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今年もマメハンミョウの季節がやってまいりました。
猛毒カンタリジンを体液に含み、幼虫はバッタの卵、成虫はマメ科の葉っぱをたべる変な虫です。
体色も独特でストライプのスーツを着た覆面レスラーのよう。
昆虫食を始めるにあたって
「美味しい昆虫」よりも重要かもしれません
「食べたらいけない昆虫」
多く質問されることなので、ココにまとめておきましょう。
カテゴリA 体液に強い毒をもつ昆虫
ツチハンミョウ
マメハンミョウ
アオカミキリモドキ
アオバアリガタハネカクシ
これらは強力な炎症性の毒をもつので、
食べるのは諦めたほうが良さそうです。
カテゴリB 強い毒をもつ植物を食べている昆虫
アサギマダラ
オオゴマダラ
カバマダラ
キョウチクトウスズメ
エリサン(キャッサバ飼育)
上記四種は食草の毒成分を成虫まで持ち越すことが知られています。
エリサンは毒草キャッサバで育てた後、消化管内容物がなくなる前蛹や蛹なら
食べられるそうです。これについても引き続き調査中です。
カテゴリC 捕獲時の危険度が高い昆虫
オオスズメバチ
イラガ
チャドクガ
セアカゴケグモ
外来種セアカゴケグモは咬むことで神経毒を注入します。
イラガやチャドクガは強い毒刺毛を持つことで知られています
オオスズメバチも攻撃性が高く、毒も強力です。
スズメバチ類は駆除業者や専門家にお願いするとよいでしょう。
イラガは冬の越冬蛹だけ無毒なので、
繭ごと炒ってピスタチオのように食べられます。
カテゴリD 消化管に感染性細菌が多く含まれる昆虫
イエバエ
ゴキブリ類
オサムシ類
シデムシ類
ゴミムシ類
感染性の細菌は生きたまま体内に入ると食中毒を起こすだけでなく、
加熱前に繁殖した時に生成された毒素だけでも中毒を起こす危険があるので
腐肉食性の昆虫には気をつけたいものです。内臓を取り除くなどの
下処理が必要になるかもしれません
実はオサムシ科の中には
穀物食や、肉食のつよいものがあるそうなので、
きちんと同定すれば食べられるものもあると思います。
オサムシ科であるハンミョウは(マズいですが)一応食えましたし。
なので「未開拓」としておきます
カテゴリE 味の悪い昆虫
苦味=弱い毒であることもあります。
慎重に味見をして、無理な場合は諦めましょう。
テントウムシ
カブトムシ
ツマグロヒョウモン
ブドウスカシクロバ
セスジスズメ
ベニスズメ
ハンミョウ
ヨコヅナサシガメ
カテゴリF 長期間単一のものを食べることで初めて毒性を発揮する昆虫
アナフェ (食用昆虫科学研究会のHP)
アフリカのギョウレツケムシ科のガ「アナフェ」
がチアミン(ビタミンB1)欠乏症を引き起こす
耐熱性チアミナーゼを含むことが2000年、
日本の研究チームによって明らかにされました。
昆虫食がキケン、というよりは
単一食の危険は昆虫食にもある、といえるでしょう。
昆虫を単一で大量に食べる文化はまだ少ないですが、
養殖昆虫食が始まると同様の事象が起こる可能性があります
昆虫の家畜化については、既存の食品安全基準を元に慎重に進めたいものですね。
参考文献
Dr.夏秋の臨床図鑑 虫と皮膚炎
皮膚に炎症が起こる、ということは食べた時、粘膜にも炎症が起こる可能性が高くあります。
更に、代謝されることで初めて毒性を発揮するものもあり、
皮膚炎を起こさないからといって毒性がないともかぎりません。
参考文献として使用させていただきました。ありがとうございます。
ブドウトラカミキリ Xylotrechus pyrrhoderus pyrrhoderus Bates
近所のぶどう棚で発見。毒々しい配色ですが無毒。
背中の模様がXなので、近縁種のクビアカトラカミキリではなくブドウトラカミキリと判断しました。以前食べた同じトラカミキリ属のトラフカミキリは美味しかったので、期待です。
味見・茹でポン酢
小型のカミキリのため比較的食べやすい。口に入れた直後は体液の甘みが強く、
