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気づいたら外は冬。
バッタもめっきり減ってしまいました。
今回は養殖昆虫。
カブラハバチ Athalia rosae です。
ハチといえば社会性のミツバチやスズメバチを想像しますが、
ハバチはその名の通り葉を食べるハチの一種。単独で暮らします。
そして刺す針を持ちません。
日本産のハバチは720種記載され、
未記載種を含めると1000種を超えると言われる大きなグループです。
バッタ目が370種ですから、
植食性の昆虫の中でも開拓しがいのある、
そして分類が難しいグループです。
今回は
養殖された研究用のものを分けていただきました。
ハバチは様々な食草に対応し、それら植物の防御物質に巧みに対応しています。
カブラハバチは多くの生物にとって毒であるアブラナ科の
毒を巧みに利用しています。
この利用法はなかなかトリッキーです。
直接的な毒成分は、イソチオシアネート
という化合物で、
これは植物にとっても毒なので、
通常は糖と結合した数種の前駆体(総称してグルコシノレート)が液胞に隔離されています。
これが細胞ごと昆虫などに破壊されると、細胞内にある酵素ミロシナーゼが
反応し、イソチオシアネートを生成するのです。
イソチオシアネートは
ヒトが食べても問題なく、むしろカラシとして好む味なので、
ヒトは多くのアブラナ科の植物を野菜として品種改良しました。
大根おろしをすりおろしてからちょっと置くと辛くなるのは、
この酵素反応に寄るものです。
そのため、殺虫剤が開発される前は、
アブラナ科の作物は自前の毒成分で
葉の食害を防いでいたのです。
この
カブラハバチはアブラナ科に適応した天敵で
その適応方法はなんと、血液(体液)中に
グルコシノレートを輸送してしまうのです。
すりつぶした植物に含まれるミロシナーゼが、
毒素イソチオシアネートを生成する前に、
消化管から体液中に移動させてしまうことで、
毒の生成を抑え、植物の栄養成分を悠々と消化することができるのです。
今回読んだ論文はコチラ。
別の昆虫、コナガの仲間は
ヒトと同じように分解しているそうなので、
昆虫によって植物毒の回避方法は様々です。
このカブラハバチにとっては
毒の基質を積極的に取り込むことによって
捕食者への毒として機能させることが出来るので
一石二鳥で素晴らしいですね。
蛇足ですが、
このカブラハバチのカラシ油輸送を止める遺伝子操作をすると
彼らは何の影響もなく元気に生きているそうです。
なので、毒に耐える、しかもそれを利用する、
という二段構えといえそうです。
ということで、
アブラナ科の植物毒を好んで食べるヒトと
それを体液に溜め込む
カブラハバチとの出会いは必然といえるでしょう。
味としては
体液に濃縮されたカラシ成分が期待されます。
味見
期待したほどのカラシ味はなく、茹でた大根菜を白和えにしたような、柔らかくタンパクな味。
プチッとした食感と柔らかさが好ましいので、ちりめんじゃこなどと和えて食べると美味しそう。
おっと
勘違いをしていました。
辛味成分、イソチオシアネートは生成していないので
グルコシノレートの味が味わえるはずです。
なので、
「ゆでた大根菜」は酵素を熱で失活させる調理なので
まさにグルコシノレートを舌で検出したといえるでしょう。
セイヨウカラシナというもっと辛味成分の強い食草も食べるので、
薬味として使うのならば辛味を追加したい所です。
また、体液と酵素を反応させる、という意味で
すりつぶして消化管と体液を触れさせ、
しばらくおいておくと辛味が増えるのかもしれません。
そして
このグルコシノレート
癌のリスクを下げる、アレルギーのリスクを下げる効果があるようです。
健康食品のマカ(アブラナ科)も
グルコシノレートの効果を期待したもの。
食べてみましたが。
まさにカブラハバチの味。
濃縮されたグルコシノレートが
含まれている気がします。
ということで、
酵素反応していない、
「生きた(意味深)グルコシノレート」
を食べるには、カブラハバチが一番、といえるでしょう。
そう考えると
