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以前に
成虫ばかりの巣を駆除して味見したのですが
今回は幼虫とサナギです。
先日 昆虫料理研究会主催のバッタ会に行ってきました。
多摩川の河川敷でバッタを採り、その場で揚げて食べる野外イベント。

この時に常連の昆虫食エキスパートのご夫婦が
キイロスズメバチを差し入れてくださいました。

キイロスズメバチ (ケブカスズメバチ) Vespa simillima 幼虫


味見
オオスズメバチに比べやや臭みがつよい。脂質が多くコクが強い味。体内の未消化物の割合も大きいので蛹になってからがオススメ。といっても巣の駆除で出た幼虫はサナギまで育たないし、というジレンマ。ともかく美味しく食べましょう。

続いてサナギ 太陽光の下で見ると
生命力や美味しそうな感じが際立ちますね。



味見
やはりコチラのほうが美味しい。
すこしカニ味噌系の動物質が嫌気分解したような
香りがするので薬味や味噌と一緒に食べたいところ。

今回はその場で調理するのと
巣から出された幼虫やサナギはすぐに傷んでしまうので
この場で味見をしました。

調理に集中してこっちには目もくれない参加者のみなさま


私は 
趣味の団体、昆虫料理研究会と
学術の団体、食用昆虫科学研究会の両方に参加しています。

見比べて気づくのは
「学問はある物事の楽しみ方についての一つの切り口にすぎない」
という点です。

もちろん学術的に価値のあることを見出すことは、
自身の主観を廃し
再現性のあるものを発見することですので
他人や将来にとって利用しやすい、意義深いことです。
そのために社会的リソースを使って保存すべきなのです。

ただ、
研究者本人は
そもそも楽しくてやっていることが
ほとんどだと思います。

その
「楽しみ方としての学問」は
多様な昆虫食の楽しみ方の一つの形でしかなく
他の楽しみ方を受け入れ、膨らませることで
より魅力を増すことでしょう。

この趣味の会で 今までに出会った方は
「食虫植物が好きで彼らと同じものを食べてみたくなった」
「週末イベントを検索していたらなんか辿り着いた」
「肉は気持ち悪くて食べられないが虫なら食えるから来た」
「バッタが採りたくてきた」

などなど
楽しみ方は多様です。

そう考えると
学問の世界を紹介する際に 論文を平易な文章に書き換えるだけではなく
研究者本人の人柄や情熱 研究対象の愛らしさなど
非学術的な魅力についてももっと採り入れたいところです。

もちろん研究者の本分は論文を書くことですので、
それを妨げるようなことがあってはなりません。

そういう意味で、昆虫料理研究会・食用昆虫科学研究会の
2つのグループは相互に関わりあいながら

総合的な昆虫食啓蒙グループとして
活動できれば、と思います。

その将来の形として羨望の眼差しを向けている団体があります。

「なにわホネホネ団」

です。


(HPより引用)
2003年に博物館の学芸員・アルバイトの3名から始まった「なにわホネホネ団」。2004年の「大阪自然史フェスティバル」に出展したのを契機に、募集もしていないのに「参加したい!」という人が集まりだしました。今では小学校前のコドモ団員から様々な職種のオトナ団員まで、ホネ好きが集まって骨格標本作りをしています。

本まで! 


彼らは
学術・芸術を問わず骨格に興味のある人材を集め、
博物館に収蔵する標本の作成や
依頼に応じてメンバーを派遣し、様々なイベントを行っています。

学術をベースとしつつも、生物への畏敬の念を持って行うことで
多様な楽しみ方を模索することで
独自の魅力を発信しています。

まだ
ホネホネ団の方と直接お知り合いになれてはいないのですが
そのうち
コンタクト(あわよくば入団)を
してみたいと思います。


昆虫食への注目の高まりとともに、
我々の団体にもいくつか依頼をいただけるのですが
メンバー的にも、内容的にもなかなか期待に答えることが出来ていません。

ホネホネ団に学んで
しっかりした団体を作っていきたいですね。
まずは拠点となる博物館探しでしょうか。









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キク科の雑草にいて
ひと目で気づいてしまいました。
気づいたからには採集しなければなりません。

黄色とネイビーのツートンカラー。
たいへんビビッドです。


ホソバセダカモクメ Cucullia fraterna Butler



久々の美味しそうじゃない幼虫。食欲がわかない。
毒がありそう。

マダラチョウに似てますね。

毒があってくれ、食べられない種でいてくれ、

との願いも虚しく

「毒があるとの報告はない」
「毒があるとの報告はない」

…え

一番ヤなパターンですね
もし

私の味見が
毒があるとの報告の第一報」
になれば、嬉しくもあり、悲しくもあり…

ともかく食べてみましょう。

味見
!!アヤモクメキリガに似たオガクズ系のいい香り、コクのある味、
歯切れのよい外皮がとてもよい。美味しい!見ためではわからないものですね。


これがマダラチョウなどの
毒イモムシを真似た柄だとすると

有毒昆虫の見ためだけを擬態することで
毒のコストやリスクを負うこと無く、捕食者から逃れることが出来る
「ベイツ型擬態」に分類されるでしょう。

逆に、
ホソバセダカモクメも実は毒を持っていて
他の毒昆虫に似ている柄を持つことを、
ミューラー型擬態と言います。

毒昆虫同士を似せることで、
捕食者により強く
有毒であることを印象づける効果があります。

今夜
なにもなければ

ベイツ型擬態

何かあれば

ミューラー型擬態。

とてもわかりやすいですね(棒)
鱗翅目の幼虫は形もイモムシ型で嫌悪感がすくなく、見ためにも食べやすい。

そう思っていたこともありました。

何事も例外はありますね。
そうです。 シャチホコガ Stauropus fagi です。

シャチホコガ科は以前に 
モンクロシャチホコ タカサゴツマキシャチホコなど、ケムシ型の幼虫・サナギを食べてきました。

いずれも見ためがいいとはいえない虫たちでしたが、
比較的味がよく、スズメガ科、ヤママユガ科に次ぐ美味しい鱗翅目の科が
開拓できる可能性を考えると、食べないわけにはいけません。

