誠
味もカニに似ており
大変美味で、多くの昆虫食未経験の人にも親しみやすい味です。
カンボジアでは穴に潜むタランチュラを素手で掴み、捕獲しています。
2013年のFAO報告書には「少なくなっているというインタビューもある」とのことですが
現地におけるタランチュラの捕獲量、現存量については調査されていません。
この先、
人口が増えた結果、もしくは昆虫食が人気になった結果、
美味しいタランチュラが乱獲されてしまいかねません。
肉食で、数年かかる性成熟までの期間を考えると、一度乱獲されてしまうと
その回復は困難になるでしょう。
当然「養殖化」が望まれますが、どのように進めるべきでしょうか。
そのことについても考えていきましょう。
私が初めて見たタランチュラは
映画「ホーム・アローン」でした。
クリスマスのバカンスに向かう大家族。
そこで取り残されてしまった末っ子、ケビン少年は
バカンスで留守の家を狙う泥棒二人組に
独自の方法で応戦する。
その中でキーとなるタランチュラ。
ケビンの長兄、ジャイアン風の少年が
飼育しているのですが、
強そうで毒がありそうでキケンな風貌。
劇中ではケビン少年がそっと掴み、うまく利用します。
ココで思うのは
「そんなにキケンな虫を映画に使って大丈夫?」ということ。
はい。大丈夫です。
タランチュラの仲間は強い毒を持ちません。
獲物を捉えるときに消化液を出しますが、
人が噛まれても大事にはなりませんし
第一ほとんど噛みません。手乗りもOKです。
移入して問題になっている
セアカゴケグモなどの神経毒アリのクモと比べると
はるかに安全です。
逆に言うと
「映画で使われる生物は安全なものが多い」といえるでしょう。
カラス研究者の方が
「ヒッチコックの映画・鳥によって大量のカラスに対する嫌悪感を植え付けてしまった」
とつぶやいておられましたが
映画ではそのビジュアルの強さのわりに、安全なものが喜ばれます。
ですが、その安全性が好まれて映画に使われ続けてしまうと、
その虫がキケンなもの、との印象を強くしてしまうのです。
タランチュラに対する嫌悪感は
「映像制作者が植えつけたもの」と言っても
過言ではないのかもしれません。
話は少し逸れますが、
瀬戸口明久 著 「害虫の誕生」
によると
日本では1960年代
ペストやチフスを防止する、といった公衆衛生の概念を
一般に知らせるために「ハエ取りデー」というキャンペーンを行ったそうです。
これは一日にとれたハエの数を競争し、一番多かったヒトに商品を与えるというもの。
専門家からはその効果を疑問視する声もあったのですが
(蔓延地域でないのにハエを捕獲することに意味はあるか。
発生地ではなく成虫を集めても効果は低いのでは 等)
その結果、
チフスではなく、ハエにだけ嫌悪感を持つ人が増えたのは
言うまでもありません。
また、
「幼少期、虫を背中に入れられて以来虫が嫌い」という人もいます。
この時、本人と虫は被害者で、加害者は入れたヒトです。
このことから、
「嫌悪感」の責任を負うのは加害者ではなく、近くにいる「弱者」であることが類推できます。
(人間社会においても、そのひずみによるストレスは、しばしば加害者ではなく弱者に向けられますね)
物言わぬ。
そして動物倫理を顧みられない彼らに
責任を追わせ過ぎではないでしょうか。
話を戻します。
タランチュラは、ペットとしても人気で
恐らく欧米では「嫌悪の対象を愛でる」という
ロック・マッチョ的な嗜好もあるとは思いますが
日本では単純に愛でてしまう方も多いようです。
手のひらをそっと歩くジェントルマン。
赤い密林に玉の水が跳ねる様子。美しい…
こちらを見てさっと捕食するハンターとしての才能。
いやぁ。 いいもんですね。
抜け殻もこんなに美しい。(スキャナ写真を加工)
さて、この
チリアンコモンとかローズヘアー等と言われる南米産のタランチュラ
Grammostola rosea
国内でブリードしている方から、
「食用に」ということで
生まれたてのベビーを譲っていただいたものです。