くさみのないクリアな味わい。口に残った外皮はまったく味がなく、後半は味気ない残念な感じ。
軽く揚げることで外皮が食べやすくなると思われる。
ブドウトラカミキリはその名の通りブドウの枝に入り込んで食害する害虫です。
これだけ味が良いのだから食べればいい、とは思うのですが、
ブドウを農薬なしで育てると減収率が66%、6割以上が失われてしまうので
農業としては殺虫剤なしにすることは難しいのでしょう。
無農薬をうたう有機農業の方で、
害虫駆除を「食べて」やりたい
という方にまだお会いしていません。
殺虫剤を使わない農業では
人の手が主な駆除方法となりますので、
その中で美味しい昆虫が採れれば食べたいものです。
指摘していただきシモフリスズメだということがわかりました。
訂正いたします。
8月21日より某所にて泊まりがけの実習に行ってきましたので
ネットが不自由になっておりましたところ
2chにこのブログが見つかり、いくつかのまとめサイトに転載され、
多くのアクセスを頂きました。
直接はいいにくいネガティブな意見もあり
大変興味深くみておりました。
スレッド自体ができたのが
8月20日朝6時。
1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2013/08/20(火) 06:52:52.01 ID:C+hi7EKJ0
閲覧注意
http://mushikurotowa.cooklog.net/
マジキチでしょこれ。生では食ってないみたいだけど色んな虫食べてる…
こういうやつはYouTubeで映像でみたいわ。
「マジキチ」と表現はされていますが
「生で食べていない」と内容まで読んでいますし
「映像で見たい」というリクエストもあり
コメント自体は比較的好意的です。
暇人速報さん「虫を食べて淡々とレビューしてるブログ見つけたww」
に二次的なコメントが付いていますね。
同時期に
プロブロガーであるイケダハヤトさんにより
レビューが掲載されました。
…恐縮するぐらいべた褒めです。ありがとうございます。
今回の盛り上がりで大きな収穫が2つありました。
12: ブログみてみろ。マジキチな虫まで食べてるから。色んな虫食べてるから。
ここから分かることは
日本の昆虫は「食える虫」と「食えない虫」に二分されること。
そしてそれが「マジキチでない普通のこと」であること。
イナゴ・ハチノコなどの
「普通の日本の食用昆虫文化」が根強く引き継がれていることを感じさせます。
そしてもう一つはコチラ。
暇人速報のコメント欄より。
綺麗な写真と、文章だけの感想。これは食べてない。
せめて調理して食べる直前の画像や解体画像があれば信じるけど。
妄想だけでこの分量書けたら作家になれる気がします。
以前に
論文209本を捏造した麻酔科医が話題になりましたが、
彼も作家になればよかったと思います。
さて、浮かれ気分はこのくらいにして、
在庫整理と参りましょう。
研究室のパートのおばさんお姉さんのゴマ畑で発生していた大型のスズメガ幼虫。
胸部にしろいツブツブがある点
終齢まで育てると尾角がピンっとしている点から
シモフリスズメ Psilogramma incretaであることがわかりました。
ゴマにつくスズメガの幼虫は他に
終齢の尾角がS字に湾曲するクロメンガタスズメや
湾曲しないメンガタスズメがあるようです。
昨年つくば植物園「虫と植物展」で見たクロメンガタスズメは
もっと黄色がかって大型でしたので、いずれ食べたいと思います。
続いて蛹になる寸前の前蛹
一旦着色します。
土中(ここでは湿らせたティッシュの中)に茶色い糸を吐き、
蛹室をつくる糸を吐き終わると緑色に戻ります。
昆虫は開放血管系なので、
おそらく水溶性の色素を合成すると血液に乗って全身に回ってしまうのでしょう。
脱皮前後の色変化はいろいろな昆虫でみられるのでおもしろい現象です。
そしてサナギ。
口吻が棍棒のようにニュッと飛び出しています。
クルッと巻くエビガラスズメとは違うようです。
さて
味見。
幼虫
! 胡麻に似た香りがする!