このブログそのものが既に閲覧注意のレベルだそうですが、
今回は特に閲覧注意とさせていただきます。
何しろ異形です。昆虫学の権威、極度の虫好きの私のボスが、
「初めて見た日の夜はうなされた」とのことですから、

異質な形態をした幼虫といえるでしょう。

こちら。
 
あなた、フェイスハガーですよね。


キシャー


幼虫とは思えないすごい造形です。
動画はコチラ。

引き続き パシフィック・リム風になってますが。。。
すごい造形と、動きです。

これで肉食であれば、攻撃性の高いデザインにも納得なのですが、
残念ながらクヌギの葉を食べるおとなしい虫です。

見た感じ、尻尾はへびの頭に
長い腕と頭はクモに擬態しているのではないか、と思えてきます。

昆虫のデザインは
ヒトの想像をやすやすと超えてくるのがすごいですね。
魅力でもあり、恐怖を感じるヒトもいるでしょう。

さて

このブログの本分、味見と参ります。

味見
なぜか頭部に酸味がある。
外皮は見た目に反してわりと柔らかく、
内部に脂肪はほとんどついていないため、
消化管のクヌギを出すとぺちゃんこになってしまう。味はけっこう普通。
ナナフシモドキにも似た、エビと枯葉っぽさが同居したよくある虫の味。











近頃冷凍庫が手狭になってきたことから
写真撮影後に食べるタイミングを逃した昆虫も、きちんと味見していきたいと思います。

こちら
オオゾウムシ Sipalinus gigas
以前に煎餅にして食べたのですが、

振り返ってみると
このブログの共通調理法である茹でポン酢で
食べていなかったので再度挑戦。



見るからに固そうです。

味見
食べる前から敗戦色濃厚(口に残ってかみ切れない、飲み込めない)
のかと思ったのですが。
硬すぎてカリカリして美味しく食べられる。内部の甘みはやさしく、香ばしさも相まって
ゾウムシ・カミキリムシ系の好ましい味。
食べきるのにかなり時間が掛かるが、珍味のようでずっと噛んでいると
口に残らず最後まで食べられる。外皮は硬すぎると逆に食べられることがわかった。

何事もやってみないとわからないですね。

ヒロヘリアオイラガ Parasa lepida


イラガ科の幼虫です。
1920年代の外来種で、近年勢力を拡大しているとのこと。

「明らかに危険」と蛍光色で教えてくれるケムシです。
それでも葉の裏に隠れていることがあるので、ご注意下さい。

ヒロヘリアオイラガの臨床図(ドクターご本人が体を張った経過観察!)
もある「虫と皮膚炎」によると


毒棘に触れると先端部が皮膚に刺さり、毒液が注入される。とのこと。
棘が刺さるには、イラガ自身が生きていることが重要なので、
死んだり、脱皮直後ではこのタイプの皮膚炎は起こらないとのこと。

普通のイラガ科の棘はこのタイプだけですので、
「スズメのショウベンダコ」と呼ばれるイラガの蛹を
繭のまま炒って、ピスタチオのように殻を割って美味しく食べられます。
イラガは冬に繭で越冬しますので、
食害に悩まされている方は、冬のうちに採集し、炒って食べると良いでしょう。


ところが、
このヒロヘリアオイラガ、なんと
二段構えなのです。

尻の黒い部分に毒刺毛があり、これは生死にかかわらず
触れると皮膚炎を起こすタイプです。
この毛を繭を作るときに、周りに付着させることで、
ほかのイラガでは無防備なサナギ時代を「毒あり」で過ごすのです。

こわいですね。

ということでイラガの中でも、ヒロヘリアオイラガは
たとえサナギの時期でも食べるのに適さない、味見が困難な虫、といえるでしょう。
お気をつけ下さい。

Mushi_Kurotowa
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プロフィール
HN:
Mushikurotowa 
性別:
男性
趣味:
昆虫料理開発
自己紹介:
NPO法人食用昆虫科学研究会 理事長
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2008年「なぜ昆虫に食欲がわかないのか」研究を開始
食べたらおいしかったので「昆虫食で世界を救う方法とは」に変更。
昆虫の味の記載から、昆虫の特性を活かしたレシピの開発、イベント出展、昆虫食アート展覧会「昆虫食展」まで、
様々な分野の専門家との協力により、新しい食文化としての昆虫食再興を目指す。

2015年 神戸大学農学研究科博士後期課程単位取得退学
テーマは「昆虫バイオマスの農業利用へむけたトノサマバッタの生理生態学的解析」
2018年よりラオスでの昆虫食を含めた栄養改善プログラムに専門家として参加
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