それから2年、
バッタを与えて、研究室の片隅ですくすくと育ち、
研究所の一般公開ではバッタとともにアイドルとなり、
とうとうこの日を迎えました。
感慨深いですね。
味見です。
といっても揚げて何度か食べたことがあるので、
今回は新しい料理法への挑戦でもあります。
以前の記事で、「毛を剃る」ことで毛虫の食感の悪さを克服しました。
今回も、
冷凍したあと、毛を剃ることで食感を向上しようと思います。
剃る前
剃ったあと。
表面に見える毛は二重になっていることがわかります。
赤い毛の一本一本が見えるものと、
みっしりと密生していてビロードのような感触の焦げ茶の毛です。
綺麗に剥かれた腹部は巨峰のよう。おいしさが詰まっています。
今回は「グラタン」にしようと思いました。
シーフードグラタン、ならぬフォレストフードグラタン、になります。
ところが、
今回はレシピの考案がなかなか大変です。
タランチュラの表皮をサクサクと仕上げたい所ですが、
グラタンのソースがかかったところは、しっとりしてしまいます。
うまく分離して焼き、かつ食べるときにサクサクジュワ~っと合流するような
そんな料理はないか、考えました。
次回に続きます。
今回は昆虫ではないものの「昆虫食性の食用資源」
としてこの先注目していきたい
「タランチュラ」の話をまとめましょう。
ウィキペディアによると
「タランチュラ」は俗称で、
元はヨーロッパの伝説の毒グモの名前だそうです。
噛まれると「タランティズム」という病を発症し、
タランテラという踊りを踊ると治るとか。覚えておきましょう。
タランテラ
踊りましょう。
その伝承から、
ヨーロッパ人が新大陸で見た大きなクモをタランチュラと呼ぶようになり
次第にオオツチグモ科をざっくりと示す名称になったとのこと。
低緯度地域に広く分布しており、形はよく似ていますが
地上性から半地中性、乾燥地域から高湿度まで
地域に合わせて様々な生態の分化が見られます。
食用としては、特にカンボジアでよく食べられており、
炭火で毛を焼き落とし、カニのように山盛りに売られています。
写真 吉田誠
味もカニに似ており
大変美味で、多くの昆虫食未経験の人にも親しみやすい味です。
カンボジアでは穴に潜むタランチュラを素手で掴み、捕獲しています。
2013年のFAO報告書には「少なくなっているというインタビューもある」とのことですが
現地におけるタランチュラの捕獲量、現存量については調査されていません。
この先、
人口が増えた結果、もしくは昆虫食が人気になった結果、
美味しいタランチュラが乱獲されてしまいかねません。
肉食で、数年かかる性成熟までの期間を考えると、一度乱獲されてしまうと
その回復は困難になるでしょう。
当然「養殖化」が望まれますが、どのように進めるべきでしょうか。
そのことについても考えていきましょう。
私が初めて見たタランチュラは
映画「ホーム・アローン」でした。
クリスマスのバカンスに向かう大家族。
そこで取り残されてしまった末っ子、ケビン少年は
バカンスで留守の家を狙う泥棒二人組に
独自の方法で応戦する。
その中でキーとなるタランチュラ。
ケビンの長兄、ジャイアン風の少年が
飼育しているのですが、
強そうで毒がありそうでキケンな風貌。
劇中ではケビン少年がそっと掴み、うまく利用します。
ココで思うのは
「そんなにキケンな虫を映画に使って大丈夫?」ということ。
はい。大丈夫です。
タランチュラの仲間は強い毒を持ちません。
獲物を捉えるときに消化液を出しますが、
人が噛まれても大事にはなりませんし
第一ほとんど噛みません。手乗りもOKです。
移入して問題になっている
セアカゴケグモなどの神経毒アリのクモと比べると
はるかに安全です。
逆に言うと
「映画で使われる生物は安全なものが多い」といえるでしょう。
カラス研究者の方が
「ヒッチコックの映画・鳥によって大量のカラスに対する嫌悪感を植え付けてしまった」
とつぶやいておられましたが
映画ではそのビジュアルの強さのわりに、安全なものが喜ばれます。