サクラを食べる幼虫を今までにいくつか食べましたが
サクラケムシ
に比べ
モモスズメやカレハガの方が
香りが少なく感じました。
サクラに含まれる桜の香り成分、
クマリンも毒ですので
前者は積極的に体液に輸送して利用し
後者は影響のないよう分解していたと考えることができます。
毒植物×単食性昆虫の組み合わせは、
ヒトの植物利用を更に発展させるものといえるでしょう。
今回の記事は
農業生物資源研究所
主任研究員 畠山 正統 博士の
ご協力を頂きました。
御礼申し上げます。
また、カブラハバチは
さらにステキな性決定様式や
単為発生の条件とか・三倍体とか
遺伝学的にヒャッホイな性質があるので、
また続報ができ次第紹介させて頂きます。
やはり基礎的な研究の進んでいる昆虫は
「話が早い」というか。
深みがありますね。
すべての昆虫基礎研究者に
協力をいただけるよう、精進したいと思います。
バッタもめっきり減ってしまいました。
今回は養殖昆虫。
カブラハバチ Athalia rosae です。
ハチといえば社会性のミツバチやスズメバチを想像しますが、
ハバチはその名の通り葉を食べるハチの一種。単独で暮らします。
そして刺す針を持ちません。
日本産のハバチは720種記載され、
未記載種を含めると1000種を超えると言われる大きなグループです。
バッタ目が370種ですから、
植食性の昆虫の中でも開拓しがいのある、
そして分類が難しいグループです。
今回は
養殖された研究用のものを分けていただきました。
ハバチは様々な食草に対応し、それら植物の防御物質に巧みに対応しています。
カブラハバチは多くの生物にとって毒であるアブラナ科の
毒を巧みに利用しています。
この利用法はなかなかトリッキーです。
直接的な毒成分は、イソチオシアネート
という化合物で、
これは植物にとっても毒なので、
通常は糖と結合した数種の前駆体(総称してグルコシノレート)が液胞に隔離されています。
これが細胞ごと昆虫などに破壊されると、細胞内にある酵素ミロシナーゼが
反応し、イソチオシアネートを生成するのです。
イソチオシアネートは
ヒトが食べても問題なく、むしろカラシとして好む味なので、
ヒトは多くのアブラナ科の植物を野菜として品種改良しました。
大根おろしをすりおろしてからちょっと置くと辛くなるのは、
この酵素反応に寄るものです。
そのため、殺虫剤が開発される前は、
アブラナ科の作物は自前の毒成分で
葉の食害を防いでいたのです。
この
カブラハバチはアブラナ科に適応した天敵で
その適応方法はなんと、血液(体液)中に
グルコシノレートを輸送してしまうのです。
すりつぶした植物に含まれるミロシナーゼが、
毒素イソチオシアネートを生成する前に、
消化管から体液中に移動させてしまうことで、
毒の生成を抑え、植物の栄養成分を悠々と消化することができるのです。
今回読んだ論文はコチラ。
別の昆虫、コナガの仲間は
ヒトと同じように分解しているそうなので、
昆虫によって植物毒の回避方法は様々です。
このカブラハバチにとっては
毒の基質を積極的に取り込むことによって
捕食者への毒として機能させることが出来るので
一石二鳥で素晴らしいですね。
蛇足ですが、
このカブラハバチのカラシ油輸送を止める遺伝子操作をすると
彼らは何の影響もなく元気に生きているそうです。
なので、毒に耐える、しかもそれを利用する、
という二段構えといえそうです。
ということで、
アブラナ科の植物毒を好んで食べるヒトと
それを体液に溜め込む
カブラハバチとの出会いは必然といえるでしょう。
味としては
体液に濃縮されたカラシ成分が期待されます。
味見
期待したほどのカラシ味はなく、茹でた大根菜を白和えにしたような、柔らかくタンパクな味。
プチッとした食感と柔らかさが好ましいので、ちりめんじゃこなどと和えて食べると美味しそう。
おっと
勘違いをしていました。
辛味成分、イソチオシアネートは生成していないので
グルコシノレートの味が味わえるはずです。
なので、
「ゆでた大根菜」は酵素を熱で失活させる調理なので
まさにグルコシノレートを舌で検出したといえるでしょう。