茹でただけなのに香ばしい香りと青っぽい小松菜系の香りがして大変美味しいです。
ただ大型のスズメガのため外皮はとことん固いです。鮭とばの皮のような噛みごたえ。
エビガラスズメの方がタンパクで、メンガタスズメのほうが脂質のコクが感じられました。
前蛹
うーむ。。。。美味だ。今年後半の大ヒットかと。
前蛹になり外皮の弾力が減ることで、噛み切りやすくなり焼いた鳥の皮のような噛みごたえに。
ローストしたかのような香ばしい香りが凝縮され、好みの分かれそうな青臭さは消えている。
サナギ
外皮が堅めになってしまったものの、内部のクリーム感はむしろ増しており
練りゴマのような濃厚なクリームに。ここでエビガラスズメに似た豆腐感(タンパク系クリームの味)
も加わり前蛹よりヘルシーなイメージ。
番外編
ヤドリバエ
以前シロヒトリに発生したヤドリバエと思われるハエに寄生された個体があったので報告します。
以下閲覧注意
その時の気分・体調・前後に食べたもので変わることもあり
また食べる昆虫の状態によっても大きく異なります。
ですが
何度食べても同じ味、同じ表現が出てくると
その昆虫の普遍的な味、というものが浮かび上がってきます。
本来であれば10人ぐらいで比較しながらこの作業をやりたいのですが
今のところ一人でやります。
さて
ハラビロカマキリ幼虫 Hierodula patellifera
昔から好きな昆虫なのですが、
以前に成虫を上げて食べた時、苦味があり、消化管にジャリジャリとした悪い食感が残り
「マズイ昆虫」のカテゴリーに入ってしまっています。
マズイと判断するのは大変心苦しいので
できれば美味しい食べ方を模索してあげたいところです。
そこで、今回は
幼虫を絶食させ、消化管の内容物を減らした状態で味見することにしました。
味見
絶食をかけたのでじゃりじゃり感は少なめ。意外と酸味がつよく、酢酸系の鼻に抜ける香り。味はバッタに近い穏やかな香り。筋張っており、口当たりはやわらかいのに口に残ってしまった。数が集まらないわりにあまりおいしくないのでやはりオススメしない。
残念です。「カマキリは割と美味しくない昆虫」の再現性がとれてしまいました。
カマキリが食べるバッタの方がオススメですね。
これから秋になりると、バッタのシーズンが到来します。
カマキリの気持ちになって採って食べてみましょう。
(生食はカマキリのマネをせず加熱をしっかりと!)
お盆が過ぎ、もう立秋も過ぎ、
夏は過ぎ去ろうとしています。
今年は自分の計画性のなさ故にセミ会にもいけず、
思った以上に夏を満喫できていない缶詰状態ですが
秋の始まりをみつけましたので報告しましょう。
秋といえば「鳴く虫」ですね。
鳴く虫文化史によると
鳴く直翅目を楽しむ文化は日本、中国、ドイツなどの特異な文化とのこと。
江戸時代の江戸は鳴く虫文化の花盛りで、野生・養殖を含め虫カゴと合わせた鳴く虫市場があったとのこと。
日本の昆虫利用文化のレベルの高さが伺えます。
さて
今回「聴き比べない」のは四種類
エンマコオロギ Teleogryllus emma
コオロギ科 枯れ草や石の下によくいる普通種。
鳴き声 コロコロリー
味 以前も味見したが相変わらず美味しい。
甘みの強く脂質系のコクもある。シコシコとした筋肉も美味しい
大型なのに外皮が柔らかいため汎用性が高い。
アオマツムシ Truljalia hibinonis
マツムシ科 樹上でみられる動きの速い虫。明治時代の外来種らしいです。
鳴き声 リューリューリュー
味 キリギリス系よりコクが強めの味。穀物のようなうまみが強く
コオロギとも違う味。外皮は柔らかく小さいが味が濃いので楽しめる。
スズムシ Homoeogryllus japonicus
マツムシ科 エンマコオロギと似た所に住む。
声 リーンリーン
味 特徴的な青っぽい香りがする。コオロギと大差ない味だと思っていただけに意外。
味はヨーロッパイエコオロギに近い地味な味。手足が長い分すこし口に残ってしまう。
サトクダマキモドキ Holochlora japonica
ツユムシ科。全長45 mm以上で飛翔力が高い。(4Fのベランダで発見)
声 チ・チ・チ・
味 典型的なキリギリス系味。甘みが強くクセが全くない。
内部は粒感のある食感で旨みが強い。
直翅目同士で近縁、しかも音でコミュニケーションをとるだけに
よく似た味かと思っていましたが意外とそれぞれ異なる風味。
いずれも外皮が柔らかいのが直翅目の特長ですので、
食材としてのポテンシャルはバッチリです。
好みとしては
アオマツムシ>サトクダマキモドキ>エンマコオロギ=スズムシ といったかんじでしょうか
音声でコミュニケーションをとる直翅目を半養殖して
メスだけをスピーカーから出る音声で集めて収穫
とかできれば
養殖がより容易になるかもしれません。
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このブログは以下に移動しました。http://mushi-sommelier.net
2008年「なぜ昆虫に食欲がわかないのか」研究を開始
食べたらおいしかったので「昆虫食で世界を救う方法とは」に変更。
昆虫の味の記載から、昆虫の特性を活かしたレシピの開発、イベント出展、昆虫食アート展覧会「昆虫食展」まで、
様々な分野の専門家との協力により、新しい食文化としての昆虫食再興を目指す。
2015年 神戸大学農学研究科博士後期課程単位取得退学
テーマは「昆虫バイオマスの農業利用へむけたトノサマバッタの生理生態学的解析」
2018年よりラオスでの昆虫食を含めた栄養改善プログラムに専門家として参加