ですが、その安全性が好まれて映画に使われ続けてしまうと、
その虫がキケンなもの、との印象を強くしてしまうのです。
タランチュラに対する嫌悪感は
「映像制作者が植えつけたもの」と言っても
過言ではないのかもしれません。
話は少し逸れますが、
瀬戸口明久 著 「害虫の誕生」
によると
日本では1960年代
ペストやチフスを防止する、といった公衆衛生の概念を
一般に知らせるために「ハエ取りデー」というキャンペーンを行ったそうです。
これは一日にとれたハエの数を競争し、一番多かったヒトに商品を与えるというもの。
専門家からはその効果を疑問視する声もあったのですが
(蔓延地域でないのにハエを捕獲することに意味はあるか。
発生地ではなく成虫を集めても効果は低いのでは 等)
その結果、
チフスではなく、ハエにだけ嫌悪感を持つ人が増えたのは
言うまでもありません。
また、
「幼少期、虫を背中に入れられて以来虫が嫌い」という人もいます。
この時、本人と虫は被害者で、加害者は入れたヒトです。
このことから、
「嫌悪感」の責任を負うのは加害者ではなく、近くにいる「弱者」であることが類推できます。
(人間社会においても、そのひずみによるストレスは、しばしば加害者ではなく弱者に向けられますね)
物言わぬ。
そして動物倫理を顧みられない彼らに
責任を追わせ過ぎではないでしょうか。
話を戻します。
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恐らく欧米では「嫌悪の対象を愛でる」という
ロック・マッチョ的な嗜好もあるとは思いますが
日本では単純に愛でてしまう方も多いようです。
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こちらを見てさっと捕食するハンターとしての才能。
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この記事にコメントする
Re:無題
不快なんて全く思いません!ありがとうございます。
わざわざ公開しているので、もっとメンタルに来るようなコメントでも大歓迎ですよ。
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プロフィール
HN:
Mushikurotowa
HP:
性別:
男性
趣味:
昆虫料理開発
自己紹介:
NPO法人食用昆虫科学研究会 理事長
このブログは以下に移動しました。http://mushi-sommelier.net
2008年「なぜ昆虫に食欲がわかないのか」研究を開始
食べたらおいしかったので「昆虫食で世界を救う方法とは」に変更。
昆虫の味の記載から、昆虫の特性を活かしたレシピの開発、イベント出展、昆虫食アート展覧会「昆虫食展」まで、
様々な分野の専門家との協力により、新しい食文化としての昆虫食再興を目指す。
2015年 神戸大学農学研究科博士後期課程単位取得退学
テーマは「昆虫バイオマスの農業利用へむけたトノサマバッタの生理生態学的解析」
2018年よりラオスでの昆虫食を含めた栄養改善プログラムに専門家として参加
このブログは以下に移動しました。http://mushi-sommelier.net
2008年「なぜ昆虫に食欲がわかないのか」研究を開始
食べたらおいしかったので「昆虫食で世界を救う方法とは」に変更。
昆虫の味の記載から、昆虫の特性を活かしたレシピの開発、イベント出展、昆虫食アート展覧会「昆虫食展」まで、
様々な分野の専門家との協力により、新しい食文化としての昆虫食再興を目指す。
2015年 神戸大学農学研究科博士後期課程単位取得退学
テーマは「昆虫バイオマスの農業利用へむけたトノサマバッタの生理生態学的解析」
2018年よりラオスでの昆虫食を含めた栄養改善プログラムに専門家として参加
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