セイヨウカラシナというもっと辛味成分の強い食草も食べるので、
薬味として使うのならば辛味を追加したい所です。
また、体液と酵素を反応させる、という意味で
すりつぶして消化管と体液を触れさせ、
しばらくおいておくと辛味が増えるのかもしれません。
そして
このグルコシノレート
癌のリスクを下げる、アレルギーのリスクを下げる効果があるようです。
健康食品のマカ(アブラナ科)も
グルコシノレートの効果を期待したもの。
食べてみましたが。
まさにカブラハバチの味。
濃縮されたグルコシノレートが
含まれている気がします。
ということで、
酵素反応していない、
「生きた(意味深)グルコシノレート」
を食べるには、カブラハバチが一番、といえるでしょう。
そう考えると
サクラを食べる幼虫を今までにいくつか食べましたが
サクラケムシ
に比べ
モモスズメやカレハガの方が
香りが少なく感じました。
サクラに含まれる桜の香り成分、
クマリンも毒ですので
前者は積極的に体液に輸送して利用し
後者は影響のないよう分解していたと考えることができます。
毒植物×単食性昆虫の組み合わせは、
ヒトの植物利用を更に発展させるものといえるでしょう。
今回の記事は
農業生物資源研究所
主任研究員 畠山 正統 博士の
ご協力を頂きました。
御礼申し上げます。
また、カブラハバチは
さらにステキな性決定様式や
単為発生の条件とか・三倍体とか
遺伝学的にヒャッホイな性質があるので、
また続報ができ次第紹介させて頂きます。
やはり基礎的な研究の進んでいる昆虫は
「話が早い」というか。
深みがありますね。
すべての昆虫基礎研究者に
協力をいただけるよう、精進したいと思います。
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Re:無題
コメントありがとうございます!
遺伝学ってすごいですね。
不妊の三倍体を作ることができるので、
体が大きく、次世代が流出しない、という素晴らしい性質のある昆虫を
生産できそうなのです。また進捗がありましたらここにご報告します!
遺伝学ってすごいですね。
不妊の三倍体を作ることができるので、
体が大きく、次世代が流出しない、という素晴らしい性質のある昆虫を
生産できそうなのです。また進捗がありましたらここにご報告します!
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プロフィール
HN:
Mushikurotowa
HP:
性別:
男性
趣味:
昆虫料理開発
自己紹介:
NPO法人食用昆虫科学研究会 理事長
このブログは以下に移動しました。http://mushi-sommelier.net
2008年「なぜ昆虫に食欲がわかないのか」研究を開始
食べたらおいしかったので「昆虫食で世界を救う方法とは」に変更。
昆虫の味の記載から、昆虫の特性を活かしたレシピの開発、イベント出展、昆虫食アート展覧会「昆虫食展」まで、
様々な分野の専門家との協力により、新しい食文化としての昆虫食再興を目指す。
2015年 神戸大学農学研究科博士後期課程単位取得退学
テーマは「昆虫バイオマスの農業利用へむけたトノサマバッタの生理生態学的解析」
2018年よりラオスでの昆虫食を含めた栄養改善プログラムに専門家として参加
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2008年「なぜ昆虫に食欲がわかないのか」研究を開始
食べたらおいしかったので「昆虫食で世界を救う方法とは」に変更。
昆虫の味の記載から、昆虫の特性を活かしたレシピの開発、イベント出展、昆虫食アート展覧会「昆虫食展」まで、
様々な分野の専門家との協力により、新しい食文化としての昆虫食再興を目指す。
2015年 神戸大学農学研究科博士後期課程単位取得退学
テーマは「昆虫バイオマスの農業利用へむけたトノサマバッタの生理生態学的解析」
2018年よりラオスでの昆虫食を含めた栄養改善プログラムに専門家として参加
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